
株式会社イビソクは、ジオサーベイ(次世代測量技術)を活用した国土の保全や、価値ある文化財の保護・伝承などを手がけるコンサルタント会社だ。
航空測量や大型ドローンの「UAV」レーザーをいち早く導入し、3次元の高精度なデジタルデータを活用した「3次元設計」に取り組んでいることでも知られている。
「文化財と観光で地域活性化を実現したい」と語る同社の2代目代表取締役社長、森允氏を取材し、業界のトップランナーとして走る、同社の強さに迫った。
文化財の保護・伝承の分野において、国内で三本の指に入る実績と規模
ーー貴社の特徴について聞かせてください。
森允:
弊社は文化財の調査などの歴史に関する事業や、まちづくりなどの未来に向けた事業を手がけており、過去と未来の両方に貢献していることが特徴です。事業の一つとして、測量のノウハウを活かして文化財を記録に残し、レプリカやCG、映像制作といった形で後世に伝える「文化財コンサルタント」が挙げられます。
測量の技術に関しては、レーザスキャナを搭載したUAV・実機のほか、ラジコンヘリやクレーンなどを活用し、条件や用途に合わせた撮影を実現。公共測量図の編集や製図、印刷などに加えて、デジタル化されたデータ地図の各種補正なども手がけています。
社長就任前に営業職に就いていたときに、この文化財の事業を、九州をはじめ四国や沖縄などへと全国各地へ拡大させました。この分野で事業を全国展開し、ここまで大きな規模で拡大している会社は、国内にはほかにないでしょう。
ーー営業マン時代の苦労したエピソードを教えてください。
森允:
民主党に政権交代した2009年当時、公共事業費が大きく削減されたことが、会社にとって特に大きな痛手でした。
僕たちの仕事は公共事業に左右されるので、予算が減ったことで仕事も一気に減ってしまったのです。同じ地域にいた同業他社の数も、いつの間にか半分ほどに減っていました。
弊社は公共事業だけでなく文化財の事業も手がけているため、持ちこたえることができましたが、非常に大変な時期でしたね。結果的には社員みんなの力で、何とか乗り越えることができました。
歴史に深く関わることができ、女性も活躍しやすい環境が特徴

ーー社長に就任してから、どのような取り組みを行ってきましたか。
森允:
周りの人たちの同意を得られるよう、ボトムアップ経営を意識してきました。私が創業した会社ではないですし、周囲の意見を無視したトップダウン経営を行っても、社員たちがついてきてくれませんから。
また、社員たちに長く勤めてもらいたいという思いから、今までできなかった会社内部の仕組みを整備しました。具体的には、給与待遇の改善や福利厚生の拡充、社内教育の実施、DXの促進などです。
社内教育でいうと、社外から講師を呼んで、技術セミナーやマネジメントセミナーを年2回ほど実施するようにしました。セミナーのほかには、年1回社員たち全員を会場に集めて、それぞれのチャレンジを共有する技術発表会を開催しています。
社員の能力ややる気を1%でも向上させ、彼らの挑戦を後押しすることが、社長の果たすべき役目といえるでしょう。
ーー貴社ではどのような人材が活躍していますか。
森允:
「建設コンサルタント」や「文化財コンサルタント」と聞くと男性が多いイメージがあるかもしれませんが、実際は女性も多く活躍しています。新卒の女性たちもヘルメットを被って現場へ行き、ベテラン調査員と一緒に発掘調査をしていますよ。
図書館や美術館、博物館などの文化財が好きな女性は多いのかもしれませんね。歴史に深く関われる数少ない会社であることと、男性はもちろん女性も活躍しやすい環境が整っていることが弊社の特徴です。
今後は「観光×文化財」で日本の地域を盛り上げていきたい
ーー今後の展望についてお聞かせください。
森允:
2023年に50周年を迎え、今後は100年企業に向けて年商50億円、社員数300人を達成することが一つの目標です。また、昨今は日本でもインバウンドが盛り上がっていますが、弊社でも文化財を活用したインバウンド観光事業を手がけたいと考えています。
文化財の専門的な知見を活かしてお客様により詳細な文化財の説明をしながら、それぞれのスポットを体験してもらうのも面白いのではないかなと思います。
インバウンドだけでなく、日本人の方が楽しめる体験ツアーももちろん組んでいきたいと思います。今後はこのような観光と文化財を結び付けた取り組みを通して、地域活性化にも貢献していきたいと考えています。
編集後記
働きやすく魅力ある職場づくりに取り組む企業を選出する「ぎふ建設人材育成リーディング企業」のゴールドランクに認定されるなど、職場環境の改善にも力を入れている株式会社イビソク。
地方の人口減少が問題となっている今、地域活性化につながるイビソクの事業は日本の成長を後押しする可能性を大いに秘めている。未来に向けて「文化財と観光が融合したビジネスを始めたい」と語る森社長からは、自分たちが業界を盛り上げるのだという力強さが感じられた。

森允/1978年、岐阜県生まれ。愛知工業専門学校を卒業し、清水建設株式会社に入社。4年間土木工事の現場監督者として従事。2002年、株式会社イビソク入社。取締役企画室長、専務取締役を経て、2019年、代表取締役社長に就任。現在に至る。