※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

コロナ禍以降、多くの企業がさまざまな事業を展開しているが、もちろん事業拡大の経緯は各社で異なる。アイ・ケイ・ケイホールディングス株式会社の代表取締役会長兼社長CEOである金子和斗志氏は、挙式・披露宴の企画・運営を基軸にしながら、「人財が新しいビジネスを創造する」という信念のもと、グループ会社として介護事業、海外婚礼事業、食品事業、フォト事業といった多角的な事業展開に挑んできた。今回は、事業拡大を続ける金子氏の思いと、その方向性についてうかがった。

現在の事業を形作ったのは、商売人の家で生まれ育った経験

ーーどのような経営で経営に参画されたのでしょうか?

金子和斗志:
父と母がスーパーマーケットやビジネスホテルかねこ等の事業を行ってたのがきっかけです。私も小学校5、6年生の頃から「事業家になる」「商売をしなければならない」と考えていました。

ところが私は、高校を卒業後大阪へ出て遊び歩いていました。勉強なんて一切していなかったです。そして、22歳の時、伊万里の父から「ビジネスホテルかねこの新館を建てるから戻って来い」と言われたので、金子興業株式会社に入社しました。

商売人の家に生まれた私は、家族のためにビジネスを繁盛させることが目標だと感じていました。予約表が真っ白であったり、ドブ板営業をしたり、大変なこともたくさんありましたが、家族でビジネスの方向性を議論することは、私にとって非常に楽しい経験でした。

ーー社長に就任した当時の思い出を教えてください。

金子和斗志:
1974年10月に入社し、1981年に社長に就任しました。就任後、「伊万里グランドホテル」を新たにオープンしましたが、まだ小さなホテルだったため、「まずは佐賀県伊万里市で一番のホテルになりたい」と考えていましたね。その後、冠婚葬祭事業に着手し、婚礼事業も開始したのです。

会社としてのさらなる成長のために目標にしたのは、「佐賀県で一番の結婚式場を目指したい」ということ。その後は「福岡県に進出したい」と考え、1991年の初夏、「上場企業を目指したい」という夢を抱くようになったのです。結果、2010年に大阪証券取引所JASDAQ、2012年に東京証券取引所市場第二部、2013年に東京証券取引所第一部に上場を果たし、現在はプライム市場に上場できております。

ーー会長のビジネスに対する思いはどこから来ているのですか?

金子和斗志:
兄が病気で亡くなったことが大きな転機となり、私の考え方が根本的に変わりました。家族の大切さを痛感し、人生のはかなさを感じたのです。

普遍的な真理の一つである「人間は必ず死ぬ」という事実を痛感したことで、「たった一度の人生だから、価値あるものにしたい」「人のためになる仕事をしたい」と強く思うようになりました。

新しい人財が加わることで、挑戦の幅が広がる

ーー婚礼事業の戦略について、お聞かせください。

金子和斗志:
現在、国内に20拠点展開をしており、新たに東京、福岡に2拠点の出店も既に決定しております。海外においては現在インドネシアにて6拠点展開をしており、着実に成長を遂げております。

結婚式において、引き出物や料理、スタッフの接客態度などお客さまの満足度を引き出す要素は多岐にわたります。そのどれもに共通して必要になってくるのが、当社の強みの人財の質であると思っています。今後も引き続き強みを活かしながら、「結婚式といえば、アイ・ケイ・ケイ」と言われるよう、お客さまの満足度を向上させていき、当社の結婚式を一つのブランドにしていきたいと考えています。

ーー食品事業についても教えていただけますか。

金子和斗志:
以前、食品事業設立に至る過程で、モンドセレクションというものに着目し、弊社でも同様の成果を追求したいと考えるようになりました。受賞商品を生み出し、それを主力商品として食品事業を立ち上げれば、新たな価値を提供できると考えたのです。

2020年、食品事業を展開するため、福岡県糟屋郡志免町に当社95%出資の連結子会社として、株式会社明徳庵を設立しました。現在代表取締役社長を務めている松井は、給料のほとんどを食につぎ込むほどのグルメであり、絶大な探求心があります。当社にはミシュランの星を獲得した料理人も在籍しているので、そことシナジーを生み出しながら商品開発を行った結果、10商品応募し、10商品すべてでモンドセレクション最高金賞等を受賞することができました。

今年2024年に、私は3年間食品事業の社長を務めましたが、その役職を松井に譲り、食品事業がさらに成長できるよう大変期待をしています。

ーー食品事業におけるブランド化の重要性についてどのように考えていますか?

金子和斗志:
弊社の婚礼事業では、引き出物として食品事業が手掛けた商品を提供するなど、弊社のビジネス内で魅力ある商品をすでに展開しています。さらに、食品事業ではブランドイメージを保つために、どこでも販売するようなことはしておりません。一部百貨店などで、期間限定などで販売することによって、贈り物としてのイメージを保つよう心がけています。

ーー貴社では人財の必要性について、どのように考えていますか?

金子和斗志:
弊社では、優秀な人財の確保が非常に重要だと考えています。また、既存社員の育成・定着を目的とした社内外の研修を積極的に行っています。これにより、当社で働くスタッフはみな、目的を持ち自ら考え実行する能力が磨かれていると思っています。当社が日々チャレンジを続けてこられているのは、従業員の皆さまのおかげなのです。

私は、企業をつくるのは今も昔も人財であると考えています。既存の従業員の皆さまには夢・ビジョンを持って目の前のお客さまのために、一生懸命に仕事に取り組んでいただき、新しく仲間に加わる新入社員の皆さまにも夢・ビジョンを持っていただけるような会社であり続けなければならないなと思っています。
今、構想として持っているのは婚礼事業のブランド化、食品事業の拡充及びブランド化、そして、ホテル・カフェ事業にもこれから参入していき、それらすべてを兼ねそろえたリゾートを作りたいと考えています。そして観光産業を創りたいと思います。今年私は72歳になりましたが、まだまだ「いま」「ここ」からが本番であると思っています。これからも、大切な従業員の皆さまと一緒に素晴らしい未来をつくってまいります。

編集後記

金子和斗志氏は商売人の家に生まれ、先代から受け継いだ事業を飛躍的に成長に導いている。彼の話からは、事業を拡大する過程で、人財の重要性を深く認識していることがうかがえる。また、事業を行う上で、業種問わずお客さまを常に1番に考えている。金子いわく、お客さまとは自分以外のすべての人であるという。取材を通じて、社内の人財を大切にし、その力を最大限に活かしながらお客さまとの信頼関係を築く姿勢が、強く印象に残った。

金子和斗志/1952年生まれ。佐賀県伊万里市出身。1974年に実家の金子興業株式会社(現:株式会社アイ・エス)に入社し、1981年に代表取締役に就任。1995年、アイ・ケイ・ケイ株式会社を設立。2000年、九州で初となるゲストウェディング施設をオープンし、その後、全国に20店舗を展開。2021年、代表取締役会長兼社長CEOに就任し、現在に至る。