※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

デジタル化が進む現代社会において、マーケティングと福祉という一見異なる分野で事業を展開する株式会社SANN。2つの分野で社会課題の解決に挑戦し続け、注目を集めている企業だ。同社は創業以来、時代の変化に合わせて事業を多角化し、着実な成長を遂げてきた。代表取締役である馬男木由規氏に、起業の経緯から今後の展望までお話をうかがった。

28歳で起業、リーマン・ショックを乗り越え事業を多角化

ーー起業したきっかけを教えてください。

馬男木由規:
私は1976年生まれの、いわゆる「76世代」と呼ばれる世代です。この世代は起業家が多いと言われていますが、それには時代背景があると思います。私が社会人になる前後の時期に、ベンチャー企業のIPOブームがありました。そういった意味で、「起業」や「IPO」という言葉を学生のころから耳にする機会が多かったように思います。

起業は自己実現の手段の1つだと考えていました。就職活動のときから「いつか起業したい」と面接官に伝えていたほどです。そんな中、人材紹介会社に入社し、そこで3年ほど働いた後、25歳のときに先輩と医療系のインターネットサービスを立ち上げました。この会社は3年間うまくいき、役員の1人として他役員と3人で合意をとりながらの運営をしていましたが、当初からの夢であった起業をしようと28歳のときに独立して弊社を設立したのです。

ーー創業当初はどのような事業を展開していたのでしょうか。

馬男木由規:
創業時は具体的な事業内容を決めていませんでした。今考えると無謀だったかもしれませんが、若さゆえの自信があったのだと思います。最初の1、2年はさまざまな会社のお手伝いをしていましたが、3年目くらいから一緒に事業をやりたいという仲間が集まってきて、本格的に事業基盤をつくっていくことにしました。

私自身が人材系の会社で働いた経験があったこともあり、最初は人材派遣からスタートし、ストック型のビジネスモデルで経営基盤をつくろうと考えたのです。しかし、リーマン・ショックで大きな打撃を受けてしまい、売上が2、3カ月で半減するような厳しい状況でした。そんな中、派遣スタッフの方々が少しでも働ける場をつくろうと、駅前でのティッシュ配りから始め、今の広告事業、プロモーション事業を立ち上げていきました。

デジタルマーケティングと福祉事業の二軸で社会に貢献

ーー現在の事業内容について教えてください。

馬男木由規:
現在、弊社ではデジタルマーケティングと福祉の2つを主軸に事業を展開しています。リーマン・ショックを経験して、1つのサービスだけでは危険だと感じ、事業の多角化を進めてきました。その過程で、デジタルマーケティングの分野へと事業を拡大していきました。

一方、新たな成長市場を探す過程で福祉事業に着目し、最初は障がい者の方の就職支援から始めました。人材ビジネスの経験があったので、その知見を活かせると考えたからです。また、福祉分野は今後の日本社会において重要性が増していく市場だと判断しました。

ーー福祉事業に参入後、どのように事業を成長させましたか。

馬男木由規:
障がいのある方の就職支援からスタートし、グループホームの運営や、就労前のサポート、就職後の定着支援などを行いました。福祉事業を始めてみると、この分野で変革を起こしたいという志を持った人材が集まってきたのです。そういった方々の思いも後押しとなり、サービスの幅を広げていきました。

社員一人ひとりが社長になる勢いで、さらなる成長を目指す

ーー今後の展望についてお聞かせください。

馬男木由規:
私たちの目標は、現在展開している事業を、それぞれ独立した会社として成長させていくことです。具体的には、今ある事業部門を徐々に事業会社化していく計画を立てています。そうすることで、各事業がより自律的に、そして迅速に意思決定できるようになると考えています。また、社員のキャリアの幅を広げることも重要です。ビジネスキャリアにおいて”社長”になることは非常に多くのことを経験できる成長機会だと考えています。失敗のリスクはグループで背負い伸び伸びと社長にチャレンジできる企業グループになろうと考えています。そうすることで、会社全体としての成長につながると信じています。

海外展開についても具体的な計画があり、現在はベトナムに支社を設立する準備を進めているところです。まずは日本の仕事をベトナムで開発するところから始め、徐々に現地のマーケットへの展開を図っていく予定です。

ーー人材採用について、どのような方を求めていらっしゃいますか。

馬男木由規:
私たちが求めているのは、チャレンジ精神旺盛な人材です。自分がどうなりたいのか、何をしたいのかをしっかりと持っている人を歓迎します。もし弊社でその夢が実現できると思えたら、ぜひ来てほしいですね。

会社は成功を約束することはできませんが、成長の機会は必ず提供できます。成長したい、チャレンジしたいという思いを持つ人材とともに、私たちは社会課題の解決に挑戦し続けていきたいと考えています。

編集後記

リーマン・ショックという逆境をバネに事業を多角化し、さらには福祉という新たな分野に挑戦する同社の姿勢は、まさに「チャレンジ精神」そのものだ。特に印象的だったのは、社員一人ひとりの成長を重視し、「社員が社長になる」ほどの成長を期待する馬男木氏の言葉だ。これは単なるスローガンではなく、事業の多角化と事業会社化という具体的な戦略に裏付けられている。同社の今後の展開が、ますます楽しみになった取材であった。

馬男木由規/1976年、神奈川県出身。高校卒業後、株式会社フルキャストへ入社。その後、医療系インターネットサービスを展開する会社の創業役員を経て、2005年に28歳で株式会社SANNを設立。代表取締役に就任。