※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

2016年に設立されたストックマーク株式会社。最新のAI開発技術を駆使し、ビジネスユースに特化した情報収集サービスなどをリリースしてきた。代表取締役CEOの林達氏に、創業までの流れやサービスの強み、今後の展望についてうかがった。

学生時代の起業を経て、商社で事業投資を研究――AI開発の道へ

――社長の起業までの経歴をお話しいただけますか。

林達:
私は、台湾出身で経営者だった両親の影響で、起業への意欲を常に抱いていました。大学時代は、東アジアのエリート学生が集うサークルで「東アジア経済圏をつくる」という夢を描き、インバウンド向けの旅行会社を設立しました。学生起業の学びとして「一兆円規模の企業を築くには経験が必要だ」と感じ、就職活動を始めました。

多額の事業投資をした上でバリューアップと地道なビジネスづくりを並行していくという意味で、バランスの良い商社である伊藤忠商事に入社したのです。4年ほど事業投資に携わる中で身につけた知識は、起業時にとても役立ちました。

――どのようにして現在の事業に辿り着いたのでしょうか?

林達:
財務分析や企業投資の審査など、分析した情報を価値に変える仕事を始めたところ、とにかく資料づくりに時間がかかりました。どんどん増えていく情報を処理しきれない時代に突入していたのです。そこでAIを活用すれば、より高品質な情報を抽出できると考えました。

攻めの部分では企業の正しい意思決定を支援していき、守りとしては業務をさらに効率化したかったのです。共同創業者の有馬と「人間のパートナーとなるようなAIがつくれたら世の中が変わる。仕事がもっと楽しくなる」と話し合い、ストックマークが始動しました。

ビジネスパーソンの情報収集を支えるAIサービス「Anews」を開発

――「Anews」を開発した背景もうかがえますか?

林達:
弊社が「ビジネス版Google」と称する「Anews」は、使用者の興味に応じて情報がキュレーションされていくサービスです。開発のきっかけとなったのは、個人向けアプリの製作を始めて3年が経ち、BtoBのサービスもやりたいと感じていた2019年頃の出会いでした。

弊社の取り組みを見たコンチネンタル・ジャパンの広報部長から、「一緒に面白いことをしよう」とお誘いのメールが届いたのです。彼の提案は「情報で日本の会社を変えたい」というものでした。海外ではスマートシティや自動運転といった面白いテクノロジーの進化が起きているのに、日本企業には現状維持を良しとする人たちが多すぎる、という考えです。

「情報を価値に変える」という発想に共感した結果、彼の思いと弊社のテクノロジーを掛け合わせた「Anews」が誕生しました。「顧客価値」を大事にするカルチャーは会社の根幹となり、お客様のご要望に応える形で新たな活用事例やプロダクトを生み出しています。

――会社やサービスの強みをお聞かせください。

林達:
弊社は、日本屈指の生成AIリーディングカンパニーとして有望なスタートアップ7社を対象とした経済産業省の政策に採用され、国内で初めて1000億パラメーター規模のモデルを開発しました。

サービスの大きな特徴は、データの収集力と信頼性の高さです。ビジネスパーソン向けの情報を再整理する「Anews」では、情報の正確性を重視しています。信頼できる情報を提供してきた結果、約300社に支持されるプロダクトとなりました。

生成AIのエンジンを自社開発していることも強みです。弊社の生成AIは収集した膨大なデータを精査して絞り込むだけでなく、人間が理解しやすい形でまとめてくれます。

「AIにできない仕事」をする未来に備えて――人間が成長する企業づくり

――今後の展望をうかがえればと思います。

林達:
短期的な目標としては、社内外から得られるビジネス情報を集約して、ワンストップで検索できるプラットフォームの精緻化を図りたいと思います。

生成AIの進化によって、仕事の在り方は一変することでしょう。人間は半年後の売上ではなく、「数十年後の未来」を考えていくことになります。弊社としては、プロダクト開発を通して「新しい事業を考える人をサポートする」というのが長期的な目標です。

AIが活躍する未来は、人間にとって挑戦的な時代になるかもしれません。ロジカルな思考や情報収集は「答え」があるからこそ、人間がやらなくてもいい仕事です。答えがないものに取り組むためにも、人間は感性を磨いていく必要があるでしょう。

日本を牽引するAI活用企業として「AIの強化」も欠かせません。営業の生産性を上げるシナリオをつくるなど、AIの力をプロダクト内で進化させていき、お客様も増えるという好循環をつくっていきます。現在のお客様は300社のうち7割が製造業なので、金融系・商社・コンサル会社といった非製造業にターゲットを広げていく予定です。

――求める人材像に向けた企業PRもお願いします。

林達:
一つの部門を強化する会社が多いところ、弊社は各部門をバランスよく融和させてきました。ビジネスの特性から、必要なのはハイレベルな即戦力であり、組織をさらに一歩上の段階に引き上げられるポテンシャルを秘めた人材です。

法人営業をやりたい人にとっても非常に面白い環境です。大企業に最先端テクノロジーを提案し、さらなる伸びしろまで一緒に考えられる最もクールな仕事だと思っています。たとえ失敗しても迅速に軌道修正できる人材が集まり、チャレンジ精神が旺盛です。

熟練の経験者だからといって、自分のプライドにとらわれてはいけないと考え、フィードバックを柔軟に受けられる社風も意識しています。自身も勉強するべきことがまだまだ多く、まさに「自分を成長させられる会社」です。

編集後記

社内のノウハウを資料化しても、数が増えるばかりで管理しきれず、必要なタイミングで活かせないケースはめずらしくない。インタビュー中に「あの時にAnewsがあったら助かっただろう」と回想。今後AIに支えられながら仕事をすることが当たり前になって行くのだろう。そして、「感性を磨こう」という林社長の言葉は、人を前向きにさせるエールだと言える。

林達/2011年、東京大学文学部宗教学科を卒業。学生起業を経て伊藤忠商事に入社し、事業投資や経営管理業務に従事。2016年にストックマーク株式会社を創業。経産省の国産生成AI開発支援に採択され、国内最大の1000億LLMをリリース。ビジネス版Google「Anews」は、大手製造業を中心に300社以上が導入している。