※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

社長を含む取締役が集まり、企業の経営方針や業務に関わる重要事項を決定する取締役会。この取締役会の運営をデジタル化するDXプラットフォーム「michibiku(ミチビク)」を運営しているのが、ミチビク株式会社だ。

取締役向けのDXツールの開発に着目した理由や、サービスを使うことで得られるメリット、今後の目標などについて、代表取締役CEOの中村竜典氏にうかがった。

取締役会DXプラットフォームをつくるきっかけとなったこれまでのキャリア

ーーまず中村社長の経歴をお聞かせいただけますか。

中村竜典:
愛知県の三河地方出身で、工業高校を卒業後はトヨタ系列のメーカーに就職し、大型車のボディパーツの製造などを行っていました。入社から約4年後、キャリアチェンジを決意して退職。1年半の勉強期間を経て、公認会計士の資格を取得しました。

その後、監査法人に転職し、自動車関連の大手メーカーをはじめとした上場企業の監査業務やアドバイザリーを担当しました。しかし次第に「人生の大半を費やす仕事なら、人からの感謝を感じられる仕事がしたい」という思いが強くなっていきました。そんなときに、望まない離職を生まない組織づくりを支援するスタートアップの株式会社OKANからスカウトを受け、転職しました。

ーーそこから起業を決めたきっかけを教えてください。

中村竜典:
コーポレート部門の責任者でしたが、少人数の組織だったため、私一人で会計、労務、総務、法務、人事業務も担当。生産性を上げようと、クラウドサービスを積極的に活用していました。

そんな中、取締役会の事務運営をしたとき、役員とのやり取りをメールで行い、会議では印刷した紙の資料を配布するという、従来のアナログな方法のままであることに疑問を覚えました。そのときに「取締役会こそ、バックオフィス業務におけるDXにおける最後の空白地帯だ」と気付いたのです。

この気づきから、取締役会の「運営効率化」と「質改善」に特化したプラットフォームの提供を決意し、ミチビク株式会社を設立しました。

デジタル化と改善提案で取締役会の運営をアップデート

ーー日本では珍しいサービスなので、起業時は苦労も多かったのではないですか。

中村竜典:
取締役会の運営を担うプラットフォームという性質上、顧客の信頼を得るまでは苦心しました。その解決策の1つとして、最高水準のセキュリティ体制を構築し、お客様の信頼獲得に努めました。さらに、会議における時間の使い方を可視化することで、会議の質の改善につながる点をアピールしました。

すると、従来の取締役会運営に課題を感じていた方々から関心を寄せていただけるようになりました。さらに、取締役会のDX支援に特化している企業がないため、優位性を出すことができました。

ーー改めて貴社の事業内容について教えてください。

中村竜典:
「経営を、あるべき姿に導く。」をミッションに掲げ、取締役会DXプラットフォーム「michibiku」の運営を行っています。会議資料の共有や議事録への電子署名、議案の進捗管理など、取締役会運営をシステム化することで効率化を実現。さらに、取締役会のデータを分析し、より実効性の高い会議となるよう改善支援も行っています。

当社の強みは、経営陣の豊富な経験を活かし、企業が抱える課題を深く理解していることです。そのため、多くの方が「まさにこれが欲しかった」と感じる機能を備えています。日本における取締役会のシステム化はまだ黎明期ですが、この分野で私たちはトップシェアを確立しています。

取締役会DXプラットフォームを活用する3つのメリット。情報管理は徹底し、果敢にチャレンジする組織へ

ーー貴社のサービスを利用するメリットを教えていただけますか。

中村竜典:
主に3つあります。1つ目は、取締役会運営のデジタル化により、作業時間を約3分の1に削減できる効率化です。2つ目は、グループ会社の管理体制強化です。プラットフォームでの一元管理により、グループ全体の情報をリアルタイムで把握できます。

そして3つ目が、時間配分や発言状況を見える化することで、会議の質を改善できることです。経営方針など重要な項目に割く時間を増やすことで、数年後の業績拡大や株価の上昇につながっています。

ーー貴社が大切にしている価値観を教えてください。

中村竜典:
これも3つあります。1つ目は「ガバナンス・ファースト」です。企業の重要事項を扱う以上、情報漏洩は致命的です。私たちは顧客の大切な情報を預かる立場であることを常に意識し、徹底した管理を行っています。

2つ目は「ガンガンいこうぜ」です。スタートアップとしてチャレンジ精神を持ち、迅速に行動することを社員に意識づけています。3つ目は「成果で未来を描こう」です。弊社のサービスを世の中に浸透させるため、プロフェッショナルとして確実に成果を出すことにこだわっています。

縦軸と横軸を広げサービスの価値を向上。取締役会のDXツールの活用を企業の「当たり前」へ

ーー今後の展望についてお聞かせください。

中村竜典:
まずは上場企業への浸透を図り、そこから上場グループ企業や学校法人などへの展開を目指します。特に、商社や鉄道会社など、多くのグループ会社を持つ企業を重点ターゲットとしています。

また、サービスの拡充を図るため、会議の改善提案にAIを活用する方針です。たとえば、議案の候補を提案する機能や、会議内容の分析機能の実装を検討しています。将来的には、役員一人ひとりにパーソナライズされたAIアシスタントの開発なんかもできると面白いですね。

さらに、GRC(Governance Risk Compliance)領域全体をカバーするラインナップの拡充も計画中です。企業のリスク管理機能を強化し、経営面でのリスク回避をサポートしていきます。

ーー最後に今後の意気込みをお聞かせください。

中村竜典:
多くの業務で効率化とPDCAサイクルが確立される中、取締役会運営だけがアナログのままです。私たちは、取締役会の効率化と質の向上を企業の「当たり前」にしていきたいと考えています。

具体的には、5年後にはすべての上場企業に、弊社のサービスを導入いただくことを目指しています。取締役会のあり方を変えるサービスを浸透させ、日本企業の成長に貢献していきます。

編集後記

「当社のサービスは、中長期的に日本を変える価値があると確信している」と話してくれた中村社長。企業の意思決定をする場である取締役会のDX推進は、日本経済の成長に影響を与えることだろう。従来の取締役会のあり方を変えるミチビク株式会社は、日本企業の発展に欠かせない存在になると期待している。

中村 竜典/愛知県出身。高校卒業後にトヨタ系列の企業に入社し、ライン作業に従事。その後1年半の勉強期間を経て公認会計士試験に合格し、2013年にPwCあらた有限責任監査法人(現:PwC Japan有限責任監査法人)に入所。東証一部上場企業を中心にインチャージとして財務諸表監査、内部統制監査業務等に携わる。その後OKANに入社し、コーポレート責任者を経て、2018年に独立。2021年にミチビク株式会社を創業。