※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

漢字や英単語、歴史上の人物などを「記憶すること」は単調で苦痛な作業になりがちだ。必要性を理解していても、気分が乗らない人は多いだろう。しかし、もし記憶することがより簡単になったらどうだろう?私たちは今より少し豊かな生活を送れるのではないだろうか?

そんな可能性に正面からぶつかり、事業化、そして起業へとつなげた人物がいる。「記憶」をテーマにしたビジネスに取り組む、モノグサ株式会社の代表取締役CEO、竹内孝太朗氏だ。

竹内社長はなぜ記憶と向き合うのか。そのきっかけや思い、かなえたいビジョンなどについて聞いた。

リクルート社員時代に史上初の偉業を達成し、世界平和のために教育格差の是正に挑戦

ーー竹内社長の経歴をお聞かせください。

竹内孝太朗:
私は学生の頃から起業したいと考えていました。そこで、新卒で営業力に定評があった株式会社リクルートに入社する道を選択。入社して最初の3年間は自動車の広告営業に携わり、次に、英語教育事業に異動して4年半『スタディサプリ』というオンライン学習サービスに携わりました。

その後、30歳になった2012年にリクルートを退社し、当時Googleのエンジニアだった弊社の代表取締役 CTO畔柳圭佑とともにモノグサ株式会社を立ち上げ、現在に至ります。

ちなみに、リクルート時代に一つ誇れることがあります。それは、入社2年目と4年目にグループ全営業の中でトップになったことです。さらに企画部門でもトップになり、グループ史上初の2事業領域トップを実現しました。

これは、自分の仕事との向き合い方が実を結んだ結果だと思っています。営業をしながら事業開発についても意識していたことが、継続的な業績向上につながったのでしょう。

ーー竹内社長が起業を目指したきっかけを教えてください。

竹内孝太朗:
子どもの頃に耳にした、ノーベル経済学賞の受賞者であるアマルティア・セン氏による「貧困からの脱却には教育が大事だ」という言葉がきっかけです。この言葉を知って以降、教育格差の是正につながるサービスを提供したいと思うようになりました。

私は小学生のころから世界を平和にする活動に興味があったので、教育格差の是正を実現して、ひいては世界が平和になるような活動につなげたかったのです。

長い間、そのための手法を考え続けて「記憶」という題材にたどり着きました。記憶することへのハードルを下げられれば知識レベルが底上げされ、教育水準が上がると考えたのです。

このビジョンを実現するには、思考を形にする畔柳のエンジニア技術が不可欠と考えました。そこで、2人で打ち合わせを繰り返して「記憶」の解像度を高めていき、具体的な手法や道筋を描いた結果、起業が最適な手段だと判断しました。

一度聞いたら忘れない「モノグサ」という社名の由来は

ーー貴社の社名である「モノグサ」の由来は何ですか?

竹内孝太朗:
社名のきっかけは、畔柳の「『くさ』って響きかっこよくない?」という何気ない発言からです。確かに「くさ」を「XER」と表記すると映えますし、語呂もよさそうに感じました。

そこで「くさ」を含む4文字の和語を挙げてみました。そのとき出たのが「ものぐさ」です。一見ネガティブに聞こえる言葉ですが、よく調べると昔話の「ものぐさ太郎」が、頭がよく思慮深い人物だと分かりました。

しかも「ものぐさ」という単語は「非合理的なことを嫌う性格」を表すときにも使われることが分かりました。こうして意外にも「ものぐさ」がピッタリだと意見が一致し、社名に決まったわけです。

記憶の定着を目指すサービス「Monoxer(モノグサ)」

ーー貴社の事業や独自の強みを教えてください。

竹内孝太朗:
記憶の定着を目的にしたサービス「Monoxer(モノグサ)」の運用です。「モノグサ」は長期記憶に効果的といわれる「テストなどにより対象を想起する」行為(テスト効果)と「能動的にアウトプットをする」行為(産出効果)を通じて記憶の定着を目指す記憶のプラットフォームで、英語や国語、歴史、ビジネスなどさまざまなジャンルに利用できます。

このサービスは記憶する「苦しみ」の排除を徹底しています。学習者がギリギリ解けるか解けないかのヒント量を機械が自動で調整して問題を出題してくれるので、学習者はヒントを基に答えを思い出すことを繰り返すだけで、自然に記憶の定着が目指せます。

しかも、学習者ごとの記憶状況は機械が記録しているため、忘れる前に適切なタイミングと難易度で問題を出題してくれます。また、いつまでに、どれくらいの知識事項を憶えたいかを設定すると、機械が復習の期間を含めて自動で学習の計画を作成してくれる「学習計画機能」もあります。

すでに塾や学校などの教育現場で導入されており、最近は会社の従業員教育でも使われ始めています。導入した塾や学校からは「テストの点が低い子を減らせた」「英検の合格率が3割から8割まで上がった」、さらには「子どもが自信を持てるようになった」「学習習慣が身に付いた」などの報告をいただいています。成績が上がるだけでなく、学習者自身にポジティブな変化が見られるのは本当に嬉しいですね。

記憶を日常にするために必要なマイルストーンとは

ーーこれから5年、10年後を見据えて、どんなミッションに挑戦したいですか?

竹内孝太朗:
弊社のミッションである「記憶を日常に。」を達成するために「誰でも記憶ができてあたり前な世界」の実現を目指します。

そのために、まず必要なのが「Monoxer」が対応可能な記憶情報の拡大です。たとえば人や物の動きについては、現状非対応ですが、いずれは実現できると考えています。

また、記憶の目的と必要なコンテンツの紐づけも必要です。目的に対してどのような行動が必要かを証明できれば、記憶そのものに価値が生まれるはずです。

さらに、学習のモチベーションを生み出す仕組みを解明する必要もあります。記憶の成果を表すロールモデルの導入や、学習者が頑張れる環境整備などが必要だと考えています。

そして最終的には「記憶するとお金を稼げる世界」へとつなげていきます。これができれば、自発的に記憶する人が増え、ひいては教育格差の是正につながると考えています。

全人類に関係がある「記憶」の会社で働くということ

ーーこの記事の読者にメッセージをお願いします。

竹内孝太朗:
弊社には「記憶」の会社という他にはないアイデンティティがあります。記憶に深い興味を持つ社員たちが集まっているので、「記憶」に興味がある方は面白い日々を送れるでしょう。

とはいえ、記憶が当たり前の世界を実現するには時間がかかります。そして、この変革を全人類に届けるというミッションはあまりにも規模が大きく、前例がないほど難しいことです。

しかし、ミッションは難しいほど燃えるものです。超長期戦になると思うので、弊社のバリューの一つ「ものぐさで行こう」を大切にしながら、根気よくコツコツ続けていきましょう。

社員たちは皆、それぞれの専門性を武器に成長思考で仕事に取り組んでいます。長い時をかけた巨大なミッションの中で自分を成長させたい方は、ぜひ参加いただければと思います。

編集後記

「記憶」はすべての勉強の基本だ。かつて熱心に図鑑を暗記した子ども時代のように、いつの間にか知識が増えている生活が日常になったとき、私たちはどのような変化を感じるだろうか。あまりに根本的な竹内社長の挑戦は、私たちに想像以上の未来を見せてくれることだろう。

竹内孝太朗/1987年、愛知県出身。名古屋大学経済学部卒業。2010年に株式会社リクルートに入社。2013年から「スタディサプリ」にて高校向けサービスの立ち上げに従事。全国の高校1,000校を行脚し、学習到達度測定テスト、オンラインコーチングサービスの開発を行う。2016年に畔柳圭佑氏(現:代表取締役 CTO)とモノグサ株式会社を共同創業。休日は子どもと一緒に「Monoxer(モノグサ)」で勉強している。