
1996年に創業した株式会社パルディアは、人材派遣やデータ入力事業からスタートし、現在は年間1,000本以上のキャンペーン企画を手がける国内有数のプロモーション企業へと成長を遂げている。今回は、代表取締役の中沢敦氏に、起業までの経緯や事業の強み、そして今後の展望について話をうかがった。
大手広告代理店からの独立
ーー起業までの経緯を教えてください。
中沢敦:
「人に影響を与える仕事がしたい」という思いから、大学卒業後は広告代理店に就職しました。クライアント企業のキャンペーン企画や、印刷物、プレミアムノベルティの制作などを手がけ、入社から5年経過後起業を決意しました。
ーー広告代理店時代の仕事で印象に残っているエピソードはありますか。
中沢敦:
コンビニエンスストアチェーンのキャンペーンを担当したときのことです。突発的に決まったプロジェクトで、企画立案から販促ツールの制作まで、非常にタイトなスケジュールでの対応を迫られました。
なんとか納期に間に合わせることができましたが、納品先を訪れると、多くの店舗で販促ツールが設置されていないことに気づきました。私の仕事に不備があったのではないかと思い、怒られるのを覚悟してコンビニエンスストアの支店長に報告したところ、叱責されるどころか、むしろ感謝されたのです。
「広告代理店は納品して終わりというイメージだったが、現場の状況を確認し、報告までしてくれる姿勢に感銘を受けた」と言われました。支店長はすぐにスーパーバイザーを集めて、「代理店の中沢さんが本気で取り組んでくれているのに、なぜ自社の人間がきちんと対応できていないのか」と、強く指導してくださいました。
その結果、販促ツールの設置率はほぼ100%に達し、売上は前年比250%という驚異的な数字を記録したのです。この経験を通じて、どれだけ企画やデザインが優れていても、実際に店頭でお客様に伝わらなければ意味がないと強く感じました。そして、いかに消費者にしっかりとメッセージを伝えられるかが、成功のカギだと確信しました。
ーー起業を決意したのはどのような理由からですか。
中沢敦:
知人から、全国のガソリンスタンドで携帯電話を普及させるキャンペーンの実施について相談されたことがありました。当時は携帯電話がまだ普及していない時代で、決済時に使用できるガソリンカードに入会した方に携帯電話をプレゼントする企画でした。しかし、依頼主が小規模企業だったため、当時勤務していた広告代理店では案件として受けられず、個人で引き受けることにしたのです。
その仕事ぶりを評価してくださった携帯電話の販売会社の社長から、「インターネット関連の会社を立ち上げようと考えているのだが、一緒にやってみないか」というお誘いをいただいたことが、起業を決意するきっかけとなりました。
ーー起業当初はインターネット会社だったのですか。
中沢敦:
当時のインターネット業界といえば、ホームページの制作会社かプロバイダ事業者しかない状況で、業界の将来像がまだ見えない時代でした。
ただ、私はインターネットが普及すると、「人材をネットワークで提供できる時代」が来ると考えていました。そこで、まずはインターネット専門の人材派遣会社としてビジネスをスタートさせたのです。
人材派遣業で苦戦した経験からたどり着いた新たなビジネス
ーー創業時に苦労したことを教えてください。
中沢敦:
人材派遣業で直面した最大の課題は、競合他社との差別化の難しさでした。広告代理店時代の経験を活かし、広告やイベントの企画・制作と並行して人材派遣の案件獲得にも注力していましたが、なかなか思うような受注には結びつきませんでした。
「何とかして会社を維持しなければならない」という中で、活路として見出したのが、在宅の主婦層に向けたデータ入力業務でした。現在は在宅ワークは珍しくありませんが、当時は画期的な取り組みだったのです。その結果、従来の人材派遣から入力請負業務へと軸足を移すことになりました。これは、市場のニーズと差別化の可能性を徹底的に探った結果、たどり着いた答えでした。
ーー現在の事業について教えてください。
中沢敦:
データ入力事業を本格的に展開していく中で、ダイレクトメールやキャンペーンの景品の発送代行といった業務も依頼されるようになりました。これにより、キャンペーン事務局の仕事が増え、事業が拡大していきました。現在は単純なデータ入力だけでなく、データ分析や売上向上のためのキャンペーン企画の提案など、より付加価値の高いサービスを提供しています。
ーー貴社の強みはどのような点にありますか。
中沢敦:
キャンペーン実績とそのデータベースにあります。年間1,000本以上のキャンペーンを手がけており、この数は恐らく日本国内でもトップクラスだと自負しています。特に価値があるのは、過去15年間にわたって蓄積してきたキャンペーンのデータベースです。
このデータには弊社だけではなく、他社が実施したキャンペーンの情報も含まれており、市場全体のキャンペーントレンドを的確に把握し、最適な戦略をクライアントに提案することを可能としています。
変化に適応しながら時代のニーズを捉える

ーー現在注力している事業について教えてください。
中沢敦:
特に注力しているのが、LINE公式アカウントの代理店事業です。これまでも広告代理店や消費財メーカーからの依頼で、LINEを活用したキャンペーンをいくつか手がけてきましたが、これをさらに発展させ、小売店向けにサービスを展開できないかと考えました。そこで、1年ほど前からLINEの運用代行事業をスタートさせました。
顧客のLINE公式アカウントをより効果的に活用していただくため、単なる情報配信だけではなく、広告運用やプレゼントキャンペーンなど総合的なサポートを提供しています。現在までに累計7,500アカウント以上の運用実績があり、今後さらに増やしていきたいと考えています。
ーー今後の展望についてどのような考えをお持ちですか。
中沢敦:
弊社では「NO.1プロモーションテックカンパニー」を事業ビジョンとして掲げており、2030年までに「NO.1」と呼べるビジネスを10個つくりたいと考えています。私たちを取り巻く環境は、人口減少や働き方改革、AIの進歩など、急速に変化を続けています。
そうした変化の中にあっても、時代のニーズを的確に読み解き、新たな価値を創造し続けていきたいと考えています。そして何より大切にしているのは、社員とともに成長していくという視点です。全社員が「働き甲斐」を感じ、「最幸に楽しい会社」と呼べる企業を目指していきます。
編集後記
広告代理店での経験を活かしながら、人材派遣からデータ入力、そしてキャンペーン事務局へと、時代のニーズを的確に捉えながら事業を進化させてきた中沢社長。その先見の明と活動力は、まさに起業家としての洞察力と実行力を体現しているといえるだろう。「NO.1プロモーションテックカンパニー」という企業が掲げるビジョンも、中沢社長の言葉として聞くと、ただの夢物語ではないと感じる。その実現に大いに期待したい。

中沢敦/1967年、生まれ。大学卒業後、大手広告代理店に入社。消費財メーカーやCVSチェーンをクライアントに持ち、多種多様なプロモーション企画に携わる。その後、株式会社パルディアを設立。以後は、店頭プロモーションに特化し、流通チェーンや消費財メーカーの店頭戦略に数多く携わる。店頭販促のコンサルティングなど幅広く活躍中。