※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

株式会社トモノカイ(東京都渋谷区)は、1992年に発足した東大生の有志による教育サークルを母体とし、2000年に会社法人として本格的に教育関連事業をスタートした企業だ。

会社設立後は家庭教師紹介業の枠を超え、海外在住者への教育サービスや学生向けの情報メディア運営を含むなど、幅広い関連事業へと裾野を広げてきた同社。なかでも現代的な教育テーマに切り込み、課題の解決を試みる学習デザイン事業は、教育の改革を目指した大胆でユニークな取り組みとして存在感を示している。

独自性の高いビジネスを展開する創業者で代表取締役社長である徳岡臣紀氏に、事業の目的や展望についてを問うため、インタビューを行った。

理想の教育を実現するために学生家庭教師サークルを法人化

ーー起業のきっかけを教えてください。

徳岡臣紀:
大学時代に教育関係のサークルに所属し、家庭教師の就業先を自分たちで探すなど、教育にかかわるさまざまな活動をしていました。

その中で生徒や同級生と触れ合った際、彼らの教育に対する解釈に違和感を覚えました。教育は人を幸せにするものではなく、しかたがなく行われるものであると考えたり、まるでゲームに勝つための道具と捉えたりするような人も見受けられたのです。

そのような解釈に対してとても悲しいと思い、自分にできることはないかと真剣に考えた結果、教育を義務的なものでなく人生を豊かにするものに変えるため、本格的に取り組むことを決意しました。そしてサークルの法人化に乗り出したのです。

ーー事業化して、どのような苦労がありましたか?

徳岡臣紀:
できる範囲のことをマイペースで進めるのは、いかにもサークル的だと思います。そこから脱皮して企業として活動するとなると、お客様からお金をいただくことから生じる重みが加わります。

ビジネスとしての理解が共有できずにメンバーが抜けてしまうこともあり、非常に残念で、困難な時期もありました。

ーーどのように克服しましたか?

徳岡臣紀:
メンバーが新しいステージに進むたびに辞めていくのは、会社の方向性を明確にできていなかったのも一因だったと感じています。

そこでまず、自分の中で「どういう価値観の人が集まれば機能するのか」をしっかり整理し、組織を固めることから始めました。そして、これを経営理念として言語化していくことで、バラバラではなく同じ目標に向かっていくチームとして機能させることができました。

生徒がワクワクしながら通う場をつくるための放課後学習支援

ーー改めて事業内容を教えてください。

徳岡臣紀:
私たちの活動の根底にあるのは、教育の再設計をいかに実現していくか。これをベースに事業を組み立てています。

たとえば、学校を改革しようとすれば、さまざまな課題があります。どう改革すべきか正解がわからないという壁もあれば、実現するための人も時間も不足しているという壁もあります。

そこで21世紀にフィットする学校、そして生徒たちや社会に求められる教育を実現するために、ヒト・モノ・コンテンツを通じて、これまでにないソリューションを提供するのが弊社のミッションです。

ーー注力中の「放課後学習支援」について、お聞かせください。

徳岡臣紀:
この事業では、14万人の会員の中から選ばれた学生メンター(講師)が、中学・高校の放課後学習をサポートしています。

自習室の開放は一般的に実施されていますが、それだけでは、行きたい人しか集まらない限定的な場所になってしまいます。そこで、学校の方針と生徒の現状を照らし合わせながら、最適な学習方針や魅力的なコンテンツをメンターとともに創り上げていき、誰もが参加したくなるような場を設計できるのが特徴です。

先生方と弊社社員、そして学生メンターが一丸となって生徒の学習をサポートする仕組みを作ることで、学校の課題の解決につながります。それにより、結果的に先生方の業務負担を軽減し、働き方改革にも貢献しています。

ーーその他のメリットも教えてください。

徳岡臣紀:
この取り組みでは生徒に必要な自ら学ぶための目標を設定し、そのための方法論を自らくみ取る「自分で学ぶ姿勢」の助長を目的としています。高校生にとって年が近い大学生がロールモデルとなり、生徒の学びに対する積極性や自律性が育まれていくのです。放課後学習支援をご活用いただいた学校の先生方からは、「情熱や前向きな姿勢によって、こんなに人は変わるのだと思った」という感想も多くいただいています。

このサービスを含め、「この学校に通えて良かった。明日も行きたい」と生徒がワクワクする場を先生方と一緒に作っていくことができればと考えています。

21世紀にマッチする教育改革のサポート体制を拡充

ーー会社のアピールポイントを教えてください。

徳岡臣紀:
弊社は特異なミッションやビジョンを掲げて独自性の高いサービスを提供するだけでなく、業務にあたる人材に素晴らしい力を発揮してもらえる会社だと感じています。

全メンバーが経営者目線でポジティブなアイデアを出し、問題解決に結びつけています。それぞれがリーダーシップをとって各学校の予算にあわせた価値あるサービスを考え、広い視野で仕事に取り組んでいるこのような組織は、極めて珍しいと自負しています。

ーー5年後・10年後の目標をお聞かせください。

徳岡臣紀:
AIの台頭をはじめとしたテクノロジーの進化があり、意思の伝え方や価値感も変わっていく社会の中で、これからの教育の在り方を再設計していきたいと思います。

そのためのプランとして現在、私立公立を問わず、首都圏と関西エリアの学校を中心に事業を展開しており、ゆくゆくは全国に拡大していく構えです。

現在の学校は、伝統と教育方針を踏まえつつ社会の変容に伴った改革を迫られています。弊社が学校のパートナーとして学びの場を共に創っていくことで、個性あふれる学校が日本社会に増えると、生徒の学びの選択肢も広がります。これからも学校と共に21世紀に合う教育を実現していくことが大きな目標です。

編集後記

「なぜ勉強するのか、なんのために教育を受けるのか。こうした疑問の答えを自ら探究することがとても重要」と語り、徳岡氏の教育に対する真摯な思いが伝わってきたインタビューだった。

「現在の教育は時代の変化に追いついていない」と業界に一石を投じ、画期的な教育ビジネスを提供しながら教育の抜本的改革を目指す徳岡社長は、私の目には実にすがすがしく頼もしい存在として映った。

徳岡臣紀/1980年、青森県生まれ。東京大学工学部卒。東大在学中の2000年、東大生の有志により、家庭教師センターを運営するサークルを母体として、「東大家庭教師友の会」を設立。2000年、株式会社トモノカイを設立し、代表取締役社長に就任。