※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

日本では長年にわたってグローバル化を推進しているが、英語に苦手意識を持つ人は少なくない。英語力不足は、日本の国際競争力が年々低下している原因のひとつだ。

株式会社ワンコイングリッシュは、グループレッスンの場合1レッスン500円(税抜)という破格の料金設定で英会話スクールを経営し、注目を集めている。国際社会で日本が遅れをとっている「英語が話せない問題」の解決を目指す同社の代表取締役、兒嶋裕貴氏に真のグローバル化について話をうかがった。

日本に背を向けて渡り歩いた海外で痛感した日本の素晴らしさ

ーー大学卒業後、世界を巡っていたと聞きました。

兒嶋裕貴:
日本の価値観や社会構造に疑問を感じていた私は、大学卒業後すぐに海外へ飛び出しました。「自分の価値観を変えたい」という一心からです。

50カ国以上は巡ったでしょうか。その中で、日本の良さに改めて気づくことが数多くありました。たとえば、国によっては隣町くらいまでしか足を運べない人がいるのに、日本のパスポートを持っている私はいともたやすく国境を越えられる。

これは日本の先人たちが懸命に働き、世界での信頼を築いてくれたおかげです。「日本はダメな国だ」と拒絶していた自分を反省し、25歳で帰国。「日本をもっと良い国にする」を生涯のミッションに掲げました。

ーー帰国後に取り組んだことを教えてください。

兒嶋裕貴:
海外では多くの人が、自分の軸を持って生きているように思えました。一方、日本には他者の目を気にする人が多く、与えられる情報によって簡単に意見が変わってしまう人がいる。まずはこの価値観を変えたいと思い、テレビ制作会社に就職したのですが、一人で変えられるわけがありません。

そこで、個々の会社の価値観を変えることにシフトし、株式会社Resorz(リソーズ)を起業。グローバル視点と日本視点、両方の良さをあわせ持つ人材・会社を増やし、日本企業のグローバル化を支援する取り組みを始めました。

ところが「英語を話せる人材がいない」と海外進出に躊躇する会社も少なくありませんでした。そこで、海外に出ていく個人をサポートするために立ち上げたのが「株式会社ワンコイングリッシュ」です。

「英語レッスンをインフラに」という思いから生まれたワンコイン方式

ーー貴社名にもなっている、1レッスン500円には驚きました。

兒嶋裕貴:
500円という低価格ですが、決して安かろう悪かろうではありません。講師もレッスン内容も、クオリティはどこにも負けないと自負しています。

松下幸之助氏が提唱した「水道哲学」では、清潔な水が簡単に利用できる水道インフラのように、製品やサービスも誰もが利用できるよう広く普及させることが説かれています。この哲学に倣い、私たちも誰もが英語を学べるようにと、ワンコインで提供することにしました。当初はこの価格で英語力が身につくのかと疑念を抱かれましたが、レッスンを受けた方々の満足度が高く、クチコミで評価されたおかげで軌道に乗りました。

50以上の国と地域から集まるスタッフと協働して真にグローバルな会社に

ーー講師をはじめ、貴社ではどのようなスタッフが活躍していますか。

兒嶋裕貴:
弊社では、英語を公用語とするネイティブであることよりも、会社の理念への共感度と仕事への熱意を重視しています。その結果、現在弊社には50以上の国と地域から集まったスタッフが在籍しており、日本人が2割、外国人が8割です。

これだけ多様な国籍のスタッフをまとめるのは大変な面もありますが、課題を乗り越えたときには大きなエネルギーが生まれると思っています。近年社会で推進されている「ダイバーシティ&インクルージョン(※)」に向けて、弊社が先陣を切って取り組んでいくつもりです。

※性別、年齢、国籍など個々の違いを尊重し、それぞれの個性や能力を活かすかす考え方のこと

利益だけでなく理念も追求!全国展開でグローバル人材を増やす

ーー経営で大切にしていることと、今後のビジョンを教えてください。

兒嶋裕貴:
多方面からワンコインで利益を生むロジックについてよく質問されますが、利益だけを追求せずに理念を重視するようにしています。弊社の場合は、英語を使えるグローバルな日本人を育成すること、グローバル人材を一人でも多く輩出して国益につなげること、そして私たちのサービスで日本を変えていくことを何よりも大切にしています。この価格で利益だけを追求していたら、すでに破綻していたでしょう。

また、理念の追求には使命感も感じており、全国で展開して誰もが英語を話せるようになってほしいと考えています。そのために、留学やキャリアサポート事業、TOEICⓇのスコアアップや接客英語取得といった目的別のスペシャルレッスン、海外の人に向けた日本語教育事業にも注力していきたいと思います。

ーー一緒に働く社員には、どのような人材を求めていますか。

兒嶋裕貴:
一定の語学力と、自身がグローバル人材になりたいという思い、異なるバックグラウンドを理解しようという姿勢が必要です。性別や国籍などは問いません。多様な人が集まると、とてつもないエネルギーが発生し、新たなシナジーが創出されるからです。仕事に対して、単に収入を得る手段としてだけでなく、より深い意義を見出してくれる人が来てくれると嬉しいですね。

編集後記

終始笑顔でポジティブに、わかりやすい言葉で事業内容や理念について語る兒嶋代表。一社の利益という狭い視点にとらわれず、日本、世界を座標にしているからこそ、破格のレッスンを可能にしているのだと感じた。ワンコイングリッシュと兒嶋代表によって、多くの人が英語を話せるようになる日はそう遠くないだろう。

兒嶋裕貴/1980年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、世界50カ国放浪を経て日本・海外で複数社の起業に参画。2009年、株式会社Resorzを設立。日本最大級の海外ビジネス支援プラットフォーム「Digima〜出島〜」を運営。2014年、株式会社ワンコイングリッシュを設立。2020年、中小企業庁「新しい担い手研究会」委員就任。