※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

株式会社キャスターは、2014年に設立された人材事業を運営する会社だ。リモートアシスタントサービス・派遣・職業紹介など、人材関連の幅広いサービスを提供している。設立当初からリモートワークに特化し、自社社員も、登録している求職者に紹介する仕事も、リモートワークという徹底ぶりだ。同社を創業した代表取締役兼執行役員の中川氏に、設立までの経緯や今後の展望などについてお話をうかがった。

古着屋を経営する中で気づいた「インターネットの重要性」

ーー会社を設立するまでの経緯について教えてください。

中川祥太:
ミュージシャンになりたいと思い、東京の大学に進学しました。大学2年生の時、古着店でアルバイトをしていた時、他の方から「閉店するけれど、店をやってみないか」と声がかかったため、古着店を自ら開業することになりました。

古着屋の経営は様々なことを学べ、とてもやりがいがあります。ある時、店舗が広かったので、空いたスペースをシルバーアクセサリーを販売している人に貸したのですが、私が3,000円のTシャツを売ろうとしている横で、彼はブログを活用して、わずか数分で1本150万円の商品を売ってしまったのです。

その状況を見てインターネットの重要性に気づき、IT知識をしっかり得たいと思い、就職を決意します。株式会社オプト(現:株式会社デジタルホールディングス)に入社し、デジタルマーケティングについて学びました。

その後、イー・ガーディアン株式会社に転職し、ネット監視業務の経験も積んでいます。そこで気づいたのが、「クライアントに業務を委託される会社は、とにかく人手が必要だ」ということです。

それと同時に、リモートワークで働きたい方の潜在ニーズがあることも現場で実感していました。当時はコロナ禍前であり、リモートワークは今ほど一般的ではありませんでした。在宅勤務の案件は求人数が少なく、あっても低賃金で単純作業の仕事があふれていました。

そのため私は「普通の仕事内容を、リモートワークでできれば良いのではないか」と気付き、そうした環境を提供するために弊社を設立したという経緯があります。

リモートワークという選択肢を増やし、自分らしくスキルを活かせる世の中へ

ーー設立後、実際にリモートワークで経営してみて気付いたことはありますか。

中川祥太:
改めて実感したのは「クライアントは、仕事を頼んだ相手がどこにいるか気にしていない」ということです。リモートワークで各自の家で対応しているのか、オフィスに大勢集まって対応しているのか、そうした点は全く気にされませんでした。

そのため、弊社のビジネスモデルは話題となり、無理にセールスをせずとも、企業からの問い合わせが増えていきました。同時に、弊社で働く従業員の数も増えました。

ーー経営していて苦労したことはありますか。

中川祥太:
設立当初はまだリモートワークが一般的でなかったため、特に地方在住でリモートワークをしている方の周囲からは疑問の声もあがったと聞いています。スキルを活かして働いていると、「家で仕事をしているのに、旦那さんよりも収入が高い」という状況も起こり得ますが、リモートワークを知らない方にはそれが信じられなかったようです。

そうした方々にも胸を張って「キャスターで仕事をしている」「リモートワークで働きたいなら、キャスターに相談するのがおすすめだ」と言っていただけるように、2023年には東京証券取引所グロース市場に上場しました。創業から一貫してフルリモートワークを実践してきた企業としては初めての上場だと聞いています。

法改正なども見据え、新たなニーズをキャッチしていく

ーー今後の事業展開について教えてください。

中川祥太:
インボイス制度の改正があり、経理・労務スキルを持つ方へのニーズが高まっています。そのため、経理・労務職の求人を強化していこうと考えています。現在、弊社求人への応募数は月2,000件以上ありますが、これがリモートワークではなく、限られたエリアだけで探すと、適したスキルを持つ方と出会うことは年々難しくなります。

今後も、時代の変化に合わせて必要とされる職種を中心に、スキルの高い働き手を求める企業からのご依頼は増えていく見込みです。さらに、弊社はAI事業にも乗り出しています。たとえば、会計業務の補助に特化した「AIエージェント」を導入し、より効率的に仕事を進められる環境を整えています。

また、弊社へのご依頼が増えてくると、それに対応する社員も増やしていく必要があります。そのため、今後の事業拡大にともない、採用を強化したいと考えています。

私は「優秀な人だけがリモートワークできる」のではなく、「出社勤務・在宅勤務に関わらず、誰もが希望する働き方で仕事を続けることでスキルアップしていく」という考えを持っています。こうした風潮は日本だけでなく、これから世界中に広まっていくと考えています。

そのため、弊社は海外にも拠点を開設し、世界中から優秀な人材を採用中です。これにより、弊社やクライアントのビジネスを支える人材がグローバルで確保できるようになります。

弊社には地方在住の社員が多く、女性比率が約9割と、多くの女性が活躍しています。「勤務時間中は仕事に集中し、終わったらプライベートな時間を大切にする」というように、メリハリをつけて働く風土が根付いています。さまざまな経歴・いろいろな性格の方にお会いして、多彩な強みを持つ会社をつくっていきたいと思います。

編集後記

「インターネットについて学びたい」から始まり、「リモートワーク専門」の人材関連ビジネスを立ち上げた中川社長。コロナ禍という苦難を追い風にして成長を続ける同社は、優秀な人材確保という面で企業に恩恵を与えると同時に、働く人の選択肢も増やしてくれた。今後はこの試みをグローバル単位に広げていくという。多様な人間が集まる多様な働き方が、今後のビジネス界に新たなイノベーションを起こしてくれそうだ。

中川祥太/2008年に古着店を開業。その後、2011年に株式会社オプト(現:株式会社デジタルホールディングス)に入社し、デジタルマーケティング領域での知見を深める。2012年にイー・ガーディアン株式会社に入社し、事業拡大に貢献。2014年、株式会社キャスターを創業し、代表取締役に就任。2023年、東京証券取引所グロース市場に上場。2024年、生成AIを活用したプロダクト開発を手がける株式会社LUVO取締役(現任)に就任。