※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

エル・ダブル株式会社は、アジア市場を舞台に躍進する貿易企業だ。中国語と日本語に精通した代表取締役の上杉李氏のリーダーシップのもと、言語の壁を越え、海外ネットワークを駆使したビジネスを展開している。

輸出入を主軸としながらも、コロナ禍では新たにスクラップ事業を立ち上げるなど、機動的な経営判断も同社の特徴だ。多角的なアプローチで着実に業績を伸ばしている上杉氏に、その戦略と今後の展望についてお話をうかがった。

日中の架け橋となる、バイリンガル経営の強み

ーー貴社の事業内容や強みについて教えてください。

上杉李:
弊社の主軸となる事業は貿易です。具体的には、海外で製造された商品を日本に輸入し、国内で販売する事業と、日本の商品を海外に輸出する事業の両方を行っています。他には、OEM事業や新規事業としてスクラップ事業を展開しています。

さらに、これらの事業を支えるために、ECサイトの運営にも注力しており、Amazonや楽天などの大手プラットフォームで、日用品やベビー用品の販売に加え、自社のECサイトも強化しているところです。

弊社の最大の強みは、中国語の対応ができることだと考えています。私自身が中国語を話せるので、他の日本企業と比べると、中国やアジアの企業とのコミュニケーションがスムーズです。たとえば、在庫の確認や発注、問題が発生した際の対応など、細かなやり取りを直接行うことができます。

また、社員の半数近くが中国人留学生出身のため、彼らの言語スキルを活かしながら、日本人スタッフと中国人スタッフで役割分担をしています。これにより、日本と中国の両方の文化や商習慣を理解した上でのビジネス展開が可能になっているのです。

ーー海外とのネットワーク構築について、どのような活動をしていますか?

上杉李:
私はアジア各国を頻繁に訪問しており、ベトナム、マレーシア、シンガポール、タイ、香港など、東南アジアを中心に飛び回っています。これらの国々で商品を探したり、取引先との打ち合わせを行ったりします。こうした活動を通じて、各国の最新の市場動向や商品情報を直接入手できるのが大きな強みになっています。

また、長年の活動で培ってきた人脈も非常に重要ですね。何か新しいことをやりたいときや困ったことがあったときには、相談できる人や手助けしてくれる人がたくさんいるので、経営者として非常に心強いです。

ピンチをチャンスに、新規事業で活路を見出す

ーー新規事業としてスクラップ事業を始めた経緯を教えてください。

上杉李:
2023年の7月から新たにスクラップ事業を始めました。主に銅や鉄などのスクラップを回収し、再生可能資源として精製加工しています。この事業を始めたのは、コロナ禍で貿易が停滞する中、新たな収益源を確保する必要があったからです。貿易が完全に止まってしまうと会社の収入がなくなってしまいます。そこで、貿易以外の事業を始めることで、リスクの分散を図ろうと考えました。

スクラップ事業は、国内で完結できる事業なので、海外への移動が制限される中でも展開できると考えたのです。主に中部にある企業と取引を行っていますが、今後は取引先を増やしていきたいと考えています。

ーーコロナ禍での事業運営について、どのような影響がありましたか?

上杉李:
コロナの時代は本当に大変でした。弊社は輸入と輸出の両方を行っているので、人の移動ができなくなったことが一番の問題でしたね。日本が入国制限を行うと、アジアの国々も同様の措置をとるので、貿易がストップしてしまう。これが一番苦しかったです。

しかし、この状況を何とか乗り越えようと、さまざまな対策を講じました。たとえば、従業員の給与の一部を国の支援制度を利用して負担してもらったり、オンラインでのコミュニケーションを積極的に活用し、海外のパートナーとの関係維持に努めたりしました。会社の存続に向けて、とにかくできることをやっていましたね。

ECサイト強化とSNS活用で新規層の獲得を目指す

ーー今後の事業の拡大に向けて、注力していることは何ですか?

上杉李:
特に力を入れているのは、SNSを活用したマーケティングですね。10〜20代をメインターゲットとして、スーツケースや旅行関連グッズなどを中心に展開しているので、しっかりとターゲットにアプローチしていきたいと思っています。具体的には、InstagramやYouTubeなどのプラットフォームで、インフルエンサーに商品紹介をしてもらうという方法をとっています。

まだ始めたばかりで慣れていない部分もありますが、今後はこういったSNSマーケティングをうまく活用して、より多くの方に弊社の商品を知ってもらいたいですね。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

上杉李:
EC事業は今後も弊社の重要な柱になると考えています。ただし、現状では人材不足が課題となっているので、ECサイトの運営や商品開発、マーケティングなどを担当できる人材を採用したいと思っています。営業力もあると、なお嬉しいですね。そういった人材が増えれば、より効果的なEC戦略を展開できると考えています。

また、システム面での改善も進めており、今年の9月中旬には在庫管理システムを刷新し、稼働させる予定です。これにより、業務効率が大幅に向上すると期待しています。長期的に見れば、経費の削減にもつながるでしょう。最後に、私個人としては60歳までは現役で頑張りたいと考えています。その間に、会社をさらに成長させ、次の世代にバトンを渡せるような体制を整えていきたいですね。

編集後記

上杉氏のお話をうかがい、その行動力と先見性に驚かされた。コロナ禍という未曽有の事態に直面しても、新規事業を立ち上げるなど、常に前を向いて新たな挑戦を続ける精神は、多くの人の模範となるだろう。中国語対応と豊富な人脈を武器に、世界で躍進する同社の今後が楽しみだ。

上杉李/1985年4月中国生まれ、名古屋産業大学卒。2014年に会社を設立し、代表取締役社長に就任。