BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、企業が自社の業務プロセスの一部を外部業者に委託する経営戦略だ。会社が成長する過程で、業務が増加し煩雑になっていくのは避けられないが、日本の労働力人口が減っている近年、そうした業務を自社だけですべて担うのは難しい。
株式会社フォリウムは東京本社のほか、青森県と山口県に拠点を構え、企業をサポートするBPOをさまざまなニーズに合わせて提供している。地方から都市部の企業を支える同社は、特色のあるBPOを展開しながらさらなる成長を続けている。今回は、代表取締役会長CEOの三好浩和氏から、起業に至るまでの経緯や現在の取り組み、そして今後の展望についてお話をうかがった。
大学時代に起業を志し中国へ、そして青森へ
ーー学生時代から起業に至るまでのエピソードをお聞かせください。
三好浩和:
家族の仕事の関係で10代をアメリカで過ごし、大学入学に合わせて日本へ帰国しました。大学1年生の頃から「自分のしたいことをしよう」と興味関心が高い分野を探していたところ、出会ったのが「起業」という選択肢でした。
もともと環境や機会に恵まれてきた自覚があったので、何かしら社会の役に立つことをしていきたいという思いがありました。起業家が社会に与える影響について、その可能性の大きさを知ったとき、強く惹かれ、志すべき道はこれだと確信したのです。
起業の勉強をするため、学生時代はいろいろなビジネスコンテストに出場しました。そこで提案したビジネスアイデアが高く評価され、大学仲間と会社の設立も経験しました。その過程で、意味や意義をより感じられる仕事に挑戦したくなり、大学4年生のときに中国へ移住しました。その際、中国で立ち上げた「オフショアBPO」という事業が、現在のフォリウムの原型となっています。
その後、青森県でマーケティングリサーチ業界の経験者を複数人採用する機会を得て、地方で案件を請け負う「ニアショアBPO」というコンセプトで現在の事業を立ち上げました。会社としての実績はなくても、技術をもった人がいるという点は、仕事を獲得していく上で大きな強みとなりました。その5年後、BCP(事業継続計画)の観点から、山口県山口市に2つ目の拠点を開設しました。
一つひとつの企業の需要に合わせたBPOを
ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。どのようなニーズに向けて事業を展開しているのでしょうか?
三好浩和:
現在は青森県八戸市と山口県に事業所を構えており、主に3つの事業を行っています。1つ目は、マーケティングリサーチに必要なプロセスの一部を請け負う「リサーチBPO」という事業です。弊社は現在、リサーチ業界の中ではトップクラスの運用体制と実績量を誇っており、たくさんのお客様にご愛顧いただいています。
2つ目は「オーダーメイドBPO」として、お客様の課題に合わせて体制を構築する事業です。3つ目が「ローコード開発(難度が低く比較的短期間で習得しやすいソフトウェア技術開発のこと)」で、ローコードを習得する人を弊社で数多くそろえ、人手が不足しているソフトウェア開発領域のお客様にサポートを提供しています。
2つ目の「オーダーメイドBPO」について補足すると、お客様の企業で担いきれない分野の仕事を、弊社の社員が代わりに行うというものです。お客様によっては社内における増員が難しい場合や、ある業務分野の人材を安定して確保できないケース、また、短期間での習得が難しい技術者を社内で育成する余裕がない、といったさまざまな事情があります。
そこで、弊社の社員が依頼を受けてお客様の会社へ出向き、数週間から数か月かけて業務を習得します。習得後は、弊社の事業所に持ち帰って他の社員と共有し、お客様の業務を代行する体制を整えていきます。運営体制が安定するまでに数か月ほどかかることもありますが、構築後は徹底した業務プロセスの数値化と業務管理の可視化によって、安心して仕事を任せていただけています。
都市部の仕事の中には、売り上げを上げるために必須であるにもかかわらず、事業を大きくしていく過程で人手が足りなくなっている分野があります。そこをサポートさせていただくのが弊社のメイン業務です。「人と技術で自由を拡張する」という弊社ミッションのとおりお客様の事業拡張のお手伝いをさせていただいている、という意識で取り組んでいます。
地方で人材を発掘し、長くともに働いていく
ーー貴社の強みを教えてください。
三好浩和:
弊社では採用と育成に力を入れています。正社員として長くともに働いていくことを見据えた採用を行っており、このスタンスが育成方針にもつながっています。
弊社の業務には、習得に最長で2年を要するものもあるため、短期雇用は向いていません。仕事を習得し長期的な戦力となる人材を確保するために、採用と育成に対してある程度のリスクとコストを引き受けています。
また、社員の仕事への取り組み方に対しても、お客様から高い評価をいただいています。外注業者として依頼された指示をただこなすのではなく、お客様の業務におけるチームの一員として組織に入り込み、献身的に課題に取り組んでいく。長期雇用を前提とした採用方針は、こうした社員全体の献身性ともいえる組織風土や文化を築き上げることにもつながっています。
もう一つ、弊社の強みとして、青森県と山口県という、都市部から離れた地域に拠点を置いている点が挙げられます。一度は東京に出て経験を積んだ人が、地元へUターンした際の就職先の受け皿としても、弊社は機能しています。地元で働きたいという人が、自分のスキルを活かせる職場を見つけられないのは非常にもったいないですからね。地域に根差し、人材育成と人材輩出に貢献していくことは、とても意味のあることだと思います。
全国各地に根を下ろし、縁の下の力持ちに
ーー新技術の開発では、具体的にどのようなことに取り組んでいますか?
三好浩和:
弊社で開発したAIツールを駆使し、業務の機械化を進めていきたいと考えています。近年、都市部の人手不足がより深刻になっており、機械化による課題解決が急務とされています。そこで、弊社のAIツールを用いた「半機械・半人力」のシステムにより、今まで機械化が難しかった分野に対して新たなサービスを提供できるように開発を進めています。
また、ローコード開発分野は、今後弊社の中核を担う重要な新事業という位置付けのもと、事業拡大に注力しています。世の中全体でこれから需要がさらに高まっていく分野であるため、エンジニアの人材育成も目標としています。
ーー今後の展望を教えてください。どのような未来を見据えているのでしょうか?
三好浩和:
今後はさらに地方の拠点を増設していく予定です。現在、八戸市と山口市の事業所で合計約400名の体制で業務にあたっています。この2つの市と同程度の規模で、かつ都市部から離れている地域を調べたところ、全国で130か所ほどありました。
これらの地域に新たな拠点をつくり、それぞれの事業所で100名から200名の人材を採用できれば、地元でキャリアアップを図りたい人たちのための確実な受け皿になれるでしょう。この取り組みは、さらに加速させていきたいと考えています。
「すべての人が暮らしたい場所で輝く未来」という弊社のビジョンを念頭に、私たちは前進し続けています。日本の労働力人口が減り続ける中、拡大していく企業の成長を止めないためにも、私たちにできることは何かを常に自問しています。そういう意味でも、地域に拠点を増やしていく取り組みは、日本全体の成長を後押しできるような価値ある社会インフラ投資につながると確信しています。
編集後記
地域の優秀な人材が活躍できる受け皿となるとともに、都市部の顧客企業のさまざまな需要に合わせて人材と技術を提供する株式会社フォリウム。組織を牽引する三好CEOは、日本の未来に良い影響をもたらすべく、全国的な拠点展開への取り組みを続けている。常に変わり続ける業界のニーズをいち早く察知し、技術開発を進める同社の行く先にはさらなる飛躍が待ち受けているに違いない。
三好浩和/1981年、三重県生まれ。10代を米国で過ごす。慶應義塾大学環境情報学部卒業。その後、中国大連市へ移住して日本向けオフショアBPOサービスで起業し(2014年に売却撤退)、以来16業種21社の設立、経営、出資などに携わる。現在はニアショア拠点の拡大に注力し、リサーチBPOおよびオーダーメイドBPO、そしてローコード開発事業を手がける株式会社フォリウムの代表として、日本企業の発展と日本各地の人材育成に尽力している。