※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

医療業界のIT化が遅れる中、セキュアな通信プラットフォームで医療現場のDXを推進する株式会社メドコム。電子カルテへのアクセスや医療機器データの自動入力、医療従事者間のコミュニケーション支援が可能な、医療機関専用スマートフォン「メドコム」の企画・開発・販売・保守サービスを提供している。

インターネットに接続せずにサービスを展開する技術で、個人情報を守りながら効率的な医療サービスの実現を目指す同社。NTTドコモでの経験を活かし、49歳で起業した同社代表取締役社長 兼 CEOの佐藤康行氏にお話をうかがった。

NTT時代の経験を活かし、医療DXに挑戦

ーー起業するまでの経緯をお聞かせください。

佐藤康行:
高校卒業後、NTTに入社しました。電柱に登って作業することから始まり、ネットワークの設計や研究開発など、さまざまな部署を経験しましたね。その後、ドコモ・システムズ(現NTTコムウェア)に出向し、法人営業や新規サービス開発なども担当。最終的には、医療情報提供ビジネスの責任者を務めたのち、49歳で退職し起業を決意しました。

起業の決断には、家族が病気になった体験も影響しています。父や弟の妻が若くしてがんで亡くなってしまった経験から、医療分野でビジネスを展開したいという思いが強くありました。

ーー医療業界におけるIT化の課題はどのようなことですか?

佐藤康行:
医療業界のIT化が遅れている要因の一つに、デバイスの古さや少なさが挙げられます。病院ではPHSが主流だったり、人数分のPCが支給されていないという現状があります。DXを進めるには、まずデバイスの導入が必要ですが、情報の取り扱いには特別な配慮が必要で、セキュリティの確保が欠かせません。

医療情報は「要配慮個人情報」と呼ばれ、通常の個人情報以上に厳重な管理が求められます。そのため、セキュリティを十分に確保したうえで、デバイスを新しいものにしていくことが求められているのです。

セキュアな通信プラットフォームで医療現場を変革

ーー貴社が提供している「メドコム」のサービス内容を教えてください。

佐藤康行:
弊社が提供している医療機関専用スマートフォン「メドコム」は、スマートフォンを使って電子カルテへのアクセスや、医療機器からのデータを電子カルテに自動入力することが可能です。

従来、病院ではPHSが主流でしたが、「メドコム」はスマートフォンを活用し、ナースコールの受信や電子カルテの閲覧、医療機器との連携などを可能にしました。特に重要なのが、インターネットに接続せずに病院内で完結できる環境を構築していること。これにより、患者さまの個人情報を守りながら、医療サービスの効率化が実現できます。

ーー貴社の強みをお聞かせください。

佐藤康行:
弊社の強みは、特許技術とさまざまなステークホルダーとの連携にあります。たとえば、ログイン情報の連携や、各病院専用の通信環境の構築など、独自の技術を持っています。また、電子カルテメーカーや医療機器メーカーとの連携も重要です。これらの調整や開発は簡単ではないですが、弊社がそれを引き受けることで、他社が簡単に参入できない領域を作り上げているのです。

サラリーマン時代に培った人的ネットワークも、ビジネスを進めるうえで大きな助けとなっています。特に、大手企業の経営層とのコネクションは、新規事業を展開するにあたってとても有利に働いています。

大学病院を起点に広がる医療プラットフォーマーへの道

ーー今後の展開について教えてください。

佐藤康行:
現在、山梨大学や聖路加国際大学など、いくつかの大学病院に導入いただいています。「メドコム」を通して、医療のIT化を進めたいと考えているので、今後はさらに多くの大学病院や地域の中核病院へ普及させていきたいですね。

また、5年後をめどに海外展開も視野に入れています。特にアジアを中心とした展開を考えており、日本発の医療プラットフォーマーとして世界に通用する企業となりたいですね。将来的には、ユニコーン企業(※)になることを目標としています。

(※)ユニコーン企業:評価額が10億ドル以上、設立10年以内の非上場のベンチャー企業のこと。

ーーどのような人材を求めていますか?

佐藤康行:
私は結果を出すことが重要だと考えているので、社員には常に新しいことにチャレンジし、成長することを期待しています。会社としてサポートする体制を整えていますが、本人が結果を出すことにこだわり続けないと、結果はなかなかついてこないものです。今後お会いする方々も、チャレンジ精神を持っていると嬉しいですね。自身の成長が将来のキャリアにつながるので、会社のためだけでなく、自分のために取り組んでほしいと思います。

編集後記

佐藤社長の話からは、医療DXへの強い情熱と、それを実現するための確かな戦略が感じられた。NTTドコモ時代の経験を活かしつつ、新たな挑戦を続ける姿勢は印象的だ。医療業界のIT化は遅れているが、それだけに大きな可能性を秘めている。セキュリティと利便性を両立させた同社のプラットフォームが、今後の医療DXの鍵を握っていると感じた。

佐藤康行/1967年、山梨県生まれ。NTT入社後、ドコモ・システムズ株式会社(現NTTコムウェア株式会社)への出向などを経て、NTTドコモモバイルデザイン推進室にて複数のプロジェクトをリード。株式会社日本アルトマークにて医療情報提供ビジネスの責任者を務めたのち、49歳で株式会社NTTドコモを退職し、株式会社メドコムを起業。