※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

国内18店舗の直営ダーツバーを運営し、ダーツに関するコンサルティングも手掛ける株式会社コンサルティング・オブ・デルタ。一見シンプルな娯楽であるダーツをなぜ事業に選んだのか。また、急成長を遂げる同社は今後どのような展開を描いているのか。創業者であり代表取締役社長の高橋良司氏に、起業の経緯、運営理念や未来像についてうかがった。

8回の転職を経てダーツ業界で年商20億円を果たす

ーーなぜダーツ業界に参入したのですか?

高橋良司:
2000年に大学を卒業後、最初の就職先から長続きせず、29歳までに9社で正社員を経験しました。異業種間でのスカウト転職を繰り返すたびに、社会的地位が下がるのを感じましたね。そのようなときにダーツに出会い、利益率の良さに惹かれて、池袋にダーツショップを開店したのです。両親が自営業だったこともあり、店舗を持つことに抵抗はありませんでした。

その店舗は初月から利益が出たものの、成功ゆえに目をつけられて、乗っ取られてしまいました。その後、地元の千葉に戻り学習塾で英語を教えていましたが、ダーツショップ時代の知人からの個人的な依頼が増えてきたことで、好きなことを続けたい気持ちが再燃し、ダーツ業界に戻る決意をしました。2013年に弊社を設立し、現在は年商10億円を超えています。こうして長く続けることができ、良い仕事に出会えたと思っています。

ーー年商20億円超にまで成長できた理由は何だと思いますか?

高橋良司:
仲間に恵まれたことが大きいと思います。仲間を集める上で、社長の役割のうち1つは、夢を語ることです。未来や運命を感じさせることができれば、共感する仲間が集まります。ダーツの会社を立ち上げる際に、将来像が明確で、説得力のある話ができたことが大きかったかもしれません。

また、業界への参入者が少ない時期に始められたことや、誘惑が多いナイトマーケットで、まじめに取り組んできたことも成功の要因だと思います。夜営業の店舗には大手企業の社長も訪れるので、お酒の席で対等に話すことができます。誠実に取り組んでいればビジネスチャンスが開ける世界なのです。

幸せになる趣味づくりのお手伝い

ーー事業内容とミッションを教えてください。

高橋良司:
ダーツバーの運営と、ダーツ関連のコンサルティングを行っています。以前はラーメン店や不動産業などにも挑戦しましたが、プロには敵わないと痛感し、現在は積み上げたノウハウが活かせるダーツに専念しています。

私たちの本質的な使命は、従業員やお客様の幸せのお手伝いです。幸せな人とは趣味がある人だとも思います。大人になってから始められる趣味はあまり多くありませんが、弊社はダーツというツールを使って趣味づくりを手伝いつつ、人との出会いをプロデュースしているのです。

ーー経営戦略として取り組んでいることは何ですか?

高橋良司:
集客力を強化しています。競合店も多いため、インターネットのリスティング広告などで顧客の目に留まるようにするのが効果的ですね。また、店舗の個性に合わせて店長がSNSを使い分け、アクセスの入り口を広げています。

新規出店の際には、1店舗に約5000万円の初期投資が必要ですが、最初の2か月は売上が100万円から200万円にとどまることも珍しくありません。属人的でない店舗運営と広告で効率化を図っていますが、経営基盤が安定していないと難しい方法です。

日本品質で世界へ 5年計画で挑む海外戦略

ーー今後、どのような事業展開を考えていますか?

高橋良司:
近年ダーツの人気が高まり、5年以内には市場の飽和が見込まれます。そのため弊社は今後の生き残り策として、海外展開を目指すことにしました。日本の製品は品質が高いため輸出しやすく、特に人口増加が進む地域での市場開拓が期待できます。

将来に向け、事業をさらに拡大しておかないと、次世代への負担も大きくなります。社長としてのゴールは、次の世代に事業を引き継ぐことです。現在47歳ですが、最近では90歳まで生きることも珍しくないため、私もまだ人生の折り返し地点だと思っています。人生の後半に貴重なリソースを割く以上、海外展開は、絶対に成功させるつもりです。

ーー海外展開の計画について、詳しくお聞かせください。

高橋良司:
まずはマレーシアを皮切りに、アジア市場に展開します。マレーシアは、弊社と関わりの深い国で、ダーツの名手も多く、ダーツ機器のメーカーも存在します。ただし、お酒を飲まない人が多いため、ダーツバーの運営は難しいかもしれません。そこで、バーの形ではなく、商品を遊戯の現場で使用してもらいながらプロモーションを行い、現地の販売者と購入者をつなぐ形で進める予定です。

日本ではダーツの先端部分がプラスチック製で、センサーでスコアをカウントするソフトダーツが主流であり、この強みを活かせると思います。ただ、海外展開には、マレーシア語、広東語が話せる現地従業員の採用が必要で、英語が堪能な従業員も増やさなければなりません。最低5年の準備機関が必要と見込まれるため、展開はもう少し先の話になります。

「感謝の気持ち」から築き上げた独自の採用哲学

ーー採用についてのお考えをお聞かせください。

高橋良司:
私自身あまり物欲がなく、「ありがとう」と言われたい思いを追求してきた結果、ここにたどり着きました。しかし、それだけでは会社として成り立たないため、経営に明るい人を積極的に採用しています。特に重視しているのは、お客様を主役にして自分は脇役となり、後輩に惜しみなくノウハウを教えられる人材です。そして、店舗に愛着を持てる店長を求めています。国内店舗の採用は、現場スタッフからのリファラル採用が中心です。

また、夜営業という特性上、45歳を超えると体力的に厳しく、管理職のスキルがなければキャリアの継続が難しくなることがあります。そのため、ダーツバーとしてだけでなく、海外での仲介事業の立ち上げを検討するのは、従業員のセカンドキャリアとして昼間の輸出関連業務を確保する意味もあるのです。

ーー従業員によく伝えているのはどのようなことですか?

高橋良司:
弊社で働く上で大切なことは、お客様が何を求めているかを敏感に感じとる力です。これはアルバイトには難しいため、「だまされたと思ってやってみて」と具体的な指示を重ねています。そうすることで、直感的に行動できるようになっていくのです。

また、悩んでいる従業員には「考えても仕方ないことは考えない方がよい」と伝えています。私は皆が幸せであるべきだと思いますが、そのためには考えない方がよいこともあると考えています。

編集後記

夜営業ならではの課題と向き合う中で、今後の生き残り戦略が求められる現実が浮き彫りとなったインタビューだった。業界の動向を踏まえた上で、現段階から海外進出も視野に入れた具体的な計画を描いているのは、長年培った経験があるからこそに違いない。

「次世代に引き継ぐ」という目標に向け、高橋社長はさらなる成長路線を走り続けるだろう。次世代にバトンがわたるその日、株式会社コンサルティング・オブ・デルタがどのようなグローバル企業へと発展を遂げているのか、想像するだけで胸が躍る。

高橋良司/1977年、千葉県生まれ。中央大学卒業。2000年から2006年までの間に転職を8回繰り返し、ダーツの仕事を始める。趣味を仕事にしようと、2013年、株式会社コンサルティング・オブ・デルタを設立。代表取締役社長に就任。