※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

2022年から、高校の授業で「金融経済教育」が必修化された。これは、キャッシュレス決済の普及や投資の重要性が高まるなどの社会的背景により、金融に関する知識の必要性が強まったことによるものだ。

そんな中、「ファイナンシャルプランナー(以下FP)」の事務所として創業したFP Office 株式会社は、学校だけでなく法人向けの金融教育サービスにも注力しているという。そこで、代表取締役である中村達矢氏に、同社の事業について話をうかがった。

経営方針を明確にして事業を軌道に乗せる

ーー社長のご経歴を教えてください。

中村達矢:
私はもともと、金融とはまったく関係のない仕事に就いていたのですが、30歳のときにチャンスが欲しくて外資系の保険会社に転職しました。採用や人材育成が得意だったので営業所長に抜擢されて、最年少で2年連続売上1位を獲得したのです。やりがいのある仕事でしたが、「独立したほうが人材育成の仕事に打ち込める」と考えるようになり、2015年に起業しました。

ーー起業してからはどのようなことがありましたか。

中村達矢:
事務所を構えて社員を雇ったものの、8ヵ月で資金不足に陥ってしまいました。このときの私は、会社員として求められる能力と会社経営者として結果を出す能力は別物だということに、気付いていなかったのだと思います。また、明確な経営方針さえも定めていませんでした。そこで、神奈川県の逗子市で1人でリスタートし、その後、2018年に「FP Office」というブランドをつくりました。

私は社員によく「MVVS」について話します。この「MVVS」とは、「Mission=なぜやるか」、「Vision=なにを目指すか」、「Value=付加価値あるいは差別化要因」、「Strategy=戦略」のことです。これらを明確にしたことによって、ようやく会社が軌道に乗りました。

「課題解決型FP」という独自のビジネスモデルを展開

ーー貴社の事業内容について詳しく教えてください。

中村達矢:
弊社は「課題解決型FP」の事務所として事業を展開しており、来店されたお客様からの相談を受けつつ、ソリューションとして保険や不動産、投資信託などの金融商品をご提供しています。今では、金融機関の多くの方々にこのビジネスモデルの良さを理解してもらえるようになり、売上と社員数を伸ばすことに成功しました。この「課題解決型FP」というビジネススタイルは、弊社のオリジナルです。

ーー貴社の事業の強みはどのようなところですか。

中村達矢:
ライフプランシミュレーションを精緻かつ正確に行っているところが強みですね。また、弊社のクオリティと顧客満足度は、すべて人(の能力・作業)に委ねられているので、社員の育成にも力を注いでいます。具体的には、マニュアルや育成ノウハウをつくりこみ、入社後1ヵ月間は座学でしっかりと研修を行います。その後1年間は研修プログラムを組んで育成します。

今後は法人向けの金融教育サービスでトップシェアを狙う

ーー今後はどのような事業を展開していきたいとお考えですか。

中村達矢:
今後は、日本一のFP事務所ブランドとしての地位を確立していきたいと考えています。そのためにもレベルの高いFPを育成し、1人のお客様に対してさまざまなソリューションをご提供して、売上を伸ばしていきたいですね。具体的には、2026年を目処に社員100名、売上12億円まで伸ばすことを目標にしています。

また、今後は法人向けの金融教育のサービスにも注力したいと考えています。これまでも弊社は、小中高・大学などの学校をメインに金融教育の研修を行ってきました。今年から、法人向けの金融教育プログラムにも力を入れており、すでに10社ほど契約しています。

この研修は、参加者は無料で研修を受講できるうえに、FPに個別で相談もできるという内容です。現状、法人向けの金融教育でトップシェアをとっている会社はまだないので、弊社がシェアをとっていきたいですね。

ーー最後に、採用についてのお考えを聞かせてください。

中村達矢:
この4、5年間、毎週オンラインで会社説明会を行っています。人材採用では優秀かどうかよりも弊社のミッションやビジョンに共感していただけるかが大事だと考えているからです。入社前のイメージと入社後の現実に大きなギャップがないように、仕事の大変さや社内の課題なども赤裸々に話しています。

また、人事評価の制度については、明確なKPI(重要業績評価指標)や顧客満足度も目安に、しっかりとチームプレーができる社員を評価する体制をつくっていきたいですね。それと同時にバックオフィス部門の評価制度も整えていきたいと考えています。

また、会社員としての役割を担うだけでなく、意欲的に専門職・プロフェッショナルを目指す方に、ぜひ入社して欲しいですね。前職の実績や現在の収入ではなく、成長性や素直な人柄などを重視しています。そういう方がいらっしゃれば、オンラインで全国から説明会に参加できるので、ぜひ弊社の話を聞いてみてください。

編集後記

野村アセットマネジメント資産運用研究所の「投資信託に関する意識調査2024」によると、2022年の調査結果と比較して投資家は約130万人増加し、特に20代での増加が顕著だという。「FPという職業を、子どもたちにとっての憧れの職業にしたい」と語る中村社長。

金融教育の義務化や投資家比率の増加傾向は、今後FPという職業のニーズが高まることを示唆している。10年後、FPを目指す若者が中村社長とともに活躍する未来が楽しみだ。

中村達矢/外資系生命保険株式会社にて主に営業所長・支社長として新組織の立ち上げと社員育成に従事し、2015年に独立。2018年に来店型FP事務所「FP Office」を神奈川県逗子市に開業し、高い顧客満足度と収益性を兼ね備えたビジネスモデルをスタートさせた。