※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

経済産業省のデータによると、日本のITサービス市場は、企業業績の回復や金融機関による大型投資案件などを背景に、堅調に推移している。しかし、IT需要予測から推計されるIT人材の不足は、将来的に40〜80万人規模に達する恐れがある。

そのような中、「日本のIT人材不足を解決する」というミッションを掲げ、創業以来9期連続で増収を達成している企業がある。それが、株式会社ルートゼロだ。同社は成長を維持するために、福利厚生や研修制度を充実させ、社員が自分で人生を選べるような環境も整えている。今回は、業界のリーディングカンパニーとなることを目指す同社の代表、柴田侑亮氏に、社員教育や雇用に対する考えをうかがった。

若き日の葛藤と決断。ミュージシャンから起業家への転身

ーー異色の経歴をお持ちですが、代表になるまでの道のりをお聞かせください。

柴田侑亮:
高校卒業後、音楽活動で生計を立てたいと思っていました。しかし、全国ツアーなどでアルバイトをする時間も少なく、音楽と仕事の両立は難しいと感じるようになりました。そこで、もっと音楽に時間を割けるように、時給制ではなく、より効率的に働ける方法を模索し、起業を決意しました。

最初は自分のスキルを活かして、中古自動車販売や通信サービスや関連商品の営業を手掛けました。さらに、バー経営や母親のスナックの手伝いなど、さまざまな事業に挑戦するうちに、次第に仕事そのものの面白さに引かれ、音楽から離れる決断をしました。そして、26歳でバンドを解散し、同時に結婚して家族ができたことをきっかけに、初めて会社員としてブライダル業界に就職しました。

ブライダル業界での4年半は非常に充実した、ビジネスの基礎を学ぶ貴重な時間でした。しかし、朝から晩まで働き詰めの日々が続き、家族との時間を十分にとれませんでした。さらに、誰かの下で働くことでは、自分の正義や信念を貫けないという思いが強まり、再び起業への思いが芽生えたのです。そのような折、時代の流れを受けてIT業界に関心を持ち、まず、未経験ながらもベンチャーIT企業に転職しました。そして、その半年後に、自ら会社を設立するに至ったのです。

ーーこれまでの経験の中で、現在の仕事に活かされていることはありますか?

柴田侑亮:
やはり、ブライダル業界での経験が大きいと思います。ベンチャー企業に入社した当初の手どりは15万円でしたが、家計を支えるためにも最短で成長することを自分に課し、何事も提示された期日の7〜8割の時間で完了させることを目指しました。

営業職に配属された際にも順調に成果を出していましたが、12〜13件目の営業で初めて成約がとれず、その後1ヶ月以上、成約を得られない日々が続きました。成績がトップから最下位に転落し、ついには営業職から外され、ブライダルプランナーの部署に配属されました。

その部署では、結婚という人生の一大イベントを彩る仕事に携わるため、営業のときのように成約したら終わりではなく、結婚式当日までお客様に喜んでいただくためにできることが際限なくありました。責任や重圧もありましたが、それがむしろ自分に合っていたのでしょう。朝から晩まで働き続け、結果として最短でマネージャーになり、さらに転属から4年で事業責任者に昇進しました。

振り返ると、営業で壁にぶつかったのは、顧客にとって不利益になることを見過ごして成約をとらなければならないことへの葛藤があったからだと思います。しかし、プランナー業務では、お客様から涙ながらに感謝され、本当に良い商品を提供していると実感できたことが、自信につながりました。この経験から、自分が正しいと思えることに全力で取り組むことの大切さを学びました。

エンジニアが人生を選択できるようにサポート。彼らの成長を促し、多くの案件を提示

ーー改めて、貴社の事業内容についてお聞かせください。

柴田侑亮:
私たちは、日本のIT人材不足を解決しながら、IT業界とSES業界(​​System Engineering Serviceの略で、エンジニアをクライアント企業に派遣してシステムの開発や保守を行う)の闇をゼロにすることを目指しています。そのために、まずは営業力を強化し、エンジニアが理想のキャリアに沿った案件を選択できるようにしています。案件の数が少ないとエンジニアの選択肢が狭まり、成長の機会も減少してしまうため、営業力の充実は重要な要素です。

さらに、単価連動型報酬制度を導入し、エンジニアの努力を適切に評価する仕組みを整えています。この制度では、単価に基づいた絶対評価が行われ、個々の努力を正当に評価することによってモチベーションを向上させ、成長スピードも加速させることを目指しています。

しかし、エンジニアが成長したいと考えても、学べる環境が整っていなければ意味がありません。そこで、弊社では人材育成にも力を注ぎ、福利厚生を通じて質の高い学習環境を提供しています。具体的には、資格取得の費用を会社が負担し、休日にもオフィスを開放したり、グループ会社による講習を無償で提供しています。また、エンジニアが待機期間中にも学習に専念できるよう、待機期間の給料を全額補償しています。

また、社員間のコミュニケーションも重視しており、社内SNSの活用や懇親会の開催、部活動への支援などを通じて、社内の絆を強化しています。こうした取り組みを通じて、IT未経験者を採用し、彼らを育てることで、日本のIT人材不足の解決に貢献していきます。

技術ではなく人間性を重視。長くともに働きたいからこそ、求める人物像を明確化

ーー未経験者や新卒者の採用を重視しているとのことですが、どのような人物を求めていますか?

柴田侑亮:
まず、弊社の理念に共感していただけることが大前提です。その上で、エンジニアには、自分の人生を諦めず、他者に興味を持ち、愛情を持って接することができる人を求めています。もしキャリアに悩んでいる方がいれば、ぜひ弊社に相談していただきたいですね。視野が広がり、転職活動においても未知の可能性が見えてくるはずです。

また、総合職に関しては、基本的に新卒採用を重視しています。社会情勢や環境が日々変化する中で、変化を楽しみながら柔軟に対応できる人、トレンドに敏感で壁に直面しても楽しむことができる人、明るくユーモアのある人に来ていただきたいですね。

ーー今後の展望について、教えてください。

柴田侑亮:
20期目(約11年後)までに業界のリーディングカンパニーとなることを目指しています。弊社に多くの人が集まることで、これらの取り組みが他社にも広まり、SES業界全体が変革されることを期待しています。

編集後記

「日本のIT人材不足を解決する」ことをミッションとする柴田代表にとって、顧客満足や従業員満足は達成が前提だ。その視点の高さが、変化の激しいIT業界における迅速な意思決定を支えている。

柴田代表のもとには変化を楽しみ、ユーモアを持つ多様な人材が集まり、ルートゼロは急成長を遂げている。こうした取り組みが、日本のIT業界をさらに活性化させることは間違いないだろう。

柴田侑亮/1984年生まれ、大阪府高槻市出身。高校卒業後、全国で音楽活動を開始。20歳で起業し、通信販売や中古自動車販売など、さまざまな事業を手掛ける。26歳で初の会社員としてブライダル業界に就職し、その後、父親の大病をきっかけに株式会社ルートゼロを設立し、代表取締役に就任。