少子高齢化が急速に進み、働き手が不足している現代の日本。多くの企業が人材確保に悩まされている。一方、企業側がほしい人物像に「高いスキル」を求めるようになりつつある傾向も、新たな採用を難しくしている要因の一つだ。
こうした採用難の時代を乗り越えるために、注目されているのが、自社の魅力を最適な方法で伝える「アトラクト採用」を用いて次世代型の採用支援ソリューションを提供する株式会社Haulである。同社の代表取締役CEO、平田拓嗣氏に企業の背景と採用支援ビジネスに込める思い、未来の展望をうかがった。
組織課題から見出した採用支援の新機軸
ーー若くして起業に至った経緯をお聞かせください。
平田拓嗣:
私は学生時代に、個人事業主として独立系のファイナンシャルプランナーという仕事に携わっていました。そこから本格的な起業を見据えて、まずはさまざまな企業や人々の思いに触れるために、大学卒業後は人材系の企業に就職しました。
就職後もプロダクトをつくって起業したい思いを持ち続ける中で、新しいものを生み出す力とお金を稼ぐ力は別物だということに気づきました。そこで、最先端の領域に触れて学びたい思いが芽生え、学生時代からビジネスを通してつながりのあった株式会社ABEJA(アベジャ)の代表に相談し、社会人2年目の時に同社へ転職しました。
当時のABEJAは創業間もない時期で、私はマーケティングや営業、カスタマーサクセス、人事など、さまざまな業務を体験しました。社長から直接、多くを学ぶ機会をいただき、心から感謝しています。
ABEJAに3年9ヶ月在籍した後、2018年春に独立し、HR特化のコンサルティングの仕事を始めました。ゆくゆくはプロダクトをつくるつもりでしたが、コンサルティングを通して情報収集と経験を積み重ねて、人脈を広げることができたので良い選択だったと思っています。半年間の準備期間を経て、同年秋に株式会社Haulを創業し、現在に至ります。
ーー採用ソリューションのプロダクトが生まれた背景を教えてください。
平田拓嗣:
企業のコンサル事業を通じて組織づくりに関わる中で、お客様のニーズは、皆様ほぼ同じでした。しかしながら、当時、採用プロセスを管理するプロダクトはありましたが、企業の採用力を上げていく攻めのプロダクトがありませんでした。そういった要望にお応えしたいという思いから生まれたのが、採用決定率を上げるプロダクト「RekMA(リクマ)」です。
「採用の成果」を支える次世代ツールの力
ーー一般的な採用管理ツールと「RekMA」の違いをご説明ください。
平田拓嗣:
「RekMA」は、継続してスピーディに成果を出すための採用イネーブルメント領域のSaaS(サース)と生成AIを組み合わせたプロダクトであり、「採用の成果創出」という新しいカテゴリに特化した次世代型の採用ソリューションです。
選考途中の候補者の状況に応じたヒアリングや、内定時に送るオファーレターの作成など、トップリクルーターの行動をプロダクトで再現できます。このシステムを導入することで、候補者一人ひとりに最適な採用アプローチが可能となり、本当に求める人材の採用率を向上させます。
具体的には、「RekMA」を導入することで、面接準備から面接、その後のフォローやオファーまで、候補者の意向度に関わる一連の重要アクションを「AI x SaaS」で効率化し、スピーディーに強化できます。採用担当者や面接官の負担を軽減しながら、採用プロセス全体の質を向上させ、候補者一人ひとりに合わせた最適なアトラクト採用につなげられる点が大きな特徴です。
このプロダクトは、候補者から内定承諾や辞退の理由をデータで回収することも可能です。採用したい人材が「なぜ自社を選んだのか」「なぜ他社へ流れたのか」を正確に把握することで、採用プロセスをデータドリブン(データをもとに判断)で改善することができます。
採用難時代に企業と人材の幸せな出会いを願って
ーー貴社のシステムはどのような企業に導入されていますか。
平田拓嗣:
優秀な人材を積極的に採用したい企業から、高い支持をいただいています。IT・広告・人材コンサルティング業界などは、急成長していても自社製品を持たない企業が多く、他社との差別化が難しいケースが少なくありません。「RekMA」を導入することで、採用アプローチを差別化し、内定率を高められます。それが、支持される理由の一つだといえるでしょう。
また、候補者から面接へのフィードバックデータを得ることで、面接対応の質が高まったという声を多くいただいています。採用担当の仕事は、ブラックボックスになりがちな部分なので、候補者からの評価をしていただけるのは、ありがたいですね。
ーー現在、貴社では、どのような人材が活躍していますか。
平田拓嗣:
年齢層では、30代の社員が中心です。各社員が自分の専門性を活かしつつ、多方面に業務を広げ、ゼネラルに業務を遂行しています。ベンチャー企業で勤務していた経験を持つ人が多いこともあり、会社が成長するために自分の専門領域のみにとらわれず、自ら進んで行動できる社風が、自然に根付いていると思います。
弊社ではさらなる事業拡大を目指し、自社の採用活動にも積極的に取り組んでいます。来年末には40人規模まで人員拡大を目指しています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
平田拓嗣:
新規取引先開拓の対象は、スタートアップ企業やベンチャー企業を含む、創業30年以内の企業が中心です。採用に強い企業が当たり前のように実践しているプロセスを導入することに抵抗を感じる企業もまだまだ多いため、弊社のシステムを利用している企業の成功事例を知っていただくことが、新規開拓の鍵だと考えています。
一方、弊社では、「RekMA」の販売強化、新ソリューションの開発、新規事業の立ち上げ、採用・組織体制の強化などを進めるため、既存株主を引受先とした第三者割当増資による、総額5億円の資金調達を実施しました。今回の調達により累計資金調達額は6.5億円となります。
今後は、事業の要となる採用を実現する「次世代のソリューション構築」を加速したいと考えています。企業に対しては「再現性のある採用力」をかなえるプロダクトを提供し、求職者に対しては「企業との出会いの機会格差を無くす」ソリューションを構築していくことで、採用難の時代に貢献することを目指します。
編集後記
多くの企業が抱える採用難という課題に注目し、画期的な次世代型の採用支援ソリューションを生み出した株式会社Haulの代表取締役CEO、平田拓嗣氏。学生時代から起業を志し、自らの信じる道を突き進んだそのバイタリティーに驚かされた。
世の中にないものを創造し、役立てるために実用化するには、類まれなるアイデアと行動力、そして物事を俯瞰して考えられる分析力が不可欠だ。この先、同社がどのようなムーブメントをつくっていくのか、今後の活躍に期待したい。
平田拓嗣/AIスタートアップ株式会社ABEJAの初期メンバーとして入社。HR部門でビジネスサイドからAIエンジニアまで幅広い職種の採用に携わる。その後、HRBP(HRビジネスパートナー)として独立。ジャンルを問わず、さまざまなフェーズのスタートアップやベンチャー企業および、VC(ベンチャーキャピタル)のHR支援に従事。各社経営陣に伴走し、ハンズオンで支援を行う。2018年に株式会社Haulを創業。