※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

専門学生と学校、企業をつなぐデジタルネットワークとして株式会社グッドニュースが開発・運営する「Careermap」が注目を集めている。これは専門技術職に特化した職業教育と就職活動をDXするアプリケーションであり、これまで当たり前だった職業教育における学内評価の枠を超え、学校と企業間の連携を円滑にすることで、一人ひとりの学生にとって最適な教育並びに就職機会を提供する画期的な仕組みを構築している。

紆余曲折を経て現在の事業モデルにたどり着いた同社の軌跡と、専門学生のキャリアに対する熱い思いについて、代表取締役社長の杉岡充敏氏に詳しく話をうかがった。

広告代理店で培った顧客満足へのこだわり

ーーグッドニュース社設立までの経緯を教えてください。

杉岡充敏:
2002年に近畿大学を卒業後、広告代理店に就職しました。入社当時は50人ほどの規模でしたが、2年後には200名を超える組織に成長していました。そこでの経験で特に印象深かったのは、顧客満足度を徹底的に追求する姿勢です。特に求人広告の仕事では、掲載翌日から効果が現れ、お客様から「よい人材が採用できた」と言っていただけることが大きな喜びであり、顧客とともに会社を大きくしていく手応えを強く感じていたことをよく覚えています。

この経験は、現在のCareermap事業にも生かされています。単に人を紹介するだけでなく、採用後の成長と成功までを視野にいれたサービスの提供が、いかに重要かを日々実感しているところです。

ーー独立後に経験した苦労についてお聞かせください。

杉岡充敏:
26歳で独立し、ホームページ制作の営業代行やまつげエクステンション関連の営業、家庭教師のマッチングサイトの運営など、多岐にわたる事業に挑戦しました。ところが、思うような成果が出ず、貯金が急速に減っていく中で、経営におけるキャッシュフローの重要性を痛感し、請求してもなかなか入金されない資金繰りの苦しさも経験しました。

この経験から、事業を継続させるためには安定した収益基盤が不可欠であると学び、自分の強みである求人広告の分野に立ち返り7〜8年は求人広告制作を中心に事業を展開しました。

専門学生の職業教育・就職活動に特化したデジタルネットワーク

ーーCareermap事業はどのようにして生まれたのですか?

杉岡充敏:
2013年頃、多くの企業から「専門職や技術職の採用が難しい」という声を聞くようになり、専門学校と企業の間に深刻なミスマッチがあることに気づきました。企業側は、専門学校で学んだことが即戦力として社会で活かせていないと感じており、一方で学校側は職場環境が良くないために卒業生が早期離職してしまうと考えていました。

この状況を受けて、専門学校と地元企業が協力し、学生一人ひとりに最適な教育環境を提供できないかと考えたことが、Careermap事業を始めたきっかけです。

ーーCareermapの具体的な仕組みについて教えてください。

杉岡充敏:
Careermapは、企業が求人情報を登録し、それを複数の専門学校に一斉配信できるシステムです。従来、企業は各学校のフォーマットに合わせて求人票を作成し、個別に送付する必要がありましたが、このシステムによりその手間が大幅に削減されました。さらに、学生が授業で作成した作品をポートフォリオとしてアップロードし、企業からの評価やアドバイスを受けられる機能も備えています。

たとえば、調理の専門学校では学生が考案したメニューと料理の写真を、建設の専門学校では学生が作成した模型の写真をアップロードします。企業はそれらを見て評価やアドバイスを行います。

また、企業からのオファー機能も導入していますが、一方的に大量に送られることがないよう「オファーチケット」という仕組みがあり、企業からのオファー件数に制限を設けています。この仕組みにより、学生・学校・企業の三者がそれぞれメリットを得られる関係を構築できました。

ーーCareermapの導入に際し、どのような課題がありましたか?

杉岡充敏:
最大の障壁は、専門学校側の導入に対する抵抗感でした。多くの学校が「就職希望者は100%就職できている」という状況で、新しいシステムの必要性を感じていませんでした。

この壁を越えるため、学校の先生方に直接話を聞き、このネットワークの効果や課題を徹底的に調べたところ、卒業生の活躍が学校、学生に届く仕組みから学生の授業に取り組む姿勢が変わってきたことが明らかになりました。

そこで、学生の学習意欲をさらに向上させるために、企業からのポートフォリオに対するアドバイス機能を新たに追加したのです。企業側も学生の成長過程を見られることで、より積極的に協賛してくれるようになりました。これは当初、全く想定していなかった効果で、結果としてサービスの価値を大幅に向上させることとなりました。

理念の実現に向けた組織づくりと今後の展望

ーー貴社の強みについてお聞かせください。

杉岡充敏:
弊社の最大の強みは、社員全員が「すべての人が、ともにイキイキと働く未来を創る」という理念と「一人ひとりが主人公」という社是に、強い共感と当事者意識を持っていることです。この強みを活かして、まず専門学校へのサービス導入を進め、現在の2割程度のシェアを8割以上に伸ばすことを目指しています。

また、企業側の協賛も増やしていきたいと考えています。現在、登録企業数は10万社を超えていますが、協賛は600社程度です。特に関西の建設業、関東のIT業界、全国の調理業界でのシェア拡大を目指しています。

人材面では来期までに社員数を100名程度まで増やす計画で、特に関東圏での採用を強化します。さらに、新潟県の誘致を受けて開発拠点を設置し、地元の専門学校卒業生の採用も進めています。

ーー最後に、5年後、10年後のビジョンについておうかがいします。

杉岡充敏:
5年後には、全国すべての専門学校にCareermapを導入し、職業教育の価値を広く社会に浸透させたいと考えています。

私自身、大学卒業後に専門学校への入学を考えた経験がありますが、当時は周囲の理解が得られず断念しました。今の若者たちには、自分の将来就きたい職業から逆算して進路を選べる環境をつくりたいと考えています。Careermapを通じて、職業教育の価値を高め、専門学校への進学が誇りに満ちた選択肢の一つとなるよう願っています。

編集後記

杉岡社長の言葉からは、専門学校生のキャリア形成に対する揺るぎない使命感が感じられた。特に印象的だったのは、単なるマッチングサービスに留まらず、学生の学習意欲を高める仕組みを作り上げ、それを企業の体験価値向上に直結させた点である。学生、学校、企業の三者をつなぐCareermapの挑戦は、単なるビジネスの成功を超え、社会システムの変革へとつながるものだと感じられる。教育のデジタル化が進む中、このプラットフォームが日本の人材育成にどのようなインパクトを与えるのか、今後の展開に注目したい。

杉岡充敏/1975年生まれ。近畿大学卒業後、神戸の広告代理店に就職。24歳で営業成績トップを達成。26歳で株式会社グッドニュースを設立、代表取締役社長を務め、現在に至る。専門学生の就職活動・職業教育に特化したデジタルネットワーク「Careermap」を開発・運営。新潟県の誘致を受け、地方での開発拠点も設置。