
社会課題の解決を目的とした事業創造や起業家の育成、システム開発などを通じて事業を展開する、株式会社Life Crayon Style。現在では16社のグループ企業を束ねている。その根幹には「全世界の希望格差を是正する」という壮大なミッションがある。このミッションは、代表取締役である竹内力也氏の壮絶な半生から生まれたものだ。生まれつきの病、過酷な家庭環境、そして社会からの隔離。死と隣り合わせの経験は、いかにして社会課題解決という事業に結実したのか。理念で人を惹きつけ、仲間と共に未来をつくる同社の強さの源泉、そして組織づくりに悩む全ての経営者へのヒントを聞いた。
社会からの隔離で見出した自己との対話と人生の転機
ーーご自身のキャリアの原点について、お聞かせいただけますか。
竹内力也:
1990年に生まれましたが、生まれつき小腸がほとんどない状態で、小学校2年生まで病院で生活していました。当時は長く生きられない病気で、多くの友人が亡くなる姿を目の当たりにしてきたのです。ある時、亡くなった友人の母親から「なぜうちの子が」という激情を向けられた経験が、私の原体験となりました。そのとき初めて「愛されたい」という感情が芽生えたのです。
過酷な環境の中、誰にも悩みを打ち明けられず、本の世界に答えを求めました。自分を好きになりたい一心で、膨大な数の本を読みました。知識だけでは人は変わりませんが、失敗の受け止め方を多様にする上で、読書は非常に価値があると考えます。
ーー20代前半での経験は、その後にどう影響しましたか。
竹内力也:
家庭環境も影響して非行に走り、社会から離れて自分自身と向き合うことになりました。そこでは多種多様な人間を目の当たりにし、自分の社会の評価がどのようなものなのかを痛感しました。追い詰められれば誰もが過ちを犯す可能性がある、という人間の本質に触れ、何が起きても「想定できないことが起きるということは、想定することができることだ」と思えるようになりました。
そうした経験から自分の中にあった憎しみの正体が、親からの愛情への渇望だと気づけたこと、「親を許そう」と感じられたことが、自分にとっての大きな転機でした。親に今までされたこと、してもらったことを全て書き出す中で、「許すことなしに愛は成り立たない」と悟りました。そうすると次第に「自分は一人じゃなかった」と思え、「これからは正しく生きたい」と心から願うようになったのです。
理念に集う仲間と共に歩む独自のグループ企業形成プロセス

ーー現在の事業内容について、具体的に教えていただけますか。
竹内力也:
事業の軸は3つあります。「社会課題の解決を目的とした事業の創造」「起業家の育成と輩出」「システム開発」です。
事業創造では、コンサルティングを軸に、事業の創造・再生・承継を支援し、企業の持続的成長をサポートします。起業家育成では本気で社会を良くしたいと願う人々を支援しています。システム開発では大手や中小企業から受けた受託開発と、自社サービス開発の両方の開発を行っています。そして、ホールディングスとして、これらの事業を束ねています。
ーー16社ものグループ企業は、どのように形成されてきたのでしょうか。
竹内力也:
赤字会社の再生、ゼロからの立ち上げ、そして理念への賛同によるグループ参画など方法はさまざまです。持ち込まれた課題を「自分ごと」として事業化します。誰かの「助けたい」という切実な思いが、弊社の事業の起点です。たとえば、インドネシアで不当な扱いを受けるコーヒー農家を救うためにダイレクトトレードでの支援を行うことを目的とした農園買収に動いたり、面接に来たベトナム人から母国の義手、義足事情を聞いて、義足や義手を無償で届ける会社を興す用意を進めたりと、常に誰かの抱える問題に「自分ごと」として寄り添っています。
弊社は「希望格差の是正」という目的に繋がる事業であれば、柔軟な形で仲間を集めています。最終的には100を超える事業体を束ねるグループになる計画です。
ーー事業が大きく成長したターニングポイントはどこにあるとお考えですか。
竹内力也:
私達にとっての成功とは、年商や規模ではありません。明日を信じ、仲間がいて、未来を信じられる努力を重ねている状態そのものが成功です。ですから、ターニングポイントは私達の考え方を信じてくれる仲間たちに出会えたこと。これに尽きます。
ーー人を育て、理念を共有する組織づくりの秘訣は何でしょうか。
竹内力也:
弊社は完全な理念経営を実践しています。社員一人ひとりの「どうなりたいか」という思いに会社が本気で向き合い、その成長を支援します。そのために、会社の仕組みを年間で72回、週に1回以上のペースで改善し続けているのです。仕事を通じて人として成長することが、人生を豊かにすると信じています。そうした理念が浸透しているからこそ会社には、個人一人一人の成長を支援する文化が根付いています。
「全世界の希望格差是正」へ向かう未来への展望と海外展開
ーー現在、特に注力している分野についてお聞かせください。
竹内力也:
地方企業の事業承継、後継者育成、業績回復に貢献するために理念経営を根付かせることです。特に地方の社会課題の解決や文化の保全に取り組む経営者の方から、弊社の理念や考え方に共感いただく機会が増えました。「自社にも理念やビジョンを浸透させたい」と悩む経営者の方からのご相談や後継者育成の相談が、非常に増えています。今後は、多くの企業が経営に息詰まった時に頼るかかりつけ医のような存在を目指します。
ーー今後の5年後、10年後を見据えたご展望をお聞かせください。
竹内力也:
私たちの最終目標は自分自身の可能性を信じることができる世の中を実現させることです。そのために「全世界」の希望格差を是正します。そのため今後は海外にも活動を広げ、この理念をあらゆる領域に拡張し体現していきます。会社としては100社を超える規模を目指し、5年後には年間1万人以上の人に感動体験を届けることを達成したいと考えています。
編集後記
壮絶な過去は、時として人を強くし、深い洞察を与える。竹内氏の言葉には、死の淵を覗き、社会の底辺を経験した者だけが持つ圧倒的な重みと説得力がある。「希望格差の是正」というミッションは、同氏が誰よりも希望を渇望した過去の裏返しであり、だからこそ人の心を強く動かすのだろう。関わる人々の課題を「自分ごと」として捉え、仲間と共に未来をつくる姿勢に多くの人が惹きつけられるのだ。同社の挑戦が、世界の未来にどのような光を灯すのか、注目していきたい。

竹内力也/2015年、株式会社Life Crayon Styleを設立。支援実績は200業種、累計1000件超。現在、社会課題の解決を目的にした法人16社を統括。地方自治体とも連携し、毎年40人以上の起業家を輩出。For JAPANチャンネルへ出演。