※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

ソフトウェアの受託開発をメインに行い、SIサービス事業・ERPソリューション事業・ICTソリューション事業の3つの領域でサービスを展開しているベース株式会社。

同社の代表取締役社長の中山克成氏は、母国である中国を離れ日本に渡り、念願の起業を果たした。あえて厳しい道を選び、他国で事業を始めた理由とは。起業の成功の秘訣と、今後のビジョンについて話を聞いた。

ずっと夢だった起業のために、中国から日本へ

ーーなぜ日本で起業しようと思ったのですか?

中山克成:
私は中国で生まれ育ち、ITの勉強をしてSEとして働いていました。ずっと「いつか起業したい」という夢を持っていましたが、当時の中国は貧しく、仕事や生活に制限があったため、夢をかなえるためには海外に渡るしかありませんでした。

そこで一念発起し、1987年に日本へやってきました。しかし、当然ながら資金もなく、日本での学歴も人脈もゼロ。おまけに日本語も分からない状態でしたので、まずはアルバイトをしながら日本語学校に通い、ある中堅のソフトウェア会社に就職しました。

今思えば生意気な話ですが、この機会を起業までの勉強期間だと捉え、入社時に「10年経ったら会社を辞めて独立します」と宣言しました。ちょうど10年で独立のめどを立て、ベースを設立することができました。

ーー困難に直面したときは、どのように乗り越えましたか?

中山克成:
日本の企業には、顧客との信頼関係をしっかりと築いていけば、多少実績が伴っていなくとも少しずつ認めていただける風土があります。そこで私たちはお客様との関係を1社1社丁寧に築き上げ、「信頼残高」を積み上げていくことを意識しました。

業績も急激に伸びることはなく、最初の10年間は売上も非常に低迷していました。しかし、そこで焦らず時間をかけてじっくりとお客様と話をしていくことでニーズも徐々に増え、次の10年はかなりのペースで成長を遂げることができたのです。

そこでいよいよ上場を考え、2019年には当時の東証2部に、2020年には東証1部銘柄への指定を達成し、2022年には市場再編に伴い、東証プライム市場へ移行いたしました。

ーー受託開発をおこなう企業は多数ある中で、貴社が選ばれる秘訣は何でしょうか?

中山克成:
まず1つは、先程もお話ししたお客様との信頼関係が大きいと思います。今のお客様とは10年、20年と非常に長くお付き合いをさせていただいているので、それぞれの企業の価値観や開発手法などを熟知しており、生産性もおのずと上がってきます。「ベースに頼めばしっかりしたものが出てくる」という信頼を寄せていただいているからこそ、私たちもその期待に応えるべく努力を惜しまず、良い循環が生まれているのだと感じています。

2つ目としては、市場の拡大とともに私たち自身が成長し、動員力が増していることも重要なポイントです。長期にわたるお付き合いにより、お客様の事業も拡大しています。求められる業務のボリュームも当然増えてきますので、そのニーズに応えられるように私たちも一緒に成長していかなければなりません。今年も300人程度の人材を採用し、圧倒的なスピードで成長しています。

3つ目は、高い技術力です。弊社の従業員は日本人と中国人が半々くらいの割合で、毎年両国から新入社員を採用しています。中国の方はAIなど新しい分野に対して追求心が強く、日本の方は品質の高さにこだわりを持っているなど、両国の異なる文化や価値観を相互尊重していくことで、シナジー効果が生まれて技術力の向上につながっています。

「芝生戦略」で会社の拡大にも堅実に対応していく

ーー今後注力していきたいポイントを教えてください。

中山克成:
今後は新規顧客を獲得するべく、営業力の強化と管理職育成に注力していきます。弊社では「芝生戦略」と称していますが、社員が各々の担当領域でビジネスを拡張させていき、一面に広がる芝生のように現場に根づいて、お客様に寄り添ったサービス提供をし続けることで、高い成長力と付加価値を生み出せる企業を目指しています。

弊社には営業の専門部門はなく、ビジネスユニットを組んでリーダーである部長に決裁権を持たせ、現場での迅速な決裁を可能としています。

プロジェクトのコントロールを含めて長期のレギュレーションを部長に一任し、自主的に動ける技術力を持ったビジネスユニットを増やしていくことで、組織が大きくなっても営業力を落とさずに会社を発展させることができるのです。それこそが「芝生戦略」の神髄であり、我々が目指すべき企業の姿です。

そのためには、組織をまとめるポジションである部長職の育成が必要です。現在39名の部長がいますが、これを早い段階で100名に持っていくことを目標としており、会社として部長職の育成には今後より一層力を入れていく予定です。

ーー管理職の育成に関して、具体的にどのような施策を講じていますか?

中山克成:
弊社では自発性を高めるため、部長職をはじめ役員の選出に関しても、任命制ではなく挙手制で候補者を募っています。上から命令されてやるよりも自ら手を挙げてチャレンジする環境をつくることで、個人としてはもちろん、企業全体の成長スピードを早めることができています。

「ベースに頼めば間違いない」と言われる一流企業を目指す

ーー最後に、今後のビジョンについて教えてください。

中山克成:
数値的な目標としては、営業利益100億円を達成していこうと計画しており、ここ数年で達成できる見通しが立っています。

目指すべき姿としては、お客様に対して価値を提供し続ける会社という意味で「一流企業」になるということを意識しています。「これが一流企業だ」と具体的に定義することは難しいのですが、富士通やソニーなど、名前を聞いた瞬間に誰もが納得できるように、「ベースと言えばすごい会社だよね」と言ってもらえるような素晴らしい企業になっていきたいと思っています。

編集後記

同社の職種の割合を聞くと、9割以上がエンジニアだという。業界全体でエンジニア不足が深刻化している今、同社に多くの優秀な人材が集まっているのは、エンジニアの道1本で会社を築き上げてきた中山社長の人望があってのことだろう。今後も世の中のベースとなるITサービスの基礎を支え続け、同社の芝生が広く根付いていくに違いない。

中山克成/1957年、中国上海市生まれ。1987年に来日し、翌年中堅ソフトハウスでシステム開発に従事。1995年、日本国籍取得。1997年、ベース株式会社を設立し、社長就任。2019年に当時の東証2部上場、2020年に東証1部上場、2022年に現在の東証プライムへ移行。ITサービスの根幹(ベース)となるシステム開発に重点を置き、自身の経験から国籍に関係なく誰もが活躍できる会社を目指している。