※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

岐阜県を拠点に、電気工事や制御盤の設計・製作、設備の保守管理など幅広い事業を展開する株式会社トクデン。野菜工場や、高速道路の融雪設備などのシステム構築に携わるなど、電気工事会社の枠にとどまらない先進的な挑戦を続けている。今回は、代表取締役の上田宗輝氏に、会社の魅力や経営哲学、そして未来へのビジョンをうかがった。

未経験で飛び込んだ電気工事業界

ーー電気工事業界に足を踏み入れた経緯についてお聞かせください。

上田宗輝:
大学卒業後に自動車メーカーのマツダに就職し、生産技術の仕事をしていました。当時は家業とは違う別のキャリアを築くつもりでした。しかし、先代の父と話す中で「こういったインフラ設備にかかわる会社は地域に残していかなければならない」と考えが変わり、半ば親孝行のつもりで29歳の時に家業に入る決意をしたのです。

それまで全く異なる業種で働いていたため、正直なところ最初は不安でした。特に、新卒で入社する人たちが22歳であるのに対し、30歳近い私は「ある程度の経験や知識があるベテラン」と見られることが多く、周囲の期待値が高かったのです。現場監督というポジションからスタートしたのですが、知識の習得と同時進行で日々仕事をこなし、施工管理計画を立てる力を養うために、相当な努力を重ねました。

ーー一人前の現場監督になるまでにはどのくらいの時間を要するものですか?

上田宗輝:
一人で現場を任されるようになるには、まず3〜5年は必要です。しかし、それはまだ通過点にすぎません。お客様から「次もお願いしたい」と信頼される監督になるには、さらに5年ほどの経験が求められます。

最終的な目標は、現場の全体像を把握し、必要な知識や技術を備えるだけでなく、お客様との信頼関係を築くことです。たとえば、工事価格が他社より多少高くても、「この人に任せれば安心だ」「動きが良くて頼みやすい」などと思っていただくことで、次の仕事につながります。中途半端な仕事では、信頼を得ることはできません。

リピートしてくれるお客様がいて、新規の紹介もいただける。そのレベルに到達するには、やはり10年近い経験が必要です。

「選ばれる会社」づくりに込めた思い

ーー電気工事の現場では、どのようなやりがいを感じられますか?

上田宗輝:
私たちの仕事の特徴は、プロジェクトの最初から最後まで一貫して関わることができる点です。電気工事は、工場建設から機械の設置、システムの細部に至るまで、全行程に一貫して携わることができる点が大きなやりがいです。

たとえば、配管や設備そのものがどのように機能するかを理解し、動作のタイミングやバルブの開閉制御など、機能を満たすところまで責任を持つ必要があります。また、完成後のメンテナンスを通じて、お客様との信頼関係を長期的に築けることも魅力のひとつです。感謝の言葉とともに新たな仕事を依頼されることが、やりがいにつながっています。

ーー社員教育にはどのように取り組んでいますか?

上田宗輝:
弊社では、社員全員が電気工事施工管理技士1級(国家資格)を取得しています。他社では資格を持たないまま現場を担当するケースがありますが、弊社は全員資格取得者です。社員にとっては厳しい面もありますが、それがお客様からの信頼に直結しているのです。

資格は技術者としての自信やお客様の信頼を高めるために不可欠な要素です。しかし、資格をとるだけでは不十分で、その知識を現場で活かし、経験を積み重ねることが重要だと考えています。

ーー社長としての価値観や考え方について教えてください。

上田宗輝:
社長に就任した際、まず社員たちと「所信」を共有しました。それは、「社会に必要とされなければ会社は存続できない」という考え方です。私たちは、営業に注力して仕事を受注するのではなく、お客様から「選んでよかった」と感謝されて次の案件につなげることが最も重要だと考えています。

また、採用においても入社した社員が、「この会社を選んでよかった」と思えるような環境を整えることが必要です。それが実現すれば、社員が会社の魅力を語り、新しい人材を自然に引き寄せてくれるようになります。逆に、社員が疲弊してしまう環境では、いくらお客様に良い顔をしても長続きしないでしょう。社員とお客様の双方が「選んでよかった」と感じられる会社を目指しています。

また、「未来の自分に誇れる仕事を」という企業理念を掲げています。これは、自分自身に誠実であり続け、正しい道を選ぶことを意味します。仕事を通じて社会に貢献し、未来の自分が胸を張れる選択をすることが、社員個人の成長だけでなく、会社全体の成長にもつながると信じています。

「まちの重電機メーカー」が描く地域の未来

ーー貴社が目指す企業像について教えてください。

上田宗輝:
私たちは「まちの重電機メーカー」という言葉で、自社の役割を表現しています。これは、地域社会に欠かせない存在として、電力インフラ整備を通じて地域を支えるという意味です。「重電機メーカー」と表現したのは、弊社が電気屋だからです。地方では今後、人口減少や税収不足の影響で、インフラ設備の老朽化による問題が懸念されています。

私たちのような会社がその課題を補完することで、地域の生活を支えることができると考え、それがこれからの私たちの使命だと捉えています。そのためには、現状に甘んじることなく、新しいことに挑戦し続ける姿勢が非常に重要だと考えています。

ーー今後の目標や挑戦について教えてください。

上田宗輝:
私の目標は、弊社を本当の意味での「まちの重電機メーカー」に成長させることです。これは簡単な道のりではありませんが、社員一人ひとりが力を発揮できる環境を整え、技術力と提案力をさらに高めることで実現可能だと考えています。また、社員数を増やし、より多くの案件に対応できる体制を築くことで、地域社会への貢献度を一層高めていきたいと思います。

編集後記

上田社長へのインタビューで特に印象的だったのは、「人」に対する深い思いだった。それは、お客様、従業員、そして地域に向けた温かく丁寧な配慮に支えられたものだ。「未来の自分に誇れる仕事」や「選ばれる会社」を目指す上田社長のビジョンには、人の成長と相手を思いやる心が不可欠であることを改めて感じた。

同社が創業以来「選ばれる会社」であり続けている理由は、関わる多くの人への細やかな気配りと、積み重ねてきた信頼にあると実感した。これからも地域インフラ事業に挑み続ける株式会社トクデンは、地域社会にとって欠かせない存在であり続けるだろう。「町の充電器メーカー」という未来像を掲げる同社の取り組みが、岐阜県を超え、日本各地に希望を届けていくことを期待している。

上田宗輝/1979年、岐阜県生まれ。富山県立大学卒業。2005年にマツダ株式会社に入社し、その後、2009年に株式会社トクデンに入社。2017年に代表取締役社長に就任。