
住宅用階段や手すりなどの製造で暮らしの安全と、デザイン性の高さで住まいの美しさを支え続けるカツデン株式会社。同社は複数の事業部を抱える親会社から分社し、建材事業に特化するために設立された。
東京オリンピックで使用されたフェンスを製作した技術力と、ECサイトでの価格競争力を強みに、お客様視点の製品開発に取り組んでいる。「楽しく働く」を経営の中心に据え、理念の共有と変化への対応を重視する姿勢で、着実な成長を続ける同社の代表取締役、坂田清茂氏に話をうかがった。
業界の特性をふまえた経営をめざして分社化に至る
ーー社長就任のいきさつをお聞かせください。
坂田清茂:
私は、父が経営する旧カツデン株式会社に入社し、20年近くサラリーマンとして働いていました。旧カツデンは、もともとテレビアンテナを製作する会社でしたが、時代の変化とともにアンテナ販売、家電卸売、建材メーカーへと事業を広げていきました。
結果として、社内に家電業界と建材業界、商社とメーカーといった異なる業界・業態の事業部が混在し、休日や給与体系、社風の違いなど、さまざまな矛盾が生じるようになっていったのです。
そこで、各事業部がそれぞれの特性に合った経営を行うことができるようにと、事業部の分社化を社長に進言し、当時、建材部門のトップだった私が分社したカツデンアーキテック株式会社(現:カツデン株式会社)の社長に就任することとなりました。
成長は最優先事項ではなく、結果としてついてくるもの
ーー現在の事業内容について教えてください。
坂田清茂:
弊社は建材メーカーとして、主に住宅用階段や手すりを製造・販売しています。デザイン性と安全性を両立させた製品を提供しており、2020年の東京オリンピックでは、トライアスロンの競技用フェンスなどをご用命いただきました。なお、弊社のショールームでは、お客様に製品の品質の良さや安全性、デザイン性の高さなどを体感していただくことができます。
ーー経営にあたって大切にされていることは何でしょうか?
坂田清茂:
私たちの信条は、「理念の共有」と「変化への対応」です。理念や目的、考え方をできるだけ多くの社員と共有することによって、同じ方向をめざして仕事に取り組むことができると考えています。そのために、理念はわかりやすく、長期的な視野に立ったものであることが重要です。
極端に言えば、1000年経っても変わらないような理念を旗印にしなければならないと思っています。一方で、変化への対応も重要です。現状に満足せず、常に「次はどうするのか」を考えて変化していくことも、停滞せずに組織を発展させていくための重要な要素ではないでしょうか。
とはいえ、成長は目的でなく結果としてついてくるものです。私にとって最も重要なのは社員が楽しく仕事をすることであって、成長が一番というわけではありません、成長を優先して社員に負担をかけるのではなく、社員が楽しく業務に取り組むことが、結果として成長につながっていくのだと考えています。
ーー製品開発における貴社のこだわりをお聞かせください。
坂田清茂:
私は、「売れない良い商品」というのは、この世に存在しないと思っています。良いものなら売れますし、売れないものはどこかに問題があるのです。品質というものはメーカーが決めるのではなく、お客様が決めるものだと考えています。
それゆえにお客様が求める以上のことをしても、満足度につながらない場合もあるでしょう。お客様の求めるもの、ご納得いただけるものをきちんと把握し、ニーズに合った商品を、いかに適正な価格で形にしていけるかが、私たちの大きなテーマです。
全国の地場の工務店の方々にもカツデンの魅力を知ってほしい

ーー今後の展望を教えてください。
坂田清茂:
複数の大手ハウスメーカーとお取り引きがありますが、今後はさらなる販路の拡大にも力を入れていきます。現在、弊社の営業部が総力をあげて、地域の大手企業だけでなく、全国各地の工務店にも、弊社の商品の魅力をお伝えしているところです。商社や販売代理店との連携も強化し、効率的な営業活動をしていきたいと思っています。
また、ECサイトの売上を上げることも、今後の目標のひとつです。ECサイトでは、規格に則った階段製品を販売しており、主にDIYユーザーや地域の工務店にご利用いただいています。弊社から直接購入できますので、手数料が不要な分、通常の半額、もしくは3分の1程度でお求めいただけることが特徴です。
加えて、新商品にも力を入れ、現在はエクステリア(※)製品の開発を進めています。他社に追随するのではなく、弊社ならではの製品を提供することが重要です。カーポートやフェンスなど、住宅の外回り商品を拡充してハウスメーカーにご提案するなど、さらなる事業拡大を目指していきます。
(※)エクステリア:庭やウッドデッキなどを含んだ、家の外の空間のこと。
自分たちの仕事で人の役に立てたと実感する喜びがある
ーー入社を検討している人たちにメッセージをお願いします。
坂田清茂:
売りたくないものを売る会社にはなりたくないと思っています。やはり、自分たちの仕事がお客様の役に立ったという実感こそが、楽しさにつながっていくと思うのです。
楽しさというのは、楽をすることではありません。昨今の大谷翔平選手の努力と成功を見て、たゆまぬ努力の先にこそ真の楽しさがあるのだと改めて感じました。弊社もお客様に喜んでいただける製品を提供するために、努力を続けていきたいと思います。お客様のために努力できる方、楽しく仕事をしたい方に来ていただけたら嬉しいですね。
編集後記
「売れない良い商品は存在しない」という言葉に、メーカーとしての揺るぎない自信と、お客様視点の謙虚さを感じた。品質はお客様が決めるという考えのもと、ニーズに応える製品を適正価格で提供し続ける。そうした地道な努力の積み重ねが、分社後の同社を現在の成長へと導いてきたのだろう。社員が楽しく働ける環境を重視する経営姿勢からは、持続的な成長への確かな道筋が見えるようだった。

坂田清茂/1962年、東京都生まれ。東洋大学工学部建築学科を卒業後、カツデン株式会社に入社。営業、開発、品質管理など幅広い部門を経験し、積水化学工業株式会社住宅総合研究所にてゲストエンジニアとしても従事。1994年に建材事業務の美里工場生産管理部長として工場改革を主導。その後、常務取締役ビル建材本部長、建材統括本部長を歴任し、2003年よりカツデンアーキテック株式会社(現:カツデン株式会社)代表取締役に就任。