
株式会社クボタケミックスは、塩ビ管と水道配水用ポリエチレン管でトップクラスのシェアを誇る企業だ。水道・下水道分野における実績と、クボタグループの一企業としての信用度の高さから、国や地域、企業から厚い信頼を得ている。
大手企業と数百億円規模の取引を行ってきた経験や、社会インフラを支える同社の重要な役割などについて、代表取締役社長の髙山純氏にうかがった。
いくつもの正念場を乗り越えて得た経験
ーーまず久保田鉄工株式会社(現:株式会社クボタ)の入社からこれまでのキャリアについてお聞かせください。
髙山純:
最初は工務課に配属され、工場の生産計画や物流関係を担当する仕事をしていました。そこで7年働いた後、資材の購買を担当し、計14年間は工場勤務でしたね。その間、大阪の堺で物流センターを立ち上げ、その後、神奈川の小田原周辺の倉庫を整備し、関東地区の新物流拠点立ち上げや東日本の物流拠点再整備を進めました。
こうして現場で指揮を執る中、経営企画部の部長に抜擢されます。そこでは会計や経理、税務などにも関わらなければならなかったので、物流や購買関連業務を中心に働いてきた私には未知の世界でしたね。また、これまでは自分で交渉して結果を出す仕事でしたが、組織を取り仕切り、人を動かす立場になりました。
このように、仕事への向き合い方を大きく変えなければならなかったので、はじめは戸惑いました。ただ、それでも試行錯誤しながら成果を生み出し、後に人事・広報・経営企画・物流・購買等を行うコーポレート本部に移動し、その後、代表に就任しました。
ーー特に印象に残っている仕事を教えてください。
髙山純:
物流センターの立ち上げの際は、社内外で多くの人と関わる機会を得ました。これにより一気に人脈が広がったので、私にとって大きな財産になりましたね。また、原材料の購買担当として、数百億円規模の取引を行う責任者を担当したこともあり、その経験が自分を大きく成長させました。
大手のメーカーや商社と億単位の価格交渉を行い、ときには厳しいやり取りもありました。しかし、大きな責任を背負っている者同士で意気投合し、今でもビジネスを超えプライベートの付き合いが続いている方も多くいますね。
社会のインフラを支える樹脂メーカーの役割

ーー改めて貴社の事業内容についてお聞かせいただけますか?
髙山純:
弊社は樹脂製のパイプや継手、付属品の製造と販売を行っています。取り扱う製品は地中に埋設される公共インフラ向けと建築設備向けに大別され、それぞれの売上比率はほぼ同じです。
公共インフラでは、上下水道や電力・通信分野のケーブルの保護管、ガス管、農業用水用のパイプラインなどを提供しています。建築設備は、戸建てやマンション・オフィスビルなどの建物内の配管が中心です。しかし、法律改正の影響で、樹脂製配管の使用範囲が拡大し、近年では工場の排水設備でも利用されています。
その他、新幹線の融雪装置の排水パイプや、大阪・関西万博の施設や北海道のエスコンフィールドの配管設備も、弊社が提供しています。
ーー業界でトップクラスのシェアを誇る貴社の強みは何ですか?
髙山純:
親会社であるクボタが水道分野を中心に築いた販売網を引き継いでいる点が、大きな強みですね。社長に就任してからは全国の取引先様を訪問する機会が多いのですが、長年お付き合いしている企業様が多く、皆さまから愛されているなと感じます。
ときには厳しいご指摘をいただくこともありますが、その背景には多くの期待と信頼が込められていると感じています。これからもお客様の信頼に応えられるよう、メーカーとして品質の向上に努めていきたいですね。
共に働く人を大切にしながら社会に貢献する企業へ
ーー今後の注力テーマについてお聞かせください。
髙山純:
配管工事現場における施工時間の短縮や、製品の軽量化による作業効率の向上を目指しています。配管工事を行う全ての業界の人手不足解消に貢献するため、セットで販売して現場で組み立てる手間を省くなど、工夫を凝らしています。
また、現在弊社が特に注力しているのが脱炭素への取り組みです。弊社の樹脂製品を製造する際、金属製品と比べてCO2排出量が30%以上低減できます。また、バイオ由来の材料の活用も進めています。
2030年にCO2排出量50%削減、2050年にカーボンニュートラルの実現の達成に向け、これからも環境への負荷の軽減に取り組んでいきたいですね。
ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。
髙山純:
弊社ではメンタルヘルスケアや働き方改革など、人事面の改善に取り組んでいます。弊社の社是である「人を大切にする」を実践し、社員が安心して働ける会社を目指しています。
私たちの仕事は目立たない存在かもしれませんが、インフラを支え、社会に不可欠な役割を果たしています。社会に貢献できる仕事がしたい方、人々の暮らしに関わる仕事がしたい方をお待ちしています。
編集後記
「水族館などで自社製品が使われているのを見つけると、自分たちの仕事に誇りを感じます」と話す髙山社長。今回のインタビューを通じ、普段は目に触れる機会の少ないものの、同社は重要な役割を担っているのだと感じた。インフラの基盤を支える株式会社クボタケミックスなどの企業の活躍があり、私たちが便利な生活を送れることを忘れずにいたい。

髙山純/1964年兵庫県生まれ。大阪府立大学卒業。1987年、久保田鉄工株式会社(現:株式会社クボタ)に入社。経営企画部部長を経て、2023年に株式会社クボタケミックスの代表取締役社長に就任。