※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

企業の人材確保が喫緊の課題となる中、高い専門性をもつフリーランスの活用で企業の人材不足を解決し、新たな組織づくりを支援する企業が、株式会社ソレクティブだ。伴走型コンサルティングを通してハイスキルなフリーランスをソリューションとして提供するパイオニアとして、企業とフリーランスの橋渡し役を担う同社の共同創業者兼CEO、岩井エリカ氏にお話をうかがった。

グローバル経験を活かしハイスキルフリーランスの活用で企業の人材課題を解決

ーーソレクティブを設立するまでの経緯についてお聞かせください。

岩井エリカ:
9歳のときに単身イギリスに渡り、修士課程修了までの10年以上を現地で過ごしました。そのきっかけとなったのは8歳のときに参加した、カナダのサマーキャンプです。それに参加したことで英語を話せるようになりたいと思い、両親に相談したところ、イギリスの学校か神戸のインターナショナルスクールに行くという選択肢が上がりました。

両親は「1人で稼ぎ、自立して生きていける人になる」という選択肢をもつことが大切だと考えてくれましたね。教育には真剣に向き合ってくれたと思います。

イギリスでは、インペリアル・カレッジ・ロンドンの工学部で学びました。当初は建築家になりたいと思っていましたが、両親のアドバイスもあり、工学部を選択しました。

修士課程を修了後、日本に戻り、住友電気工業で研究開発エンジニアとして勤務。その後、アメリカに渡ってMBAを取得し、現地で大手企業やメガベンチャーにてHRBPとして組織開発に従事しました。帰国後は広告代理店勤務を経て、2020年に株式会社ソレクティブを設立しました。

ーー事業内容について教えてください。

岩井エリカ:
各企業が抱えるあらゆる課題を解決できる、専門性の高いハイスキルフリーランスを紹介しています。クライアント企業からは「こういう人が欲しい」というご要望をいただくケースが多いのですが、私たちは「そこで解決したい業務課題」と向き合うようにしている点がオリジナルだと考えています。単なる人材提供ではなく、実現したい成果のために、どういう業務機能を提供するべきかを考えることが、私たちの事業の根幹です。

そのような企業向けのサービス提供が主軸ですが、フリーランスの方々への支援も行っており、面倒な請求書関係や契約書作成など、バックオフィス業務を解決するオールインワンのビジネスツールの提供や、フリーランス向けのコミュニティなども運営しています。

私自身、フリーランスとして働いた経験から、フリーランスが抱える課題や可能性を肌で感じてきました。日本では特に、フリーランスの社会的地位を高める余地がまだあると感じています。

厳格な審査で実現する、ハイスキルフリーランスとのマッチング

ーー貴社の強みはどういった点にありますか?

岩井エリカ:
弊社の最大の強みは、独自の厳格な審査制度ですね。私たちはこの審査を通過したハイスキルフリーランスのみを企業に紹介しており、彼らのことを「Sollective認定プロ」と呼んでいます。この審査の合格率は10%以下で、かなり厳しい基準を設けているため、人材のスキルを高い水準で保証し、クオリティの面でもお客さまから満足いただいています。

審査の特徴は、各分野の専門家がそれぞれ担当している点です。たとえば、事業開発の人材であれば事業開発の専門家が、UXデザイナーであればUXデザイナーが審査を担当。この仕組みによって、より専門的な視点から人材のスキルを評価できます。

ーークライアントの方々は、どのようにフリーランスを活用されているのでしょうか?

岩井エリカ:
弊社では、フリーランスのスキル、能力をご提供しています。そのため、成果物やスポット的なコミットメントではなく「稼働時間」でご契約いただきます。

もちろん、あらかじめ成果物を決めることもありますが、多くの場合、契約期間中に「もっとこういうところに注力して欲しい」などといった、タスクの優先順位に関するご要望が出てきます。そうしたことに対応可能なように、月次で目標設定・管理を行い、クライアント企業とフリーランス双方の合意を取りながら最適な成果創出を目指すのが、私たちの特長のひとつです。

これにより、企業は必要なケーパビリティとスキルをもつ人材を柔軟に活用できます。日本の従来の雇用形態では、正社員の採用に時間がかかり、機会損失が発生することがありますが、弊社のサービスを利用することで、スピーディーに必要な人材を確保し、事業を推進することができるのです。

フリーランスの地位向上と企業成長の好循環を目指して

ーー今後の展望についてお聞かせください。

岩井エリカ:
フリーランスの効果的な活用方法を啓蒙し、広めていきたいと思っています。弊社の使命は、フリーランスの価値を証明していくこと。まだまだフリーランスの活用が十分には進んでいない現状がありますが、それを変えていきたいと考えています。人口が減少していく中で、業務のやり方は大きく変わらざるを得ません。AIの台頭などもありますが、それでも、人がやるべき仕事は残り続けます。

そうした状況において、単位時間あたり生産性が高い人材の重要性は、ますます増していくと言えるでしょう。そのように考えると、ハイスキルフリーランスの活用は企業にとって急務だと言えます。

現在、フリーランスを活用している企業でも数名程度にとどまっていることが多いですが、将来的には組織の大半がフリーランスになる可能性もあると思っています。そうなったときは、フリーランスのマネジメントという新たなニーズも出てくるでしょう。そこで、プロダクトやテクノロジーを活用し、多くのフリーランスを簡単に支援できる体制や仕組みを提供していきたいと考えています。

ーーフリーランスの社会的地位向上についてはどのようにお考えですか?

岩井エリカ:
フリーランスの方々は、「個人」という理由から社会的に信用を得にくい現状があります。たとえば、クレジットカードの発行や銀行口座の開設が難しいケースですね。しかし、企業側でフリーランスの価値が認識されれば、より良い仕事の機会が増え、収入も向上し、社会的な信用の向上にもつながります。このサイクルを生み出すことで、フリーランスという働き方の社会的地位を向上させたいと考えています。

将来的には、優秀な人材がフリーランスという働き方を躊躇なく選択できる社会を目指しています。少子高齢化が進みつつ、生産性の高い組織が求められる中では、従来の組織作りの手法では対応しきれません。専門性の高いスキルをもったハイスキルフリーランスの活用がその解決策になると信じています。

編集後記

岩井CEOの描く未来像に、ワクワクが止まらない。組織の半数以上がフリーランスという世界。それは決して夢物語ではなく、私たちの目の前まで来ているようだ。海外経験とMBA、エンジニアとしてのキャリアをもつ岩井CEOだからこそ、描ける青写真なのかもしれない。

高いスキルをもったハイスキルフリーランスの活用で、企業の生産性向上とフリーランスの地位向上を同時に実現する。その壮大な構想に、日本の労働市場の未来を見た気がした。

岩井エリカ/Imperial College London工学部修士課程修了後、住友電気工業株式会社に新卒入社し、新規技術の特許獲得などに貢献。その後渡米し、UCLA Anderson School of ManagementでMBAを取得後、Mattel, Inc.やRiot Games, Inc.で人的資本経営に基づく人事戦略に取り組む。帰国後は広告代理店の日本支部での人材マネジメント統括を経て、独立。2020年にウォン・アレン氏と株式会社ソレクティブを設立。