※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

民間企業だけではなく公共機関でもIT化が進む中、IT業界の市場規模は年々拡大している。その中で、幅広い事業展開と海外進出を積極的に進めている、株式会社ブライセン。今回は、代表取締役社長の藤木優氏に、会社設立から現在の事業展開に至るまでの経緯、大切にしてきたこと、今後の展望についてうかがった。

3名でスタートし、5つの事業を展開するに至ったブライセン

ーー会社設立のきっかけと、その後の事業展開についてお話しいただけますか?

藤木優:
弊社は、以前は株式会社エイ・アイソフトウェアズという名前でした。もともと所属していた会社のメンバー2名とともに会社を設立しました。1980年代から1990年代初頭は、まだIT業界がこれから始まるという時期で、当時は現在よりもITに携わる人が少なく、「世界に通用する技術者を目指す」という考えで仕事を進めていたことをよく覚えています。

最初は主に組み込み系開発の業務を受託していましたが、Javaというプログラミング言語が登場してからは業務系開発の事業も始めたのです。

ーー現在の事業内容と、それぞれの強みについて詳しくお聞かせください。

藤木優:
弊社では、組み込み系システム開発、業務系システム開発、AIアノテーション(データに情報を付加し、タグ付けを行うプロセス)サービス・アノテーションデータ販売、クラウド型倉庫管理システム、予測型自動発注システムという5つの事業を展開しています。特に業務系では、ベトナム、ミャンマー、カンボジアと連携して開発を行うことで、コストを削減しています。

IT業界は一般的に、お客様のソフトウェアを受託開発する会社と、自社のサービスを提供する会社に分かれますが、弊社は受託開発とプロダクトサービスの両方に対応できるスキルを持っています。どちらもできる人材がいるため、お客様目線で考えてプロダクトをカスタマイズし、サービスを提供することができます。複数人で行う作業を1人で行えることにより、コストカットにもつながっています。

また、開発拠点をベトナム、ミャンマー、カンボジアなどの海外に持っていることも強みで、従業員の3分の1は外国人であり、国際的なチームでの開発が可能となっています。

ベトナム戦争が契機に。海外進出と社会貢献の原点

ーー海外進出のきっかけについて教えていただけますか?

藤木優:
私が小学生の頃にベトナム戦争があり、「ベトナムは大変だ」という意識が刷り込まれていたのですが、1997年にベトナムへ行く機会があり、その時にベトナムのストリートチルドレンの支援を行っている小山道夫先生と知り合いました。

最初は、ベトナムの子どものための施設「子どもの家」の支援を行っていたのですが、彼らが施設を卒業しても仕事がないという状況に気付きます。そこで、「彼らにITの職をつくろう」と思ったことをきっかけに、2000年頃から徐々に活動を進めていきました。

2013年から本格的に始動し、ベトナム以外にもミャンマー、韓国、カンボジアと展開して現在に至ります。さまざまな縁もあり、現在のブライセンベトナムの幹部は子どもの家出身者も含め、優秀な人材に恵まれています。

独自のネットワーク戦略と“つながり”が生み出すビジネスチャンス

ーー“つながり”を大切にするネットワーク戦略について、詳しくお聞かせください。

藤木優:
普段から外国人との横のつながりを持つことが、私たちの事業にとって大きな意味があると考えています。事業と直接関係のないところでもつながりを持っていると、縁が広がっていくこともあります。

実は、ブライセンミャンマーも、このようなつながりから始まっています。弊社が自由が丘にあった頃、近くの飲食店へよく通っていたのですが、その飲食店の店長さんが今のブライセンミャンマーの前身である会社の社長と出会うきっかけをつくってくれたのです。

ーー他にも“つながり”を感じられるエピソードについてお話しいただけますか。

藤木優:
私は普段、自分から人に話しかけることはあまりないのですが、社員と一緒に行った居酒屋で話しかけて社員になってくれた人もいます。当時は、弊社の映像チームが進むべき方向性について悩んでいた時期だったのですが、偶然、隣で映像の話をしている人がいたのです。私は割と引っ込み思案ですが、ここぞという場面で積極的に動き、物事が前に進むことがよくあります。

市場シェアの拡大を目指す、新規プロダクトとビジネス展開

ーー取引先の開拓や今後の事業展開について、どのようにお考えですか?

藤木優:
これまでは、「売上を来期は20%増やす」など、積み上げる考え方をしていましたが、その視点を変え、今後は「マーケットの3割を3年後に占めるためには何をすべきか」という考え方でビジネスを展開していきたいと考えています。

マーケットが大きいのにチャレンジしないというのはつまらないことであり、今後も新しいプロダクトを展開し、5年後には年商100億円増を達成したいですね。IT業界にはお客様のためにできることがもっと多くあるはずですが、日本ではうまく機能していないため、弊社はさまざまなプロダクトのデータを結合し、お客様が時間や労力を節約できる効率的な仕組みの提供を目指したいと考えています。

日本のプロダクトを世界へ広げるための海外展開

ーー今後の海外展開について、具体的な計画を教えてください。

藤木優:
将来的には、日本のプロダクトを広く海外で販売していきたいと考えています。すでにミャンマーでは、給与計算、銀行振込、社員管理、勤怠管理のシステムを展開し、日系企業だけでなく現地の企業にも販売しています。次はカンボジアでの展開を計画しており、スリランカ出身の社員が増えていることから、スリランカにオフィスを設けることも考えています。他にも、ラオスやウズベキスタンも展開の候補地として検討しています。

ーー人材採用の面で、どのような方と一緒に働きたいと考えていますか?

藤木優:
弊社は個性を重視しています。能力は入社してから伸ばせるため、個性的で真面目に仕事ができる人と一緒に働きたいですね。

編集後記

藤木社長は取材中、「私は社長というポジションにあるが、人として社員と同じ目線で立つことを意識している」と語る。経営理念にも掲げられている「ボーダレス」は、「人には優劣も人種も関係なく、人は人である。日本がそのように考える社会になってほしい」という思いが込められている。人とのつながりや縁を大切にする株式会社ブライセンが、その強みを活かし、今後どのようなプロダクトを展開して社会に影響を与えていくのかについて、注目したい。

藤木優/1959年、神奈川県生まれ、神奈川大学工学部を中退。1987年に株式会社エイ・アイソフトウェアズに入社。1991年に株式会社ブライセンへと、同社の社名を変更。1997年、代表取締役社長に就任。