国内唯一の「特殊冷凍テクノロジー×IT」を軸にした専門会社であるデイブレイク株式会社。冷凍機販売だけではなく、コンサルティング事業やフードロス削減、地域活性化など、現代が抱える課題の解決のためにさまざまなサービスを展開している。同社を創業した木下昌之代表に、創業の経緯や事業をスタートしたときの取り組み、描く未来についてうかがった。
食で人の幸せに関わる仕事をしたい!旅の中で見つけた仕事への思い
ーー貴社を創業する前の経歴を教えてください。
木下昌之:
20歳ごろまではフリーターでした。父が冷凍機の会社を経営しており、手伝うというよりも強引に入社させられたのが、私の社会人としてのスタートです。父の会社には12年ほど勤め、専務として父の会社を何十倍もの規模に大きくしました。
30歳を過ぎたころ、会社は順調に成長していたものの、「この仕事は私でなくてもいいのでは」と思うようになったのです。これから30年、40年先を考えたときに新しい自分の生き方を見つけたいと思いました。
自分探しの旅としてタイに行ったときに、初めて鮮度の高いマンゴスチンを食べて、日本でもそのままのクオリティで食べられないかと考えたのです。そこで、人々の幸せに関わるような仕事がしたいと思いました。
おいしいものをおいしい状態のままで届けられることは、特殊で高度な冷凍技術が必要で、画期的なイノベーションだと思います。
ーー2013年にデイブレイクを設立しましたが、その経緯を教えてください。
木下昌之:
まず、ビジネスモデルを探して奔走しました。特殊冷凍技術には、冷凍するだけではなく、生の状態に戻したり、つくりたての状態を再現したりする技術も必要になります。しかし、それらの技術を知らない人が大半です。
IT業界、医者、弁護士などの方が集まる異業種交流会にも参加し、1万人ぐらいの方と名刺交換をしたころに、私のような作業服を着て働く人間がこれらの業界にはいないことに気づきました。逆もしかりで、私が参入しようとしている業界には、IT業界、医者、弁護士はいない。そのとき頭の中にあった「冷凍×IT」を組み合わせた事業モデルは私だけができるオンリーワンのものであると確信しました。
顧客とともに成長サイクルを育むビジネススタイル
ーー事業をスタートさせてからは。何に取り組みましたか?
木下昌之:
特殊冷凍機のマーケットがなかったため、周りからは「絶対にうまくいかない」と言われ続けていましたが、私は「絶対に成功する」という確信を持っていました。
事業としては、まず特殊冷凍技術を普及させることから始めました。特殊冷凍のフリーザーは、高いもので1台数百万円から数億円の価格になります。特殊冷凍食品の作り手を増やすことにも貢献できる、付加価値の高い販売事業です。
また、管理栄養士や料理人なども採用してラボチームを組成し、特殊冷凍食品の作り手を育てるコンサル事業も行っています。
また、機械の購入者と使用者が違うことはよくあります。そのため、製造現場の方たちにきちんと使い方をお伝えしなければなりません。ご購入いただくお客さまにとっては新商品開発や冷凍商品開発は未知の領域なので、なかなか理解するのは難しいところがあります。
そのあたりをサポートするコンサルティング事業を2つ目の事業の柱として行っています。コンサルティングをすることで初めて高品質な冷凍食材ができあがると思っています。
私たちは、創業当時からお客さまに寄り添い、良いものをつくるサポートをして、「まずはお客様の商売を成功させるために並走する。そして新たな取り組みでもサポートを続けていく」というような、連動する成長サイクルの事業モデルを構想していました。
機械を売ったら終わりという物売りの考え方ではなく、「購入していただいてからが商売の始まり」と考えています。顧客や取り扱い食材が増えれば増えるほど、成長サイクルがどんどん大きくなっていくのです。
特殊冷凍技術で幅広い業界の課題を解決する
ーー今後の展望を聞かせてください。
木下昌之:
現在、月約500社からお問い合わせがあります。今まではオンラインを中心に事業を行っていましたが、デジタルでは獲得できない顧客層がありました。そのため、直販だけではなく、最近では代理店開拓や展示会への出展にも力を入れています。また、海外展開も視野に入れ、北米や東南アジアの進出を考えているところです。
また、食品業界において、冷凍食品のプラットフォーマーになることも目指しています。商品企画からマーケティング、製造、販売までを一気通貫で手がけるというビジネスモデルです。秋には実店舗を出します。
冷凍技術というと食品をおいしく保存することばかりが注目されがちですが、食品を製造する工数の削減や流通の幅が広がることにもなります。
フードロスやCO2の削減、地方創生につながる、冷凍だからこそ解決できる課題に取り組み、持続可能な未来をつくり出したいと思っています。
編集後記
老舗の冷凍機会社の3代目として一度は家業を継いだものの、自らが情熱を注げるビジネスを見つけるために、自分探しを続けた木下代表。旅先で出会った果物が、彼の人生の転機となった。特殊冷凍機に特化した新しい分野でのビジネスが、業界の枠を越えて幅広い分野の課題を解決し、サステナブルな未来づくりを担う。木下代表の見つけたオンリーワンは、世界の人々に幸せを届けてくれるだろう。
木下昌之/1978年、神奈川県横須賀市出身。70年続く老舗冷凍機会社の3代目として生まれ、家業を継ぐために施工管理士として専務に就任。2013年に「特殊冷凍テクノロジー×IT」を軸にしたデイブレイク株式会社を設立。