※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

1947年の創業以来、金属製屋根や外壁の施工を中心に建設業界を支えてきた株式会社ダイムワカイ。長年培った施工技術と自社開発の金属屋根材『パーフェクトルーフ』を強みに、全国の商業施設、公共施設などを中心に金属屋根・外壁工事で実績を重ねている。現在、同社は次世代へ向けた組織変革の過渡期にある。職人不足を見据えた独自の評価制度「大夢道」の運用や、属人化の脱却を目指すDX推進など、取り組みは多岐にわたる。厳しい現場修行を経て同社を率いる代表取締役社長の石川孝一氏に、これまでの歩みと未来への展望を聞いた。

飛び込み営業から屋根の上へ「ゼロから1」をつくる現場修行

ーーまずは、ご自身のキャリアの原点について教えていただけますか。

石川孝一:
大学卒業後、建築資材メーカーに入社し、京都の営業所に配属されました。先輩社員が既存の得意先を担当する中、新人だった私は「新規開拓」のみを命じられたのです。毎日さまざまな業者を訪問する飛び込み営業でしたが、当初は門前払いが続き、精神的にも非常に過酷な日々でした。しかし、この相手にされない悔しさと「ゼロから1」をつくる辛さを味わった経験が、現在の経営者としての基盤を形作っています。

ーーその後、現在の株式会社ダイムワカイへ転職されたのでしょうか。

石川孝一:
20代半ばにご縁があって当時の副社長(後の会長)から声をかけられ、東京営業所を開設するタイミングで転職しました。しかし、当時の私は資材営業の経験しかなく、工事の現場について全く知識がありませんでした。副社長に相談したところ、「仕事が分からなければ、お客様に説明もできない。職人と一緒に工事をしろ」と諭されました。それから実際に屋根に登り、職人と共に荷物を運び、屋根材の留め方をはじめとする現場の基礎を徹底的に叩き込まれました。職人と一緒に汗を流すうちに次第に工事の仕組みが理解できるようになり、お客様にも自信を持って説明できるようになったのです。

「大夢道」で技術を可視化し若手のやりがいを創出

ーーそうしたご自身の苦労もふまえ、社員教育や評価に関してどのような取り組みをされていますか。

石川孝一:
業界全体で職人の減少が見据えられる中、社内で職人を育成しようという前会長の提案から始まったプロジェクトがあります。かつては「親方の背中を見て覚える」のが当たり前でしたが、多忙な現場では指導の時間が取れず、若手も「どうすれば技術や給与が上がるのか」と不安を抱えてしまいます。そこで、技術の習得度を柔道や剣道のように十級から段位まで格付けした独自の評価制度「大夢道」を創設しました。年に1回、学科と実技の試験を実施し、到達レベルを明確に「見える化」しています。

ーー階級がそのまま評価につながる仕組みなのでしょうか。

石川孝一:
その通りです。階級に応じて給与体系が明確に定まっているため、入社年次に関わらず、努力次第で若手が先輩の給与を追い抜くことができます。この若手にやりがいを生み出す教育・評価制度は、2022年に厚生労働省の「グッドキャリア企業アワード」でイノベーション賞を受賞し、公的にも高く評価していただきました。

圧倒的な性能とデザイン性 女性チームが広める『パーフェクトルーフ』

ーー貴社の主力製品『パーフェクトルーフ』の強みについて改めて教えていただけますか。

石川孝一:
製品の最大の強みは、「絶対に漏水させない」という点にあります。一般的な屋根は釘やビスで強制的に留めるため、下葺き材の防水シートに穴が開き、漏水リスクが生じます。対して『パーフェクトルーフ』は釘やビスを一切使わず、専用防水シートと特殊テープによる「面」での接着を採用しています。穴を開けないため漏水リスクが極めて低く、台風などの強風にも非常に強いのが特徴です。

弊社の事業割合は一般的な工事が大半を占めますが、この圧倒的な性能を持つ『パーフェクトルーフ』を通じてご縁ができた取引先も数多く存在します。現在では「『パーフェクトルーフ』=ダイムワカイ」というブランドが確立されつつあり、今後さらに強化していきたい領域です。

ーー他社との差別化を図る上で、製品の性能以外にどのような強みがあるのでしょうか。

石川孝一:
現場で屋根の形状に合わせて寸法を切り出し、貼り合わせていくため、ドーム状や複雑な曲線を持つモニュメント的なデザイン性の高い建物の屋根にも対応可能です。こうした柔軟性に加え、先述した確かな防水性から、「絶対に漏水させたくない」「見せる屋根を作りたい」という設計事務所様から多くのご依頼をいただいています。

また、こうした設計事務所への提案営業は、前会長の時代から続く方針として「女性チーム」が主導しているのも弊社の大きな特徴です。当時は業界特有の偏見から厳しい言葉を投げかけられることもありましたが、彼女たちは強い意志を持って取り組み続けてくれました。現在では、彼女たちの粘り強い提案そのものが、「ダイムワカイ」ブランドの顔となっています。

業界が四苦八苦するDXにこそ勝機 目指すは強固なブランドの確立

ーー今後のビジョンや、注力されている取り組みについてお聞かせください。

石川孝一:
現在、属人化からの脱却に向けたDX推進の3か年計画を進行中です。これまで、材料の発注や見積もりは経験豊富なベテランの「勘」や「個人技」に頼る部分が大きく、担当者の不在がそのまま経営リスクにつながる課題がありました。この工程をAIやBIM(※)を活用したシステムに置き換え、自動化・平準化することを目指しています。

(※)BIM:Building Information Modelingの略。建物の3次元デジタルモデルに、素材やコストなどの属性データを追加した建築情報のデータベースのこと。

ーー建設業界においてDXを推進するにあたり、どのような点に課題を感じていらっしゃいますか。

石川孝一:
非常に難易度が高く、業界全体がDX化に四苦八苦しているのが実情です。しかし、皆が苦戦している領域だからこそ、あえて挑戦していきたいという強い思いがあります。投資は伴いますが、他社が踏み込めない領域をいち早く開拓できれば、企業として確実に次のステージへ進むことができます。

そして最終的に目指すのは、「多少価格は張っても、ダイムワカイに任せれば工期通りに美しく仕上がる」という強固なブランドと信頼を業界内で確立することです。誰に聞いても均一な答えが返り、常に高いクオリティの施工ができる組織。この平準化こそが、特定の個人に依存しない弊社の真の力になると確信しています。

編集後記

「ゼロから1」をつくる過酷な現場修行からキャリアを積み上げ、独自の視点で会社を牽引する石川氏。インタビューを通じて印象的だったのは、長年の経験に甘んじることなく、DXや独自の評価制度の導入で組織をアップデートしていく柔軟な行動力だ。「業界が四苦八苦しているからこそ勝機がある」と語る前向きな姿勢に、次世代を見据える経営者としてのブレない軸を感じた。技術を可視化する組織力と『パーフェクトルーフ』という確固たる武器が交わったとき、同社のブランドはさらに揺るぎないものになるはずだ。

石川孝一/1961年千葉県生まれ。神奈川大学卒業後、建築資材メーカーに就職し、3年後に株式会社ダイムワカイへ入社。2017年に代表取締役社長に就任。現在は社内DXの推進に注力している。