※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

一見華やかな職業に思える「美容師」。しかし、その労働環境の実態は厳しく、想像よりも楽なものではないと、Lond Holdingsの代表、吉田牧人氏は語る。

吉田代表はこの現実に向き合ったうえで、子どものころから憧れていた美容師として日本一の美容室を作るため、美容学生時代からの5人の仲間たちと立ち上がった。そして今、美容師業界でも屈指の好待遇を実現し、会社は急成長を遂げてきた。Lond Holdingsが躍進に成功した理由とは何か。その原点や経営方針、未来の夢などをうかがった。

子ども時代からの夢を5人の仲間たちと実現

ーー吉田代表の経歴をお聞かせください。

吉田牧人:
子供時代、仲のいい友達の親が複数の美容室を経営しており、いつからか自分も美容室を経営したいと思うようになりました。

ちょうど中学生のころにカリスマ美容師ブームも起こり、美容師への憧れはどんどん加速していきました。

その後美容学校に入学し、仲が良い6人で「美容師として経験を積んだら一緒に起業しよう」と夢を語り合うようになります。そして各々が学校卒業後に表参道や原宿エリアなどの美容室の激戦区で技術を磨き、7〜8年の修業期間を経て6人合同で起業しました。

一流美容室からテレアポ、ホストクラブまで!ストイックに自分を磨いた修業時代

ーー修業時代はどのようなことを学びましたか?

吉田牧人:
まずサービスや技術の習得を第一に考え、一流店のビジネスモデルを学ぶことに取り組みました。このとき高価格帯のビジネスモデルを間近で見られたのは、経営の基礎を形作るうえで重要な学びになりました。

それと同時に、業界としての課題が見えたことも意義が大きかったですね。美容室業界は離職率が高いことで知られていますが、その根本的な原因として、雇用形態におけるコンプライアンスや、従業員教育などが浸透していないと分かりました。

志が高い人たちが集まっても、会社がスタッフを守ろうという意識が弱ければ離職率も高くなります。この構図は絶対に解決しようと思いました。

ーー美容師以外の職場でも修業を積んだとのことですが?

吉田牧人:
美容室での修行を経たのちに、ホストクラブで働いていたことがあります。

美容師は長時間お客さんと接するのでトーク力が求められるのですが、私の苦手分野でもあったため、それならばとホストクラブに飛び込みました。昼の表参道で働いていたところから、一転して夜の歌舞伎町へと職場を変えたわけです。

その後、言葉によるコミュニケーションを磨くためにテレアポの仕事も経験しました。最後のバイトは深夜のカレー屋さんで、ほかのメンバーたちにカレーを振舞いながら情報交換をしたのは良い思い出です。

11期目で年商60億円を見据える!業績を支えるのは高い生産性

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。

吉田牧人:
本店を銀座に構え、全国でFC(フランチャイズ)をあわせて73店舗のヘアサロンを運営しています。2013年に創業して11期目の今期、売上は全体で60億円を超える見込みです。
銀座においては中価格帯に位置しており、高品質なサービスをなるべく安く提供することで差別化を図っています。

また、特に力を入れているのが、スタイリストの待遇です。スタイリストの平均年齢は28歳と若いものの、平均年収は900万円以上を実現しています。

離職率が低い水準に抑えられているのも強みです。美容師業界は1年で50%、3年で80%が辞めると言われるほど離職率が高いのですが、弊社は6〜7%で推移しています。特に創業してからの5年間、スタッフ数が100名以上になるまでの間は、離職者ゼロを維持していました。

弊社の使命は、企業理念として従業員の物心両面の幸福の追求をする「スタッフファースト」の実現です。スタッフ一人ひとりにしっかり成長してもらい、お客様に一流のサービスを届ける。この好循環を高い水準で実現してきたからこそ、急成長を続けられたのだと思います。

ーー貴社独自の強みは何でしょうか?

吉田牧人:
美容師一人当たりの生産性が高いことです。多くの美容室は月間生産性80万円を目標にしますが、弊社は平均で月間100万円を超えています。美容師の歩合を業界平均よりかなり高く設定していることもあり、モチベーションアップに良い効果を与えています。

その理由に、施術スピードの早さがあります。たとえば他店が2時間で対応するところを弊社は1時間30分で対応でき、より多くのお客様にご満足いただくことができます。

クオリティは高いままにスピーディーに仕上げる。これを銀座という立地で実現することで「銀座なのにこの価格でこのクオリティ!?」という感覚を味わってもらい、リピートにつなげています。

ーースタッフの教育やケアで大事にしていることは何ですか?

吉田牧人:
アシスタント期間に、なるべく多くの経験を積んでもらうことが大事だと考えています。弊社では新卒入社からアシスタント期間が1年〜1年半あるのですが、その間にカットモデルでの練習を最低120人以上行う必要があります。

下積み時代の実践回数が多ければ、いざスタイリストになってからも、あまり緊張せずに取り組め、下積み時代のお客様が通ってくれることが多いので、スムーズなスタートを切れます。ほかにもSNSでの個人ブランディングメソッドを提供したり、スタッフたちで自主勉強会を開催したりと、美容師を孤立させない体制が整っています。

また、新店舗の出店に関しても、社員の負担を減らす工夫をしています。それが、FC制度に加えた2つめの選択肢である「店舗代表制度」です。これは「オーナーになるには自信がないけどプロデュースもしてみたい」という思いを叶える制度で、プレーヤー時代の最後半年間の平均給与額の80%が固定給として支給され、そこに店舗の営業利益の10%が加算される給与体系です。

美容師は年齢とともにプレーヤーでい続けることに不安を抱きがちですが、全員がFCオーナーを希望するわけではありません。そこで、リスクを極力減らしながらマネジメントも手掛けられる店舗代表というポジションを用意しました。FCで出店する場合は、社員の負担を減らすために出店費用の40%を会社が負担しています。

今後10年で世界一へ!日本から世界へ羽ばたくための道筋とは

ーー最後に、今後の展望について教えてください。

吉田牧人:
創業当初からずっと掲げている、「業界年商1位」を目指します。海外にも目を向けながら成長を続ければ、今後10年間で日本一も実現可能ではないかと考えています。

今のスタッフファーストはそのままに、弊社を世界中から必要とされる美容室グループに成長させたいと思っています。

日本は人口は減っているものの、幸いなことに労働人口はあまり減っておらず、美容室の需要も維持できています。まだ市場に拡大余地が残されているので、皆さんもぜひ弊社の成長に協力いただければと思います。

編集後記

子どもの頃の夢から修業時代の大変な経験まで、吉田社長の事業にはそれらが極めて良い形でフィードバックされていると感じた。きっとそれらを支えているのは、芯としての人柄の明るさや誠実さ、そして夢を見る心なのではないだろうか。吉田社長の側なら夢が見られるかもしれない。きっとこれからも、吉田社長はそう思わせ続けてくれるはずだ。

吉田牧人/1985年埼玉県生まれ。日本美容専門学校卒業後、表参道の美容室へ入社。2店舗を経て、2013年、美容学生時代のクラスメイト6名で株式会社Londを設立。現在国内外に73店舗を展開。