プログラミングをオンラインで学べるプラットフォーム「Progate(プロゲート)」を提供する株式会社Progateは、2014年創業のベンチャー企業である。今や300万人以上のユーザーを有する「Progate」を核に、人材マッチングやエンジニア育成など新たな事業を次々に生み出している。同社を創業した加藤將倫氏に、創業のきっかけや会社の未来についてうかがった。
創業のきっかけは「実践的なプログラミングを学べる場がない!」という体験
ーー大学在学時に創業した経緯をお聞かせください。
加藤將倫:
私は学生時代から「起業して社長になろう」と考えていたわけではありません。創業当時はちょうどiPhoneが普及し、スマートフォンを持つのが一般的になってきた時期でした。自分でアプリを開発し、App Storeでリリースする同級生もいたので、私も自然とものづくりに興味を持つようになりました。
大学ではエンジニアリングを専攻していましたが、C言語やアルゴリズムなどの理論的な学びが多く、よりプロダクト開発に近い学びを得られない点に物足りなさを感じていました。当時、実際にプロダクトをつくるための実践的なスキルや知識を学べる場所は、ほとんどありませんでした。
今、プログラミングを学びたいという人が増えている中で、かつての私のように苦労している方も少なくありません。そこで、その悩みを解決できるものをつくりたいと思って立ち上げたのが、オンラインプログラミング学習サービス「Progate」です。
ーー創業当時から今に至るまで、事業への思いに変化はありましたか?
加藤將倫:
創業当時から掲げている「誰もがプログラミングで可能性を広げられる世界を創る」というビジョンは今も変わりません。
私の原動力は「実践的なプログラミングが学びたい」と思った実体験にあります。そういう意味では、プロダクトアウト型の起業家といえるでしょう。ただ、起業してから10年経ちますが、「誰もがプログラミングで可能性を広げられる世界」はまだ達成できていないと感じていますので、これからもさらに事業を広げていきたいと思います。
口コミで300万人超のユーザーを集めるサービスに成長
ーー「Progate」の強みについて、お聞かせください。
加藤將倫:
現在、「Progate」のユーザーは300万人以上います。マーケティング費用を大きく投資しなくてもこれだけのユーザーを獲得できている背景には、初心者が「まずはやってみよう」と思えるプラットフォームであること、そしてユーザーのロードマップができているため掛け算形式でサービス事業を展開できていることが挙げられます。
個人向けのオンライン学習以外にも、講師を派遣する企業向け研修事業にも取り組んでいます。また、さらに難易度の高い学習サービスの提供や、エンジニア志望の新卒求職者と企業のマッチングサポート事業などもスタートしました。
ーー創業してから大切にされている価値観はありますか?
加藤將倫:
創業期はビジネス経験が全くなかったので、私自身も学び続けないといけないと痛感する日々でした。
日本では、社会人になると学びの時間が大変少なく、社会人の勉強時間は1週間あたり平均7分という調査報告(※)もあります。学ぶことをやめてしまえば、何もできなくなってしまうからこそ、学び続けることを大切にしています。
(※)マイナビエージェント「【社会人の勉強時間】週全体の勉強時間は7分!? 勉強すべき理由と時間の作り方」
世界中で「Progate」で学んだユーザーが活躍できる未来を目指して
ーー今後の展望についてお聞かせください。
加藤將倫:
「Progate」は、初学者向けのサービスとして認知されています。今後は、それをきっかけにプログラミングの世界に入ってくれたユーザーが、価値を創出できる仕組みをつくりたいと思います。
たとえば、「Progate Path」で課題を提示し、試行錯誤しながらエンジニアが実際にやるような開発・実装によって、より実務的な内容を学べる場を提供しています。
また、「Progate Path」で一定のタスクをクリアすると、新卒求人やインターンシップに応募できる採用事業の「Progate Prospects」を展開中です。採用企業側が「うちに入りたいんだったら、こういうタスクをやっておいた方がいいよ」という応募条件を明確に設定してくれるので、学びのモチベーションにもつながります。
ーー海外展開も視野に入れていますか?
加藤將倫:
世界で使われるプロダクトとして、絶対に成功したいという思いは強いですね。「Progate」がきっかけでプロダクトを生み出せるようになった人たちが、さらに世界中で新たな価値を創出する未来を実現させるために、まずはしっかりと私たちが学び続け、目標を実現したいと思っています。
編集後記
聡明な語り口と、実体験をもとにしたプロダクトづくりという、ブレない軸を持つ姿が印象的だった加藤CEO。誰もがプログラミングを学び、学んだプログラミングスキルが誰かの人生を切り開く。そんな未来がまさに目の前に来ていることを実感するインタビューであった。
加藤將倫/1993年愛知県生まれ。小学校と中学校をオーストラリアのパースで過ごす。東京大学工学部中退。2014年、東京大学在学中にオンラインプログラミング学習サービスを提供する株式会社Progateを創業。2024年に東京大学に再入学し、事業と学業の両立に挑戦。現在は国際展開を視野に入れた事業拡大を進めている。