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株式会社全観トラベルネットワークは、旅行好きな人材を集めることで成長してきた旅行会社だ。国内外の個人旅行はもちろん、法人の団体旅行、各種全国大会まで幅広く対応。近年ではIT技術を駆使した情報提供と、旅行のプロフェッショナルによる専門的アドバイスの両立に向けて力を注いでいる。
教育委員長やさまざまな協会の役員を務め、2023年には観光事業振興功労により旭日双光章を受章した同社代表取締役社長の近藤幸二氏に、これまでの歩みと今後の展望についてうかがった。
JTBとの提携が開いた新たな可能性
ーー旅行業に携わるようになった経緯を教えてください。
近藤幸二:
私が旅行業に携わるようになったのは、偶然が重なった結果です。大学在学時に商社への就職が決まっていたのですが、オイルショックの影響で内定が取り消されてしまいました。その後、地元に戻って鉄道会社に就職し3年ほど勤めましたが、父が旅行業を始めることになり、私も手伝うことになったのです。
当時は全国観光公社という会社のフランチャイズとして、倉敷支社を立ち上げ、父と私、そして弟と母も手伝って、家族総出でスタートしました。その後、1991年に現在の全観トラベルネットワークへと改組。2002年にはJTB総合提携店となり、事業を拡大してきました。
JTBとの提携は、私たちにとって大きな転機となりました。JTBは、当時から日本の旅行業界のトップブランドであり、世界中の情報が集まる場所でした。そのグローバルな視点と最先端のシステムを使い、「JTBと同じ力をもった会社を個人経営してみたい」というのが夢でした。
ーー貴社の主な事業内容について教えてください。
近藤幸二:
弊社は、主に一般のお客さまや法人・事業所向けに旅行サービスを提供しています。JTB総合提携店として、JTBのブランド力とネットワーク、同一システムを活用できることが大きな強みとなっています。
特に力を入れているのが、お客さま一人ひとりのニーズに合わせたオーダーメイドの旅行プランの提案です。高齢者向けの専用ガイド付きツアーや、富裕層向けの特別な体験を提供するプレミアムツアーなど、付加価値の高いサービスの開発に注力しています(店舗NPS/顧客満足度優秀賞全国第1位2年連続受賞)。
また、団体旅行の企画・実施や全国大会のトータル・プロデュースも重要な事業の一つです。さらに、クルーズ・ブームの火付け役となった「飛鳥Ⅱ」の単独チャーターも行い、ご好評を頂きました。こうした地元のニーズ、時代のニーズに即した事業展開でリピーターのお客さまも多く、今では安定した顧客基盤となっています。
JTBのブランド力と弊社のきめ細かなサービスを組み合わせることで、お客さまに安心・安全で満足度の高い旅を提供できているのです。今後も、旅行のスペシャリストとして、お客さまのニーズに応える高品質なサービスを提供し続けていきたいと考えています。
人との出会いが広げてくれた視野
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ーー多くの役職を務められていますが、そのきっかけと影響を教えてください。
近藤幸二:
私は教育委員会の委員長や全国旅行業協会の筆頭副会長など、さまざまな役職を務めてきました。旅行業とは直接関係のない役職もありますが、結果的に私や会社の成長への大きな影響がありました。教育委員長を務めたことで、親御さんからの信頼が高まりました。就職活動中の学生の親御さんが「あの会社なら安心して子どもを預けられる」と思ってくださるようになったのです。これは、人材採用にとても良い影響を与えました。
また、業界団体での活動を評価していただき、コロナ禍では、観光業を代表して政府との会議に参加し、GoToトラベルキャンペーンの予算組みにも関わりました。この経験を通じて、私は旅行業界の将来像をより明確に描けるようになったと感じています。
コロナ禍を経て、観光業の形は大きく変わりました。インバウンド需要の増加や、高付加価値化の必要性など、業界が直面する課題と機会を的確に捉えられるようになったのです。実際のサービス開発にも活きており、とても貴重な経験だったと感じています。
旅行のスペシャリスト集団を目指して
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ーー人材採用や育成について、どのような方針をお持ちですか?
近藤幸二:
弊社では、「旅行が好きな人の集合体」というコンセプトで採用を行っているので、旅行が好きで、その魅力を伝えたいという思いを持った人材を広く求めています。学歴や経歴よりも、どれだけ旅行に対する情熱があるかが重要ですね。
ーー今後の課題や展望についてお聞かせください。
近藤幸二:
今後の課題は、変化する旅行業界に対応できるスペシャリストの育成です。以前は、現地の情報を持っているだけで評価されましたが、今はインターネットで誰でも簡単に情報を入手できる時代です。そのため、私たちは情報をいかに早く、正確に、かつ分かりやすくお客さまに伝えられるかが重要になってきています。
また、近年のオンライン予約の普及により、店舗の在り方にも変化が求められています。しかし、複雑な旅程の相談や、高齢者向けの特別なプランなど、専門的なアドバイスが必要な分野では、依然として旅行のプロフェッショナルとしての存在価値があると考えています。
そのためには、スタッフ一人ひとりがより高度な知識とスキルを身につけていく必要があるでしょう。加えて、IT技術を活用した情報提供の迅速化も進め、お客さまが持っている以上の情報をより早く、より分かりやすい形で提供できる体制を整えていきます。変化の激しい時代ですが、「旅行が好き」という私たちの原点は変わりません。この思いを軸に、時代のニーズに合わせて進化し続ける会社でありたいと思います。
編集後記
近藤社長の語る言葉には、「旅行」に対する深い愛情と誇りが溢れていた。家族経営からスタートし、JTB総合提携店として成長を遂げた歴史には、多くの苦労と喜びがあったことだろう。特に印象的だったのは、時代の変化に柔軟に対応しながらも、「人」を大切にする経営姿勢。旅行好きが集まる会社だからこそ生まれる温かみのあるサービスで、改めて旅行の持つ力を実感できた取材となった。
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近藤幸二/1952年岡山県生まれ、1975年東海大学卒。1979年全国観光公社(旧社名)入社、1991年に株式会社全観トラベルネットワークへと改組し、現在に至る。2023年観光事業振興功労により「旭日双光章」叙勲。業界・地域の発展に注力。