※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

1925年に創業し、名古屋と福岡に拠点を持つ株式会社石渡。洋菓子や和菓子の包装資材・ラッピング用品を扱う卸売業者として、自社ブランド「CA-GO」の展開にも注力している。代表取締役社長の石渡明彦氏に、就任後の取り組みや商品開発の裏側、今後の展望をうかがった。

包装資材の問屋からPB商品主力の会社へ転換

ーー石渡社長のご経歴をお話しいただけますか。

石渡明彦:
2代目社長であった祖父にも可愛がられていたため、就職活動をする前から自分の進むべき道は「家業の『石渡』を継ぐことだ」という意識がありました。大学卒業後は、今もお付き合いのある福助工業で3年ほど修業し、梱包用フィルムやレジ袋の製造過程を勉強させていただきました。

その後、弊社に役員として入社し、幼少期から私のことを知る社員たちに混ざり、4代目となる前提で倉庫業や配達、営業の仕事を学びました。年上の方に指示を出さなければいけない場面では、リーダーシップと気遣いのバランスを取る難しさを感じたものです。

ーー社長就任後の取り組みをお聞かせください。

石渡明彦:
年間売上がかなり低下しているタイミングで、会社を引き継ぐことになりました。昭和50年代には9億円強だった売上が、就任当時は6億8000万円程度であり、3期連続で赤字だったのです。銀行主導で社長を交代し、新しい会社にしていこうと取り組んだ時期は一番大変でしたね。

今までと同じことを続けていたら間違いなく倒産してしまいます。まずは得意先を入れ替え、幹部社員も再編しました。新しいチャレンジが苦手な社員が多かったのですが、自社商品を企画し、外注で生産した上でお客様に届ける体制に切り替えたこともポイントです。

弊社は、もともと「カゴ屋」を起源としており、以前はバスケットをベースにした包装資材を国内メーカーから仕入れる問屋に近い体制でした。オリジナル商品をつくるようになってからは、自分たちで販売価格の主導権を握れるようになり、東海地区限定だった販売圏も拡大しました。売上が22億円までアップしたことも踏まえて、私がもたらした最大の変化だといえます。

社内制作の豊富なカタログ&物流の外注化が強み

ーー貴社の強みを教えてください。

石渡明彦:
弊社はスイーツ・洋菓子用の包装資材・ラッピング用品を販売する会社として、製造菓子の小売店やケーキ屋さん、カフェなど全国に約6000件のお取引先があります。製造業者ではないものの、弊社のカタログに掲載しているアイテムの9割以上は自社製品です。「CA-GO(カーゴ)」というプライベートブランドで、他社と差別化している点が一番の強みといえます。

また、年間4冊のカタログを製作して、全国のお客様に発信し続けていることも特徴です。通年・夏商品の総合カタログ「Dessert & Coffret」をはじめ、「クリスマス・お正月号」や「バレンタイン&ホワイトデイ商品」など季節に応じたカタログがあり、構成やパッケージデザインも基本的に社内で行っています。

ーーどのように多種多様な商品を管理しているのでしょうか?

石渡明彦:
事業規模が拡大することで物量も大幅に増え、私が入社した頃は一つで十分だった自社倉庫が手狭となり、物流機能もカバーしきれなくなりました。

倉庫を借りてもすぐにオーバーフローしてしまうので、管理方法や物流問題において4回は鞍替えしたのではないでしょうか。運送会社や自動倉庫と業務提携し、外注化に成功した現在は社内がすっきりしただけでなく、物流コストも削減できています。

自由な発想×ニーズを見逃さない商品企画を継続

ーー経営者として大切にしていることを教えてください。

石渡明彦:
私の仕事は、社員が働きやすいように環境を整備することです。「自分から挨拶する」など、当たり前のことを徹底できていない人がいれば注意します。40人以下の小さな会社なので、元気がない人を見れば、すぐに声をかけています。仕事や人間関係の悩み、会社への不満を一人で抱え込まないように、みんなにはできる限り本音を話してもらいたいですね。

自社製品の企画においては、「自分が欲しくなるアイテムをつくってほしい」という思いを伝えた上で、「どんな商品をつくってもいいよ」と自由にさせる企業文化も大切にしています。営業でも企画でも、お客様自身が気づいていないニーズを見つけられることが重要です。

ーー今後の展望をお聞かせください。

石渡明彦:
将来的な業務継承にそなえ、「5代目が動きやすい環境」を整えていく必要があります。幹部の育成については、次期社長となる長男(室長)に采配を任せている最中です。自社SNSの運用も、室長の提案によってスタートした取り組みでした。「時代に合った広報活動に力を注ぎたい」と言われ、世代交代に向けて再び会社を変えていかねばと実感したものです。

2023年には創立100周年記念事業で本社1階を改装し、自家製ヨーグルトショップをオープンしました。飲食事業の領域も広げていけば、もっと面白い会社になれると考えています。

編集後記

包装資材を仕入れて販売するスタイルから、自社商品の開発に注力していった株式会社石渡。社員の反発を恐れなかった石渡社長には、「なんとしてでも会社を立て直す」という覚悟があったのだろう。社員たちも力強いリーダーを信じて突き進んだ結果が、最大160ページにも及ぶ充実のカタログが誕生し、多くの顧客を得る今につながった。

石渡明彦/1966年、愛知県生まれ。愛知学院大学文学部心理学科を卒業。福助工業株式会社に3年間勤務したのち、株式会社石渡へ入社。2000年、4代目の代表取締役社長に就任。