高電位電子エネルギーを活用した技術で、食品業界に変革をもたらしているワタナベフードソリューション株式会社。同社の特殊な凍結庫やスピード解凍庫、熟成庫は、食品の高鮮度凍結やスピード解凍を可能とし、今までになかった高品質な食品管理を実現している。
今回、代表取締役の渡邊洋平氏に、ほかにはない同社の製品の魅力や、同社の製品が海外でも注目を集める理由、今後の展望などを聞いた。
小型・大型の両サイズがあり多様な用途で使える凍結庫や解凍庫を開発
ーー貴社の事業内容について教えてください。
渡邊洋平:
弊社は食品加工機メーカーで、高電位発生装置「VOLTA(ボルタ)」シリーズ(旧Pureシリーズ)の開発・販売を行っています。同シリーズの製品には、食品の凍結庫や解凍庫、熟成庫などがあります。
たとえば冷凍された肉を解凍しようとすると、ドリップ(離水)の量が多く、水分とともに旨味成分も外に出てしまうことがよくあります。
弊社が来年新たに発売する予定の解凍機は、微細泡の力と特殊な電界の力で食品の内外部を均一に解凍し、ドリップ量の削減はもちろん、流水解凍の3~4倍ものスピードで解凍できるのが特徴です。解凍庫は小型のものと大型のものがあり、大型のものはプレハブ型として販売しています。
食品ロスを出さないためには、食品を綺麗にスライスすることが大切で、そのために必要とされるのが適切な温度管理です。
電界式スピード解凍庫は、食材を素早く解凍する革新的な技術です。このシステムは、電界を利用して食材の中にある水分子の動きを促進し、解凍時間を大幅に短縮することができます。従来の解凍方法と比較して、食材の風味や栄養価を保持したままで、より効率的に解凍することができます。
この電界式スピード解凍庫で解凍した食材を使用した料理の試食提供が行われることで、その効果を実際に体験することができます。解凍する際に生じる水分の損失を抑えることで、食材のうま味や食感を損なうことなく、解凍後の料理に使うことができます。
この技術は、食品業界においては革新的な進歩と見なされており、食材の品質を保ちながら、生産性を向上させることが期待されています。また、消費者にとっても、解凍時間や手間を大幅に削減することができるため、利便性の向上が期待されています。
電界式スピード解凍庫は、食材の解凍における新たな可能性を切り拓く技術として、今後ますます注目されることでしょう。
ーーVOLTAシリーズの強みは、どういった点にありますか。
渡邊洋平:
来年発売予定のバブリング解凍機は、特許取得いたしまして、この小型で高速且つ品質も良い解凍は国内だけでなく、世界を見ても唯一無二の商品となります。水も無駄にすることもなく、SDGsにも貢献し、つい先日日本食料新聞社主催の第二十八回外食産業貢献賞も受賞いたしました。日本では大型タイプの解凍機が多い中、弊社は小型~大型のタイプまでのラインナップを有しており、国内メーカーとして唯一無二となります。
また、VOLTAシリーズの特殊な電界の力は、解凍だけでなく冷凍や熟成などさまざまな用途に応用できます。この電界技術を扱っているメーカー自体少ないですし、その中でも多様な用途で使えて、小型製品まで出しているメーカーは弊社だけです。
食品業界での期待感も大きく、実際にVOLTAシリーズは日本食糧新聞社の外食産業貢献賞で大賞を受賞しています。
国内だけでなく海外展開を見据えて販売網を構築していきたい
ーーどういった社内改革を実施してきましたか。
渡邊洋平:
もともと弊社は直販が多いこともあり、年間10以上の展示会に参加し、エンドユーザーに向けて直接製品をアピールしてきました。
ただ、小型製品など業界で話題になるものを開発したことで、最近は他業界からの販売店はじめ、国内・国外から弊社の製品を販売させてほしいと声をかけていただいています。このような状況を受けて、直販をメインにしていた販売網を再構築しようと努めているところです。
また、これからは国内はもちろんのこと、海外へ弊社の技術を展開していきたいと考えています。どの国でも肉や魚を輸入する場合は冷凍の状態で仕入れますし、国内の配送でも冷凍の状態が多いです。
特にアメリカや中国といった国土が広く、配送距離の長い国では凍結庫や解凍庫の需要が非常に高いことが分かっています。実際に、アメリカやブラジル、タイなどで販売実績ができ、現地で代理店や販売店をしたいという声も昨年から急増しています。
ただ、海外で販売するためにはそれぞれの国の法的な規格や資格を理解して対応する必要があるので、法律面を一つひとつクリアできるように動いているところです。
新しい会社だからこそ積極的に挑戦して幅広い経験ができる
ーー貴社で働く魅力について教えてください。
渡邊洋平:
弊社は小さなベンチャー企業ですが、新しい会社だからこそ自分たちでいろいろなことに挑戦できますし、任される仕事の裁量が大きいのが魅力です。
また国内外に仕事があり、訪れたことのない国に訪れるチャンスがあるのも魅力でしょう。海外の展示会に出たり営業したり、広い世界を見て幅広い経験を得ることができます。
そのほか、開発においても「まずはやってみよう」というスタンスなので、技術者が挑戦しやすい環境が整っています。机上の空論ではなく、自らどんどん開発を進められるので、非常に面白く感じるはずです。
編集後記
渡邊社長は今後の展望について「それぞれの国や地域に合った形の製品を開発していきたい」と、海外展開に向けた熱い意気込みを語った。ほかにはない高い技術で、日本の食品業界を変えてきたワタナベフードソリューション。同社が海外へ飛び出し、世界の食品業界に革命を起こす日も近いだろう。
渡邊洋平/1978年、愛知県生まれ。関西の大学を卒業後、韓国西江大学へ留学。ワタナベフーマック株式会社に入社し、中国現地法人社長に就任。2014年にワタナベフードソリューション株式会社を設立し、代表取締役に就任。