
岡山県でデニムの聖地と呼ばれる岡山県倉敷市児島にて1952年に創業し、半世紀以上にわたりデニム製品を手がけてきた株式会社ジョンブル。培った技術と感性を糧に、現在ではジーンズを中心にカジュアルウエアの企画、製造から加工、販売まで、一貫した体制で高品質な製品を世に送り出す。
世界で通用する技術力を持ちながら、適正価格での提供にこだわり、業界内外から高い評価を得ている同社。デニムという素材の可能性を追求し、アパレルの枠を超えた商品を開発し続け、その舵取りを担っている代表取締役CEOの塚田裕介氏に、経営への思いと今後の展望をうかがった。
アパレル業界でのキャリアを経て、事業承継の舵をとる
ーーこれまでのキャリアについて教えていただけますか?
塚田裕介:
大学を卒業した後は特にやりたいことが見つからず、靴の卸売会社に入社しました。しかし、働くうちに海外と関わりがある仕事をしたいと思うようになったのです。そこで、輸入雑貨や衣料品を扱うセレクトショップを展開するアパレル会社へ転職したところ、新たなセレクトショップの立ち上げにバイヤーとして携われることになりました。
その頃は既に業界でセレクトショップというお店のスタイルが確立されていたため、後発のバイヤーとしては、他のセレクトショップとの差別化に苦労しましたね。メンズを担当していたとき、当時はアメリカの製品が主流でしたが、あえてヨーロッパの製品で攻めるなど、他社とは異なる角度からアプローチすることを心がけていました。その後20年間にわたり、バイヤーやディレクターを務め、最終的には子会社の取締役まで経験しました。
ーージョンブルに入社した経緯をお聞かせください。
塚田裕介:
アパレル会社を退社した後は、別の会社で3年ほど事業再編に携わっていました。そのとき、ファンドを通じて弊社の事業承継のお誘いを受けたのです。それまでのキャリアは海外との取引や小売が中心でしたが、いただいたお話は製造から販売まで一貫して手がける会社の責任者というものでした。
事業内容についてあまりイメージが湧かなかったのですが、実際に弊社のものづくりの現場を目の当たりにして、「やり方を変えれば一気に成長できる」と確信しました。5年前に代表取締役に就任してからは、いいところを伸ばしながら事業全体を再編成してきました。
トップクラスの技術力と適正価格で勝負するデニムづくり

ーー貴社の強みについて教えてください。
塚田裕介:
弊社では、デニムを中心とした製品の製造から販売までを一貫して手がけています。12のブランド展開のうち、私は7ブランドの企画を担当し、メンズとユニセックスの商品開発を行っています。
デニムについては、私がいる限り他社には負けないという自負があります。弊社はブランド力や生地の品質はもちろん、デニムの加工についても世界トップクラスの技術を持つ製造部門を有しています。しかも、その高い品質の製品を適正な価格で提供できることが、弊社の最大の強みといえるでしょう。
ーー商品開発ではどのようなことを大切にしていますか?
塚田裕介:
私自身がバイヤーを経験しているため、バイヤーの気持ちがよくわかります。以前は買う立場でしたが、今は売る立場に変わっただけ。バイヤーが何を求めているかを理解した上で、その期待にどう応えていくかという点が重要です。現在は卸売が約6割、小売が4割ほどの構成ですが、小売については私自身の経験を活かし、売り場づくりの方向性を示しつつ、現場で自主的にカスタマイズできるようにしています。
個別最適の時代に新たな挑戦を続ける
ーー今後のビジョンについてお聞かせください。
塚田裕介:
デニムを通して、顧客とともに成長できる可能性を追求していきたいと考えています。今は個別最適の時代だからこそ、顧客ごとに最適化を図ることが重要です。たとえば、特定のお客さまの好みに合わせた商品開発や、小売店との協業、眠っている技術の再活用など、さまざまな可能性が考えられるでしょう。また、アパレル以外の分野への展開も進め、有名カフェチェーン店の雑貨製作など、デニムの新しい活用方法も模索しています。
ーー貴社にはどのような人が向いていますか?
塚田裕介:
自分でやりたいことが決まっている人には、非常にやりやすい会社だと思います。つい最近では、入社2年目の社員が提案してくれた新しい企画が、実際にプロジェクトとして動き出しました。もちろん、何でも認めるわけではありませんが、会社の成長に繋がりそうだと思えば、新しいチャレンジを積極的に支援しています。
デニムや洋服が好きで、新しいことに挑戦して成果を出したいという意欲のある人には、大きな可能性のある会社だと思いますよ。
<公式ブランドサイト>
Johnbull co.,ltd.
<公式オンラインサイト>
JOHNBULL ONLINE STORE
<公式インスタグラム>
JOHNBULL @johnbull_private_labo
編集後記
「デニムを通じて顧客とともに成長する」という塚田社長の言葉が印象的だった。20年にわたるアパレル業界での経験を持ち、製造から販売までを一貫して手がける現在の立場。その両方を知っているからこそ、デニムの可能性を最大限に引き出せるのだろう。社員の自主性を重んじ、新しいアイデアを積極的に採用する経営スタイルからは、株式会社ジョンブルのさらなる進化の予感を感じた。

塚田裕介/1972年、東京生まれ。1996年に株式会社ベイクルーズへ入社し、バイヤーとしてブランドの立ち上げに尽力。ディレクターなどを経て取締役に就任。2016年、株式会社パルに入社してゼネラルマネージャーとして勤務。2019年に株式会社ジョンブルに代表取締役CEOとして入社し、現在に至る。