※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

株式会社ミクセルは、理学や化学の分野における実験や分析などに用いられる理化学機器の販売や、介護用品のレンタル・販売などを行っている会社だ。同社は超高齢社会の課題に多角的なアプローチを続け、成長を続けてきた。

そのキーマンとなるのが代表取締役社長の島幸司氏だ。島社長は社員一人ひとりの成長を重視する「自律型」組織にこだわり、社員の自主性を引き出すことで組織全体の成長につなげている。具体的にどのように組織を活性化させているのか、そのマネジメント方法を聞いた。

立ち上げた会社を通じて部下を守り、会社を育て上げ、社会貢献のために奔走する

ーー島社長の経歴をお聞かせください。

島幸司:
私は26歳のときに自動車販売業界から理化学機器販売会社に転職し、しばらくその会社に勤務していました。

しかし、2008年になると会社の経営がリーマン・ショックで傾き、部下たちの雇用を守りたい一心で会社設立を決意しました。そうして生まれたのが弊社です。

設立後しばらくは理化学機器販売業務のみを行っていましたが、多くの研究者の方と接するうちに、徐々に健康そのものに貢献したい思いが強くなっていきました。こうして事業領域は少しずつ拡大していき、最終的には現在の「長寿を喜び合える社会の実現」を目指す姿へと変化を遂げました。

「研究支援事業」と「ヘルスケア事業」で多角的に超高齢社会を支えるビジネスを行う

ーー貴社の事業内容を教えてください。

島幸司:
主な事業は、理化学機器の販売やサービスの提供を行う「研究支援事業」と、介護施設の運営や介護用品のレンタル・販売を行う「ヘルスケア事業」です。

研究支援事業では研究機材の紹介を通じた治療技術の研究支援を、ヘルスケア事業はリハビリで加齢により低下した身体機能を回復させることを目的としています。両事業は関連性がないように思われがちですが、どちらも超高齢社会を支えるビジネスとしてつながっています。

弊社の事業テーマは超高齢社会の中で、一人ひとりが健康的で自分らしく生きる方法を模索していくことです。弊社の各事業領域から可能なアプローチを組み合わせて、超高齢社会という日本の大きな社会課題に正面から向き合っていきます。

ーーヘルスケア事業を始めた経緯は何ですか?

島幸司:
ヘルスケア事業スタートのきっかけは、介護業界に漂う暗い雰囲気を目の当たりにしたことです。2018年、大学の先生が開発したリハビリ用ロボットを紹介して回っていたときに、介護現場の重苦しい雰囲気やスタッフの皆さんが疲弊している現実を知りました。

私はこの様子に衝撃を受け、すぐに「自分の親がこの雰囲気の中で介護を受けたら」と想像しました。そして、事業を立ち上げることを決意したんです。「人のために働きたい」というマインドを持った社員たちも加わり、気が付けば自然発生的に事業がスタートしていましたね。

自由と協力が両立する秘訣は徹底した行動原理への回帰

ーー貴社独自の強みは何でしょうか。

島幸司:
新卒採用から社員育成や組織運営、さらには社員個々の行動原理まで、弊社におけるすべての行動を経営理念に紐づけることで、社員たちの行動や発想に一貫性・一体性を持たせていることです。これにより、社員たちの行動が異なっていても目指すべき目標が一致する、自由と協力の両立が可能になります。

また、徹底したカスタマーサクセスの追求も弊社の強みです。弊社が求めるのは売上の数字ではなく提案の先にある顧客の成功です。事業の本当の価値とは、事業を通じて人や組織、そして社会を良い方向へ変えていくことだと考えています。

また、介護業界では進みが遅いIT化に積極的に取り組んでいるのも弊社ならではといえるでしょう。お客様と触れ合う時間を増やすために、ITを活用することでそれ以外の仕事を圧縮し、より多くの価値創造につなげています。

ーー社員教育において大事にしている点を教えてください。

島幸司:
社員たちが自主的に学習に取り組む社風づくりを大事にしています。社員たちの学習に対する意欲を応援することで、学習を「あたり前にするもの」という認識にして、日常の一部へと溶け込ませています。

また、経営理念への共感を推進する教育も大事にしています。経営理念を浸透させるには、日々繰り返し触れる機会をつくることが大切です。役員やリーダーが率先して理念に基づく行動をとることで、理念に共感する社員たちが自然に増えていきます。

ちなみに、経営理念を浸透させるために朝礼に「日替わり社長」という制度を盛り込んでいます。これは、毎朝誰か一人が仮の社長となって経営理念を伝えるスピーチをするというものです。

私たちが目指す組織の最終的な姿は「自律型」です。私の指示がなくてもそれぞれが自己判断で動いて、自然とチームで協力していく環境を実現していきたいです。

個として、組織として、これからの時代に活躍するために必要なこと

ーー貴社はどのような人材が活躍できますか?

島幸司:
「至誠と大志 人の優しさと志を力に希望ある未来をつくる」という経営理念に共感いただける方を求めています。これができていれば組織の中での役割が明確になりますし、必要なことも自然と分かってきます。さらには事業の理解度も高くなるので、結果的に業務成績の向上にもつながるでしょう。いずれは自律的に働く楽しさを知り、自分の行動が会社の成長につながる喜びを実感してもらえたら嬉しいですね。

弊社には肉体的・精神的に安心して働ける環境が整っているので、安心して入社いただければと思います。多くの社員が産休・育休に協力的ですし、残業は積極的に削減していこうという考えも持っています。環境面を重視したい方ものびのび働けると思いますよ。

ーー今後、貴社をどのように成長させていきたいですか?

島幸司:
事業領域を人が直接対応する分野に限定し、人の手でしか生み出せない価値を突き詰めたいと考えています。これは効率やノウハウではかなわない大手企業との差別化を目的とした、弊社なりの成長戦略です。

ただ、いわゆる非効率な分野への挑戦となるため、可能な限りITやAIを駆使して、さらなる時間の捻出が必要になります。また、事業価値を高め続けるモチベーションも求められるでしょう。

しかし、弊社にはそれに足る環境が整っていると確信しています。これからも社員たちが挑戦し続けられる社風を維持し、社会に価値を与え続けられる会社としてあり続けます。

編集後記

島社長が実践する「自律型」組織は、社員一人ひとりに主体性を持たせると同時に、組織全体を本質でつなぐ理想的な組織の姿といえる。島社長のリーダーシップと、社員の自主性を育む独自のマネジメント手法は、多くの企業にとって新たな時代の参考になることだろう。

島幸司/1973年生まれ、長崎県五島市出身。近畿大学工学部機械工学科卒。経営学を学ぶために45歳でMBAプログラムの県立広島大学大学院経営管理研究科(HBMS)に入学し、2021年に修了。前職の企業の経営存続が危ぶまれたとき、部下の生活を守るために2008年に株式会社ミクセル設立。大学病院などの研究施設向けに、研究用機器や試薬の販売、各種コンサルティングなどを手掛ける。