※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

「物理学者から企業経営者へ」転身した異色の経歴を持つ石田氏が率いる日本ビスカ株式会社。現在は、動物病院や歯科医院、各科診療所を中心に、約3万のクリニックにサービスを提供している。カルテファイルの製造・販売から始まり、ホームページ制作、予約システムの開発、そしてデジタルサイネージまで、時代のニーズに合わせてサービスを進化させてきた。ITを活用したアプローチで、医療機関の業務改善に貢献する同社の代表取締役、石田伸道氏にお話をうかがった。

研究者から経営者へ大転換

ーーこれまでのご経歴を教えてください。

石田伸道:
大学院では原子核工学を専攻し、1990年に博士号を取得しました。その後も成蹊大学の助教として、研究を続けていました。1995年からアメリカのコロンビア大学で研究に従事し、1997年に帰国。ちょうどそのころ、父から「ビジネスをやってみないか」と声をかけられたのです。それまで学術の世界にいたので、研究者としてのキャリアを続けるか、それとも新しい挑戦をするか、かなり悩みましたね。

悩んだ末、ビジネスの世界を選び、父が経営していた日本ビスカの専務取締役に就任し、父の他界にともない2003年には代表取締役に就任しました。ビジネスの世界に入るのは大きな決断でしたが、今となっては良い選択だったと感じています。

ーー学術の世界の経験は、ビジネスの世界でどのように活かされていると思いますか?

石田伸道:
学術の世界で培った論理的思考や問題解決力は、ビジネスの世界でも大いに役立っています。新しい技術やサービスを開発する際にも、研究者時代の経験が活かされていると感じますね。一方で、ビジネスの世界特有の難しさもあります。特に、人材管理や営業戦略など、人と接する部分における学びは多かったですね。この学びを通じて、両方の世界の良いところを融合させることができたと思います。

医療機関に特化したサービス展開と顧客重視の姿勢

ーー現在の事業内容と、他社との違いについて教えてください。

石田伸道:
大きく分けて2つの柱があり、1つは医療機関のマーケティングを支援すること。具体的には、ホームページやデジタルサイネージ用動画の制作、予約システムの提供などです。クリニックの特徴を活かしたホームページを作成したり、待合室のデジタルサイネージを通じて、患者さまに有益な情報を提供したりしています。

もう1つは医療機関の業務効率化ですね。幅広い医療機関に向けた診療予約システム「Mr.WEB予約V」と、歯科に特化した「V-apo」を提供しています。Web予約を可能にすることで、クリニック側の負担を大幅に軽減し、より多くの時間を患者さまのケアにあてられます。これにより、予約状況が一目で確認でき、スケジュール管理が容易になります。

ーー貴社の強みはどういったものですか?

石田伸道:
弊社の強みは、これらのサービスをトータルで提供できる点ですね。マーケティングから業務効率化まで、医療機関の運営に関わるさまざまなサービスを提供することができます。また、各サービスが連携しているため、ホームページから予約システムや、受付システムへとシームレスにつながるソリューションの提供も可能です。

きめ細かいサービスを重視し、予約システムを導入した後も、使い方のサポートや運用のアドバイスを継続的に行っています。お客さまの日々の業務から、常に改善点を探っているのです。お客さまとの関係性を大切にすることで、長期的な信頼関係を築いていることも強みだと考えています。

リモートワークと人材育成で目指す今後の成長

ーー今後、注力したい分野についてお聞かせください。

石田伸道:
弊社は、商品別に事業責任者を置き、その後継者を育成することに注力しています。各事業責任者としては人材採用、教育、案件管理など、マネジメントができる能力が必要だと考えています。そうした人材を2、3年のうちに育成したいですね。

また、営業部門の強化にも力を入れており、毎年人員を2割程度増やすことを目標にしています。しかし、営業が増えれば、それだけお客さまも増えるので、比例して他の部門の採用も進めなければなりません。両者のバランスを見ながら着実に進めていきたいと考えています。

ーー最後に、これから入社を考えている方へメッセージをお願いします。

石田伸道:
弊社では、「心も繋がる、頭も繋がる」をスローガンに掲げています。これは、お互いの「気持ち」と「考え」を理解し合おうという意味です。社内だけでなく、お客さまとの関係においても同じです。お客さまと信頼関係を築いて「気持ち」でつながりながら、お客さまが成功するための方法を一緒に「考えて」いく。そんな姿勢で仕事に取り組める方と一緒に仕事ができたら嬉しいですね。

編集後記

予約システムからデジタルサイネージまで、時代の変化に敏感に適応する同社。石田社長の「変化を恐れない」精神が、会社の柔軟な進化を支えているのだろう。「心も繋がる、頭も繋がる」というスローガンのもと、クライアントの課題に向き合う真摯な姿勢が印象的だ。医療現場の効率化と患者サービスの向上を両立する同社の取り組みは、まさに現代の医療に必要不可欠なものだと感じた。

石田伸道/1962年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院後期博士課程を修了した後、成蹊大学工学部に助手として就任。放射線検出器の研究を行うとともに、学生の教育指導を行う。1995年、研究に専念するため渡米し、コロンビア大学宇宙線物理学研究室で、宇宙ガンマ線検出器の開発に従事。1997年、日本ビスカ株式会社に専務取締役として就任。2003年、代表取締役に就任。