※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

総合マーケティングビジネスを行う株式会社富士経済は2025年、冷凍食品の国内市場が1兆3,617億円になることを予測。これは2023年比4.4%増の伸び率で、冷凍食品市場は拡大を続けている。

今伸び盛りの冷凍食品業界において、パイオニア企業として知られるのが株式会社八ちゃん堂だ。同社は冷凍たこ焼き「八ちゃん 大玉たこ焼」を中心に、「むかん」や「冷凍なす」など、さまざまな冷凍食品を販売している。

今回、代表取締役社長の川邊博之氏を取材し、同社の商品が人々から愛される理由や組織づくりへの考え、今後の展望を聞いた。

小さな改革を積み上げることで会社を徐々に成長させてきた

ーー社長就任後の取り組みについて聞かせてください。

川邊博之:
私は1992年に八ちゃん堂に入社。主に製造部で働いたのち、2009年に社長に就任いたしました。

社長になって最初に考えたことは「従業員の皆さんに、新社長に馴染んでもらうこと」です。ですから社内に対してまず「社長は代わりましたが、何も変えません。今まで通り安心して日々の業務をおこなってください。」と言いました。しかしその実、挨拶や電話のとり方、車の停め方など、小さなことから会社の枠組みを少しずつ変えていきました。

細かいところから徐々に積み上げたことが、結果として社内の効率化や売り上げの上昇につながったのではないかと考えています。

冷凍たこ焼き・冷凍焼きなす・冷凍皮なしみかんの3つを柱に事業を展開

ーー事業内容について教えてください。

川邊博之:
弊社では主に、冷凍たこ焼き、冷凍焼きなす、冷凍皮なしみかんの3つのカテゴリーの事業を展開しております。

メインとなる冷凍たこ焼きですが、実は日本で初めて「冷凍たこ焼き」を開発したのは弊社なんですよ。創業者である父が、私の弟が受験勉強の合間に冷凍庫で凍結保存させたたこ焼きを電子レンジで温め直しているところを見て「これは商売になる」と思いついたのが商品開発の経緯だと聞いています。国内販売がメインですが、現在では米国やカナダ、香港、シンガポール、台湾などでも販売しています。

冷凍焼きなすはホーチミンの農場と工場で栽培から製造まで一貫して行っており、主に外食産業や病院食などで使っていただいております。

そして、冷凍みかんは「むかん」という商品名なんですが、福岡の方言で「剥かんでいいから、むかん」なんです。皮のない状態で販売しているのが特徴です。映画館やイベント会場、野球場などでも販売しています。

ーー貴社の商品の強みはどういった点にありますか。

川邊博之:
たこ焼きに関しては、やはり冷めても食感・味ともに美味しい点です。

弊社の商品はスーパーで調理したものをお総菜コーナーで販売していただいています。ご購入いただいたお客様が自宅に持ち帰って電子レンジで温めたり、あるいは冷めたまま食べたりしても、美味しく召し上がっていただけると思います。

省人化を進めながら、海外展開と国内の拡充の両軸で会社を発展させていく

ーー組織づくりへの考え方を聞かせてください。

川邊博之:
弊社の人材の8割が製造に関する仕事に従事していることから、会社として、それぞれの従業員がすべき仕事のガイドラインや責任範囲を明確にするよう努めています。

そのうえで、社員には「隣の人の分まで、はみ出して仕事をできるようになってほしい」と伝えています。個人の評価とか業務の効率化はもちろんですが、隣の人が楽できるような作業を心がけることで、周りの人との信頼関係も構築されていきますから。

また、従業員が効率的に働けるように、本来の仕事以外の部分で悩まずに済むような環境づくりも意識しています。人間関係の悩みで業務に支障が出るとか、そういうことはできるだけ排除したいんです。就任当初と同じことですが、小さな教育を積み上げて、チームワークをより強化できるように勤めていますね。

ーー最後に、今後の注力テーマと展望についてお願いします。

川邊博之:
注力テーマは大きく2つあります。1つ目は、新卒の採用です。今まで営業や開発の部署は、経験がある中途しか採用していませんでした。今後は新卒も採用して、育成に力を入れていきたいと考えています。

2つ目は、省人化を進めることです。働き手がどんどん少なくなる中、弊社のような労働集約型の工場は、いかに少人数で生産量を大きくできるかが課題となっています。今後はロボットによる作業の代替など、業務の効率化を図っていくつもりです。

今後は海外展開と国内の拡充という2つの柱を主軸に会社を発展させていく方針です。

また海外向けに野菜の加工食品を販売するなど、冷凍たこ焼きとは別の商品での展開も考えています。

編集後記

八ちゃん堂の商品が多くの支持を得ているのは、味に対するこだわりだけが理由ではない。ISO 9001認証の取得や徹底した原材料の管理など、安心安全を実現する取り組みも欠かさず行うことが、品質の高さにつながっているのだ。

安心安全で味のクオリティも高い同社の商品なら、たこ焼き以外も海外で受け入れられることは間違いないだろう。八ちゃん堂が各国で愛され、日本の食の素晴らしさをさらに広めてくれる未来に期待したい。

川邊博之/1966年、兵庫県生まれ。1985年、柳川高校卒業。1987年、株式会社福岡松屋入社。1992年、株式会社八ちゃん堂入社後、2009年に代表取締役社長に就任。