※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

株式会社エブリーは、レシピ動画メディア「デリッシュキッチン」やファミリー向け動画メディア「トモニテ」、ビジネスパーソン向け動画メディア「TIMELINE(タイムライン)」などを運営している会社だ。

同社の代表取締役社長CEOを務めるのが、動画市場の可能性にいち早く着目した吉田大成氏だ。今回、吉田氏に同社のメディアが人々から注目されている理由や、ほかにはないサービスの魅力などを聞いた。

人々のライフスタイルを支える新サービスとして、動画メディアに注目

ーー今までの経歴を教えてください。

吉田大成:
2005年にヤフー株式会社へ入社し、2006年にグリー株式会社へ転職しました。ヤフーで働いた期間はわずか1年半でしたが、多くのサービスに携わり、非常に密度の高い経験をさせてもらったと思います。当時20名ほどしか社員がいなかったグリーへ転職したのは、ヤフーを脅かすような会社で挑戦してみたいと思ったからです。

グリーへ入社して最初に取り組んだのが、KDDIと共同で、携帯電話向けSNSを開発する事業です。携帯でSNSを見る人が増え始めていた時代の流れもあって、この事業は非常に上手くいき、その後もソーシャルゲーム領域などさまざまな事業に関わりました。

こうした経験を積む中で感じたのが、より生活の支えになるようなインターネットの使い方が存在するはずだということです。たとえばインターネットを使って役に立つ情報を発信するなど、人々のライフスタイルをサポートする事業に興味を持つようになりました。

また、当時はまだ動画で情報発信をしている人自体少なく「動画を使ってプロが作成したコンテンツを、誰もが楽しめる世界をつくりたい」という思いで起業しました。

ユーザーの意見を第一に受け止めながら、日々改善を続けているのが強み

ーー貴社のサービス内容について説明をお願いします。

吉田大成:
僕たちはメディアを使ったサービス運営をしており、その中で最も大きなサービスがレシピ動画メディア「デリッシュキッチン」です。レシピ動画の配信だけでなく、食品スーパーと連携して、店内のDXを進めるリテールメディアの取り組みも行っています。

たとえば「デリッシュキッチン」と提携する食品スーパーでは、各売り場にディスプレイモニターを設置し、テーマに応じたレシピ動画を配信することで、売り場をより魅力的にし、来店客の購買意欲を高める効果が期待できます。

2024年12月には、AIに話しかけるだけで最適なレシピを導き出せる「AI料理アシスタント」の機能も「デリッシュキッチン」に追加しました。ただのレシピ動画メディアだと思われがちですが、こういった幅広い取り組みを行う「食のプラットフォーム」を僕たちは運営しています。

ーーサービスの強みはどういった点にありますか。

吉田大成:
1つは、「つくってみたい」と思ってもらえる動画を配信していることです。具体的には、動画の最初に料理の完成カットを載せることで「美味しそう」「食べてみたい」と思ってもらえる工夫をしています。また、社内に料理のプロが在籍しており、プロ監修のもと調理の仕方や衛生面などを発信している点も強みです。

「デリッシュキッチン」を開設して1ヶ月はほぼ誰からも視聴されませんでしたが、料理の完成写真の掲載に加えて動画視聴時間を計測するなど、さまざまな工夫を凝らしたことで大規模なメディアに成長しました。

また、僕たちはユーザーの意見を最も大切にしており、ユーザーへのインタビューはもちろん、データを見ながらユーザーの動向を分析しています。データを検証し続け、日々新しいことにチャレンジしている点が大きなポイントです。

業界ナンバーワンになり、日本人全員にサービスを使ってもらうのが目標

ーー求める人物像を教えてください。

吉田大成:
弊社のバリューに、「ユーザーの半歩先を形に」があります。世の中にすでにあるものではなく、まだ存在していないものをつくっていくことが、僕たちベンチャー企業の使命です。この使命を達成するために、新しい領域で年齢問わずチャレンジを続けたい方、次の時代のスタンダードをつくりたい方を求めています。

ーー今後の注力テーマを聞かせてください。

吉田大成:
先ほどお伝えした「デリッシュキッチン」で店内をDXするリテールメディア事業と、AI料理アシスタント事業が、今後も注力していきたい取り組みです。また、食に関する一気通貫のデータを弊社で保有できるような仕組みをつくりたいと思っています。たとえば、どんな食材を買って何の料理を作って食べたのか、それによって体重が増えたのか減ったのかといったデータを想定しています。

より多くの食に関するデータを保有することで、メーカーや小売会社、一般消費者の方々の食に関する課題を解決するようなサービスを提供できるようになるのではないかと思っています。最終的な目標は、メディアとしてもサービスとしてもナンバーワンをとり、日本人全員が僕たちが提供する何かしらのサービスを使っているという状態をつくることです。

編集後記

株式会社エブリーでは、おにぎりの写真や画像をSNSに1枚投稿すると、給食5食分に相当する寄付ができる「おにぎりアクション」(NPO法人TABLE FOR TWO International主催)にサポーティングパートナーとして参加するなど、食を通じた社会貢献の取り組みも行っている。

同社の取り組みからは、ただ会社が儲かれば良いのではなく、事業を通して社会貢献をしたい吉田社長の価値観が感じられる。信念を持って事業に向き合う吉田社長率いるエブリーのサービスが、日本人全員に届く日はきっと近いだろう。

吉田大成/2005年ヤフー株式会社入社、2006年グリー株式会社入社。2010年同社執行役員、2012年同社取締役執行役員常務に就任し、日本事業全体を統括。2015年株式会社エブリーを創業。2017年、「Forbes JAPAN 日本の起業家ランキング2018ライジングスターアワード」第1位ほか多数受賞。