クオリティの高い漫画動画で絶大な人気を誇る「ヒューマンバグ大学」。チャンネル開設当初からヒット動画を連発する人気YouTubeチャンネルだ。株式会社ケイコンテンツ代表取締役の平山勝雄氏は、そんな「ヒューマンバグ大学」の生みの親。コンテンツへのこだわりが極めて高く、自身も脚本を書き続けている。
元テレビマンという経歴を持つ平山社長だが、YouTubeで複数のトップコンテンツを生むことは簡単ではないはず。一体どのようにして人気チャンネルを育てたのか、平山社長にヒットを連発するマインドについてうかがった。
有名YouTubeチャンネルをいくつも運営
ーーまずは貴社の事業についてお聞かせください。
平山勝雄:
弊社のメインの事業内容は、YouTubeチャンネルを主な活動の場とするIP(知的財産)開発です。自社で企画やディレクションを行い、IPも自社で保有し事業化しています。弊社が運営するチャンネルで特に有名なのは、「トクサンTV」「ヒューマンバグ大学」、そして「マリマリマリー」の3つです。
また、他社の動画コンテンツ制作業務も行っています。制作実績としては、小学館さんの「運命の巻戻士」関連や、「Life Shift TV」などがあります。クライアントワークで脚本を手がけることもあり、「運命の巻戻士」の原作設定を元にして、YouTubeだけのオリジナルストーリーを作成しています。
ーー総再生数25億回「ヒューマンバグ大学」の概要を教えてください。
平山勝雄:
ヒューマンバグ大学とは「人がバグってしまう瞬間」をテーマにした、ちょっとダークな教養チャンネルです。実際にあった衝撃的で信じられない出来事の動画や、オリジナル漫画動画などを作成しています。
特に人気のコンテンツが、架空の任侠グループ「華の天羽組」を中心としたシリーズや、現代の仕事人「拷問ソムリエ」シリーズです。このコンテンツは自社IPのエース的存在でチャンネル登録者数は現時点で約193万人です。
ヒューマンバグ大学は、最初は再現ドラマ路線でスタートしました。私が元テレビマンだったこともあり、自分の持つノウハウを活かしてクオリティの高い動画を作ろうと思ったのです。その結果、動画のクオリティが評価されて初期から100万回再生超えを連発。順調にチャンネルが成長し、現在では漫画系コンテンツを代表するチャンネルとなりました。
野球への思いとともに成長してきた「トクサンTV」
ーー「トクサンTV」とはどんなチャンネルでしょうか。
平山勝雄:
「トクサンTV」とは、登録者80万人を誇る、草野球を中心に扱う野球チャンネルです。2016年に始まったこのチャンネルは専門性が高く、ダルビッシュ有投手や前田健太投手など現役のメジャーリーガーやプロ野球選手が、友情的に出演してくれることも多々あります。
「トクサンTV」の成長は会社の成長そのものです。始まった当初は苦労がありました。「野球といえばテレビで見るもの」であり、YouTubeに野球動画をアップすれば「素人がなにやってんだ」みたいな批判が非常に多かったのです。
それでも内容がよければきっと意見は変わると信じ、「トクサンTV」を育てようと思いました。ひとえに私を育ててくれた野球に恩返しがしたかったからです。野球は私に「一つのことに打ち込む尊さ」そして「成功も失敗も経験して成長していく」ということを教えてくれました。野球を愛する皆様の人生を豊かにする…そんな思い出「トクサンTV」に取り組み続けております。
野球界全体の応援団が「トクサンTV」です。これからも愛する野球界の発展に寄与したいと考えています。
読売テレビの看板番組を手がけるもYouTubeの可能性を信じて独立
ーー会社を創業したきっかけは何ですか?
平山勝雄:
私はもともと読売テレビの社員だったのですが、趣味でやっていた「トクサンTV」が軌道に乗った…いや乗ってしまったからです。当初はそんなつもりでもなかったので驚きました。
当時、ゴールデンタイムで放送する「ダウンタウンDX」や「秘密のケンミンSHOW(当時)」などを中心にプロデューサー、演出などを担当していました。かなり素晴らしいポジションだっただけに、辞めることは難しい決断でした。読売テレビに映像クリエイターとして育ててもらった恩義もあります。
それでもYouTubeに挑戦したかったのは、「個人のスマホやパソコンに直接配信できる」という技術革新に可能性を感じたからです。技術革新が起きた未来の世界で、私のようなクリエイターがどのような評価をされるのか興味が高まりました。加えて、トクサンTVに打ち込めるということで、純粋に野球が好きだったのもあります。
ヒットコンテンツは「魂」と「狂気」を出し切ってこそ生まれる
ーーヒットコンテンツを連発するコツはありますか?
平山勝雄:
プラットフォームが変わろうが、どこまでいっても何より大切なのはコンテンツの面白さです。最近はYouTubeに映像のプロが参入しているので、高いレベルを実現しないと生き残れません。
オリジナルの漫画動画で言いますと、ストーリー構築の際には人生で培ってきた自分の魂をぶつけ、さらには少々狂気的な部分まで出し切って、初めてオリジナリティの高いコンテンツになると思っています。
また、たくさん挑戦してたくさん失敗することも大切です。失敗から学んで研鑽を積むことで、徐々に良いコンテンツを作れるようになります。
ーー今後取り組みたいことや実現したいビジョンは何ですか?
平山勝雄:
崇高なビジョンはあえて持たないようにはしています。全力で面白いコンテンツを作り続けることで、自然と道が開けました。その道を進むことで前人未到のポジションにいる。それが弊社だからです。
ただ、ヒットコンテンツを生める人材を育成する土壌を社内に作ることは必要だと感じています。安定してヒット作を出し続けるには、プロフェッショナルなクリエイター集団になる必要があるでしょう。究極的には、ピクサー・アニメーション・スタジオのように長きに渡りヒットを生み続ける集団になれたら最高です。
編集後記
コンテンツは魂や狂気まで出し切ってこそ面白くなる。私たちが気軽に楽しんでいる動画の裏側には、自らの心身を注いで至高の一本を作る「職人」のマインドがあった。これは社長でありながら現場も手がける平山社長だからこそ感じられることだろう。新たな時代を切り開く経営者として、そしてトップクリエイターとして、これからも平山社長の活躍を追っていきたい。
平山勝雄/1978年大阪府生まれ。神戸大学卒業後、日テレ系準キー局・読売テレビにて「ダウンタウンDX」「秘密のケンミンSHOW」など全国ネット番組を中心にディレクター・プロデューサー・演出を担当。2020年に退社。その後、株式会社ケイコンテンツを設立し、代表取締役に就任。以前から趣味で始めていたYouTubeチャンネル「トクサンTV」を軌道に乗せ、漫画系チャンネル「ヒューマンバグ大学」などを手がける。自身も野球YouTuber「アニキ」として、トクサンTVに登場している。