
公益財団法人日本訪問看護財団が2024年に公表したデータによると、日本の訪問看護ステーションにかかる医療費・介護給付費は20年近く増加。また、2001年の訪問看護ステーション数は4,693事業所だったが、2023年には14,074事業所にまで増えている。
高齢化で介護市場が急速に拡大し、介護サービスの拡充が急務となっている昨今、江東区で訪問看護ステーションを手がけているのが、株式会社ボンズシップだ。今回、代表取締役の清水誠太氏に、創業の経緯や在宅介護にこだわる理由、今後の展望などを聞いた。
住み慣れた地域や家で最期を過ごしてもらいたいと、在宅介護の会社を設立
ーー今までの経歴や創業の経緯を聞かせてください。
清水誠太:
大学卒業後に不動産会社で営業職を5年ほど経験してから、在宅介護の会社へ転職しました。不動産会社では数字に追われている感覚が強く「誰かの役に立っていることを、より実感できる仕事がしたい」と思ったのが転職の理由です。
転職後、実際に働く中で強く感じたのが在宅介護の意義についてです。介護サービスを受ける利用者は、住み慣れた地域や家で、家族とともに最期を過ごしたいと望む人がほとんどであり、自ら進んで施設に入りたいと考える人は、そう多くありません。
そこで、今までの暮らしを継続させることができる介護医療の形として、在宅介護に魅力を感じるようになりました。その後、在宅介護ではなく施設介護の会社へ転籍したものの、やはり在宅介護の仕事をしたいと思い、株式会社ボンズシップの設立を決意しました。
訪問看護ステーション・居宅介護支援・訪問マッサージの3軸を連携して運営

ーー事業内容を教えてください。
清水誠太:
主に3つの事業を手がけています。1つ目は訪問看護ステーションの運営です。介護保険制度や医療保険制度を利用しながらサービスを提供しています。
2つ目が居宅介護支援事業、3つ目が訪問マッサージ事業です。2つ目の居宅介護支援事業に関しては、利用者様が何に困っていて、どのような暮らしをしたいのかなどをケアマネジャーがヒアリングし、適切なケアプランを立てるといったものになります。
弊社はこの3つの事業を連携させているのが特徴で、ケアマネージャーあるいは病院などの施設から利用者様を紹介される形で依頼を受けています。看護師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、鍼灸あん摩マッサージ指圧師、ケアマネジャーなど、医療・介護の、多彩な専門職人材が多数在籍している点が強みです。
ケアマネジャーや利用者様からは、看護とリハビリなど複数のサービスを連携して診ている点、地域で最も規模が大きい事業所のため安心感がある点、サービスの質が高い点などが評価されています。
ーー貴社ではどのような人材を採用していますか。
清水誠太:
専門性だけでなく、人間性も見て採用活動を行っています。手技のスキルなどはそのうち上達しますが、人の考え方はなかなか変わらないと考えているためです。ですので技術やスキル、経験を備えつつ、人としていかに信頼されるか、人の心に響く言動ができるかが重要になります。今後は現場の人材だけでなく、管理職も多数必要になってくるので、管理職になり得る人材の採用・育成も進めていきたいと思っています。
小児の訪問看護の拡大、そして公的保険に依存しない自由市場分野への事業拡大
ーー今後の注力テーマを聞かせてください。
清水誠太:
1つ目は、小児の訪問看護です。現代では医療が発達し、昔であれば亡くなっていた子どもが生きられるようになりました。しかし、そういった子どもが生きるためには、日々の通院が必要になることが多いですし、家に帰ることができずにずっと入院しご両親と離れて暮らす子どももいるのです。
日本ではまだ小児の在宅生活を医療面や介護面でサポートするための体制や制度がまだまだ行き届いていない部分があります。私たちが介入することで家族の負担を減らし、家族全員が無理なく一緒に暮らせる環境づくりをしていきたいです。
2つ目が、健康のために運動したい40~60代に向けたボディメンテナンス事業です。現在、「100歳になっても自分の足で歩き続けよう!」というテーマで年に数回のウォーキング教室を開催しています。その延長線上というわけではありませんが、健康のために運動する中高年や、さらにその上を目指す一般アスリートも増加する中で
その方々のケガや不調の悩みを改善したり、競技のパフォーマンスが上がるようにボディメンテナンスを実施していきたいと考えています。
3つ目が、中小企業向けの健康サポートです。定年を過ぎても社員に自社で働き続けてほしいと考える中小企業は少なくありません。社員たちが年齢を重ねても長く働き続けられるように、弊社のトレーニングサービスなどを会社の福利厚生として利用してもらう予定です。この3事業の実現に加えて、私たちがサポートできるエリア、つまり東京の東側でさらに顧客を開拓していきたいと思っています。
ーー今後の展望をお願いします。
清水誠太:
社員たちには、他社ではなくボンズシップで働く意義を感じてもらいたいです。社会に貢献し、健全に利益を上げて、社員全員に幸せになってもらう。このサイクルを回すことが、経営者の役割だと考えています。また、介護業界は待遇についていろいろと言われることも多いですが、弊社が社員を大切にして、仕事に見合った賃金を支払うことで、この業界でもしっかりとした給与が保証されていることを証明していきたいです。
編集後記
介護利用者のニーズに応え、介護を担う家族の負担も減らすボンズシップのサービス。高齢化が急速に進む昨今の状況を鑑みると、同社のサービスを必要とする人は今後さらに増えることが予想される。小児の訪問看護など新たな挑戦を始めるとともに、介護業界が抱える問題の解決にも貢献したいと奮闘する清水社長を今後も応援したい。

清水誠太/1972年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後不動産会社で営業職を5年経験し、2000年に介護業界に転職。在宅介護会社で現場業務とマネジメント業務を経験した後、社会福祉法人に転籍し、特別養護老人ホーム施設長に就任。2014年に株式会社ボンズシップを設立し訪問看護、訪問マッサージ、居宅介護支援事業を展開。地域の医療介護コミュニティ「江東医介塾」の副塾長として、業界内の顔の見える関係性構築に注力。