※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

2024年9月時点で全国41都道府県に60あるJリーグ(日本プロサッカーリーグ)のクラブは、試合に勝つためだけでなく、地域活性化の役割も兼ねて日々活動している。そんなJリーグのクラブの中で、福岡県北九州市をホームタウンとして活動しているのがギラヴァンツ北九州だ。

同クラブを運営する株式会社ギラヴァンツ北九州の代表取締役社長、石田真一氏に、クラブ運営の目標やスタジアムの魅力、同氏が実現したいと考えている未来の姿を聞いた。

クラブ運営を通してスポーツの価値を広め、地域を盛り上げたい

ーー貴社に入社するまでの話を聞かせてください。

石田真一:
海外でビジネスをしたいという漠然とした思いがあり、新卒で商社へ入社し、アメリカ駐在も経験しました。駐在中は合弁会社を経営し、その中でステークホルダーと調整しながら現地での舵取りをできたのは、大きな経験になりました。

その後、自己研鑽も兼ねて商社で働いていた時に、Jリーグが特別協賛会員として参加している公益財団法人スポーツヒューマンキャピタルという、クラブ経営人材を養成する学校へ通うようになったのです。もともと私はスポーツに触れる機会が多く、スポーツが人々に与える価値や感動に興味がありました。

スポーツ業界の人々と関わるようになり、「クラブ運営を通して新しいチャレンジをしたい」と思っていた最中、株式会社ギラヴァンツ北九州の前社長と出会ったことをきっかけに入社に至りました。

ーー新しいチャレンジにあたり、どのようなことを考えていましたか。

石田真一:
クラブ運営を通じて地域を盛り上げ、そのコミュニティをどんどん広げていくことです。「Jリーグ百年構想」には「地域に根ざしたスポーツクラブ」という考え方が含まれ、地域のステークホルダーと一緒に成長していくという姿勢にも共感しました。

クラブが地域の中心にあって、そこから地域が盛り上がっていくような「絵」を実現できたら素晴らしいことだと考えました。そのためにも、現在のJ3よりも上のカテゴリーを目指すためのチャレンジをしていけたらと思っています。

良い成績を残し、熱気や非日常感がより一層高まるスタジアムを「創出」したい

ーー社長就任時から続く思いについて、聞かせてください。

石田真一:
クラブが生み出している価値の源とは、試合で生まれる熱気や非日常感、感動だと私は思っています。そして、この価値の源の一つはスタジアムにあると考えており、「スタジアムを満席にしたい」という思いが当初からありました。

ギラヴァンツ北九州がホームとしているミクニワールドスタジアム北九州は、収容人数1万5,000人に対して現在は平均4,000人程度の観客数なので、毎試合満席にすることが1つの目標です。

昨年はJリーグ60クラブの中で最下位という戦績でしたが、今年は競技面で成績を残して、より多くの人に試合を見てもらえるよう、力を入れて取り組んでいるところです。

ーーミクニワールドスタジアム北九州の魅力は、どういった点にありますか。

石田真一:
何と言っても、アクセスの良さが魅力の1つです。新幹線が停車する小倉駅から徒歩7分の距離にあり、スタジアムまでの道にアーケードがあるため、雨に濡れることもありません。

また、球技専用のスタジアムになっており、陸上競技用のトラックがないので、ピッチと観客席が近く、臨場感があります。海と山の両方が見られる素晴らしい景色も魅力で、観客からの評価も高いスタジアムです。

地域の人々に愛され、必要とされるクラブになるのが最終ゴール

ーー社長就任直後は、どのようなことを感じていましたか。

石田真一:
非常に厳しいスタートでした。J3からJ2への復帰を目標に掲げているにもかかわらず、シーズンの早いタイミングでその目標が叶わないという状況を迎え、さらにはJリーグの下部カテゴリーであるJFLに降格する可能性もありましたから。私が代表になった年でしたから、責任の重大さを非常に感じていました。

ただ、スポーツの世界は相手との試合で勝敗が決まるので、自分たちだけではどうにもできない面が少なくありません。コントロールが容易でない、スポーツ業界の難しさを実感しました。

ーー今後の目標を教えてください。

石田真一:
先ほど述べたJ2に戻ることに加えて、地域の人々により愛されて、なくてはならない存在になるのが私たちの目標でありゴールです。J2やJ1など、上のカテゴリーを目指すことは、このゴールを達成するための手段でしかありません。

そのため、幣クラブは地域貢献活動や行政・学校・企業との連携などにも力を入れています。そういったクラブのスタイルを確立し、一人でも多くの地域の方々に知っていただくのも、これからの課題です。

より多くの人に愛され、クラブ活動を通じて地域が盛り上がり、地域が元気になっていく。市民に「ギラヴァンツ北九州があって良かった」と思ってもらえるようなクラブになるのが最終的な目標ですね。

編集後記

スポーツの力は、大人だけでなく子どもにも大きな影響を与える。子どものスポーツ離れもささやかれる昨今。ギラヴァンツ北九州の存在は、地域の子どもたちにスポーツの面白さを伝え、夢を与えることにつながっている。

スポーツの価値を信じて邁進してきた石田社長率いるギラヴァンツ北九州なら、今後さらに躍進し、地域の人々に感動を届けてくれるだろう。

石田真一/1969年、鹿児島県生まれ。1992年、一橋大学商学部を卒業し、三菱商事株式会社に入社。ドイツやアメリカに駐在。2021年に株式会社ギラヴァンツ北九州へ入社し、2023年に代表取締役社長に就任。