※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

1942年創業の豊中工業株式会社は、内装部品メーカーとして日本の自動車産業を支える老舗企業だ。同社は2001年2月にISO9001認証を取得し、名古屋市の本社工場、豊田工場、富山工場の3工場を展開。開発から生産までワンストップで行う生産体制により顧客の幅広いニーズに対応している。主要製品は自動車やバスの内装部品、鉄道車両用シート、インテリア椅子など。長い年月をかけて培われた生産ノウハウと、日々その技に磨きをかける職人たちの技術力で布・革など多種多様な素材の加工を行う同社の製品は、国内有名メーカーはもちろん、海外向け製品にも採用されている。

近年のビジネス環境の大きな変化の中、ものづくりの原点に立ち返り、より高品質で付加価値の高い製品づくりに努める同社。専務取締役の前川敦氏に、今後の組織改革や求める人材についてうかがった。

海外留学や異業界への就職を経て、広い視野の経営者として学び続ける

――貴社に就職するまでの経歴を教えてください。

前川敦:
私は日本で理系の大学に通っていたのですが、大学卒業後の自分の進路について悩んでいました。父に相談すると、「海外の視点から日本経済を見ることで視野を広げてみてはどうか」とアドバイスされ、それならば経済や会計についてゼロから学ぼうと、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校に進学しました。

帰国後、自動車業界とは異なる業界で会社の考え方も学びたいと思い、大手化学メーカーに入社しました。数年間、会計やお金の流れといった経営管理を学んだのち、弊社の取締役に就任しました。当初は、間接部門に携わっていましたが、自動車業界の立場にとらわれない客観的な目線から業務内容を精査することができたので、これまでの経験が役に立っていると実感しましたね。

縦のつながりに横のバランスを考えた組織で従業員が働きやすい環境を目指す

――社長就任を目前にして、組織編成や組織改革で構想していることはありますか。

前川敦:
組織図の改革を行っていきたいです。中小企業にありがちなことですが、弊社も組織図は存在するものの、一人の部長が他部門の部長をいくつも兼任しているような状況なので、あまり機能していないように感じています。

そこで、大企業のような縦割りの組織に、横のつながりをバランス良くいれた独自の組織図がつくれないかと模索中です。ただ、優秀な人材に仕事が集中することは、ある程度避けられないかもしれません。そのため、人事考課の評価基準を明確にし、給与に反映させるなどの対策も講じていきたいと考えています。

――福利厚生の見直しや充実にも取り組んでいるようですが、実際にどのような取り組みをしていますか?

前川敦:
社員の要望を反映したユニフォームをつくるプロジェクトを立ち上げました。また、社員が好きな食事を選べる置き型食堂の導入を検討しています。弊社ができる範囲で福利厚生を充実させることで、社員の実質的な手取りが増えました。これからも働きやすい職場を目指して取り組んでいきます。

ーー福利厚生以外でユニークな活動があれば、お聞かせください。

前川敦:
弊社では、自己啓発と相互啓発を社内テーマとして掲げており、年に2回、会社全体で1グループ8名ほどの小規模なチームを編成し、改善テーマを決めて取り組むQCサークル活動(※)を行っています。社員が学んだことや感じたことを共有することで「そういう考えもあるんだね」と周囲の気づきにつながり、自分たちの業務に活かすことができるでしょう。

(※)QCサークル活動:「QC」とはQuality Control(品質管理)の略称であり、職場の小グループが品質改善や業務効率向上を自主的に取り組む活動

理念に共感し、変化を柔軟に受け入れられる人と共に歩みたい

ーー自動車業界における貴社の強みは何ですか?

前川敦:
弊社の強みは、中小企業ならではの手加工に近い加工技術です。たとえば、高級車のアームレストの縫製やインパネ周辺の加工には、細やかなつくり込みと精度の高さが求められます。弊社は職人技と呼ばれる高品質の加工技術を得意としており、「職人技の加工を委託されるメーカー」というのが弊社のイメージですね。

ーー貴社ではどのような人材が求められているのでしょうか?

前川敦:
近年、社会は急速に変化しており、今まで当たり前だったことが当たり前でなくなることが多々あります。そうした変化を柔軟に受け入れる人材が弊社では活躍しているので、今後もさらに活躍してほしいですね。

弊社は「モノづくりは価値づくり」を理念とし、社員一人ひとりの人生を価値あるものにすることを目指しています。この考えに共感し、ともに成長できるような人たちと一緒に働きたいですね。

編集後記

今後は自社ブランドの立ち上げや、建材、アパレルメーカーなど、新規取引先の開拓も行いたいと語る前川次期社長。近年、車のシートに用いられるエシカルレザーを使ったトートバッグやドリンクホルダーなどの商品が機能性の高いSDGs関連グッズとして注目を集めており、同社の新規開拓の幅も広がりそうだ。「従業員を大切にしたい」とも語り、社員が働きやすい職場を目指して社内改革も進めている。同社のさらなる飛躍に注目したい。

前川敦/1985年、愛知県生まれ。カリフォルニア大学サンディエゴ校を卒業後、4年の修業期間を経て2015年に豊中工業株式会社に入社。2023年に同社専務取締役に就任。