※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

IT技術の進化とともに、加速する企業のDX。膨大な情報を瞬時に管理し最適化するクラウドサービスは、現代において不可欠な存在だ。

そんな中、2024年8月、帳票の電子化や電子申請サービスを展開する株式会社オプロが、東京証券取引所グロース市場への新規上場を果たした。今回は、同社の創業者である代表取締役社長の里見一典氏に、急成長の背景にある成功の軌跡、卓越した技術の源泉、そして未来へのビジョンについてお話をうかがった。

大手IT企業で培ったスキルを武器に、ベンチャービジネスへ参入

ーー起業以前の経歴について教えてください。

里見一典:
大学卒業後、外資系企業のDEC(現:日本ヒューレット・パッカード合同会社)へ入社し、セールスエンジニアとしてキャリアをスタートしました。
DECは主に技術系コンピューターを扱う会社で、私も営業職ながらコンピューター言語やハードについての研修を受けました。研修後、国内有数の大企業を担当し、多くのことを学んだ経験は、今でも私の貴重な財産です。

DECは外資系企業特有の自由な社風のもと、社員には経営者に匹敵するスキルが求められます。私も、26歳頃には仕入れ、法務の他、キャッシュフローで重要な支払い条件など、多くの業務を任せてもらいました。その経験が独立するために必要な知識と作法の基礎を築いたと思います。

ーー起業当時のエピソードをお聞かせください。

里見一典:
DECを退職して独立したのは、30歳のときです。起業当初はIT業界にこだわらず、コンサルティングや派遣業など、さまざまな分野にチャレンジしました。

転機を迎えたのは、かつて担当していた大手電機メーカーの技術者から、子会社の人材教育部門で「研修のインストラクターをやってみないか」とお声がけいただいたときです。
この仕事を通じて、損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)の分析を学び、経営の基礎を理解することができたのは、大きな収穫でした。

その研修のインストラクターの方からの紹介で自宅でも見積書、請求書を出力し、在宅勤務が可能なシステムの要望を頂きました。当時はまだPDFが普及していなかったため、ウェブで作成した見積書を印刷する際に、パソコンの機種によって出力が異なるという問題に直面していました。

そんな中、ある社員が「僕がつくります」と声を上げ、インターネットで帳票を作成するシステムの開発が始まったのです。それが弊社独自のノウハウを集積したクラウド帳票サービスである「帳票DX」のはじまりです。

顧客ニーズに応える革新的クラウドサービス

ーー新事業を軌道に乗せるために、どのような戦略を立てましたか。

里見一典:
弊社ではシステム開発を手掛ける一方で、技術者の派遣も行っていましたが、現場で高く評価された帳票システムの製品化にリソースを集中させるため、派遣していた社員を呼び戻しました。しかし、製品の売上は予想を下回り、一気に業績が悪化してしまったのです。そこで、ベンチャーキャピタルに出資を仰ぎ、増資を繰り返しながら製品開発に集中する戦略をとりました。

転機となったのは2007年、顧客管理ソフトSalesforceを手掛けるセールスフォース・ジャパン社との連携によるクラウド型の電子帳票システム「oproarts」の成功です。請求書や契約書など紙業務のデジタル化を可能にしたこのサービスにより赤字から脱却し、ユーザーの信頼を得ることができました。

クラウド化により、ユーザー様の声をより多く聞けるようになり、ニーズに応える形で機能を追加していった結果、商品ラインナップの増加とサービスの充実につながったと思います。

ーー貴社の商品やサービスの強みを教えてください。

里見一典:
弊社の強みは、お客様のニーズに合わせたクラウドサービスを提供できることです。「oproarts」をさらに進化させた「帳票DX」をはじめ、サブスクリプションビジネスに特化した販売管理サービス「ソアスク」や、有形商材をサブスクで提供する事業者向けの管理サービス「モノスク」など、お客様の要望に合わせて商品を開発してきたことが、支持された理由の一つだと思います。

また、私たちが重視しているのは、帳票データの正確なインプットと、美しいアウトプットの実現です。
その代表的な製品が、金融機関や行政機関向けの電子申請サービス「カミレス」です。これは、お客様が使い慣れた申請書などをAIで自動的に電子化するシステムで、最近では埼玉県に導入され、県民や地域の企業の利便性向上に貢献しています。ウェブ化できる書類のニーズは多数ありますので、これからもペーパーレス化の発展に、尽力していきたいと考えています。

新卒定着率83.9%! 成長を支える風通しの良い社風

ーー5年後、10年後の展望をどのように描いていますか。

里見一典:
まずは、高い成長率を維持し、売上高100億円を達成するのが目標です。その実現には、人材育成が不可欠と考えています。弊社には現在102名の社員が在籍しており、そのうち51名が新卒採用者です。2013年から新卒採用を始め、ありがたいことに定着率は83.9%を誇っています。
この結果は、20代社員が積極的に意見を交わし、文化を築いていける風通しの良い社風のおかげだと思います。もちろん、社員教育にも力を入れていますので、新たな人材がしっかり育っていることを、頼もしく感じています。

IT業界は進化が激しいため、新しいアイデアを取り入れていかないと、時代の波に乗り遅れてしまいます。これからも変化を恐れず、社員とともに、成長し続ける会社にしていきたいと考えています。

編集後記

顧客の視点に合わせたさまざまなクラウドサービスを提供する株式会社オプロ。東証グロース市場への新規上場を果たした背景には、社長の里見一典氏が掲げる「顧客第一主義」と、クラウドサービスへの徹底したこだわりがある。帳票DXや電子申請サービスなど、同社の革新的なプロダクトは多くの企業に支持され、さらなる成長を続けている。今後も、オプロの開発への飽くなき挑戦が、市場に新たな価値を生み出し続けるだろう。

里見一典/株式会社オプロ創業者。近畿大学を卒業後、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現:日本ヒューレット・パッカード合同会社)へ入社。その後、1997年に株式会社エスピーオー(現:株式会社オプロ)を設立し現在に至る。