※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

大阪市港区にある水族館「海遊館」と複合ショッピングモール「天保山マーケットプレース」の運営会社として、1988年に設立された株式会社海遊館。オープン以来、国内外から多くの人が訪れる「海遊館」の来館者数は累計8,500万人を突破した。2024年に代表取締役社長に就任した濱元博之氏に、施設の魅力や今後の展望をうかがった。

「ものづくり好きの少年」が大人気レジャー施設の社長になるまで

ーーまずはご経歴をお話しいただけますか。

濱元博之:
子どもの頃からものづくりが好きで、中学時代は「造船技師になること」を夢見ていました。大学では将来性を考え土木工学を専攻し、就職にあたっては、沿線開発を含めて幅広い分野の「ものづくり」に携われる近畿日本鉄道株式会社を志願しました。

入社後は、線路を保守する保線区を経験したのちに本社へ移り、約10年にわたって鉄道構造物の調査計画や、高架橋・トンネルの耐震補強計画等に携わりました。新任課長として、大型商業施設の建設工事を担当したことも印象深いですね。その後、ゼネコンの営業部門や広告会社へ出向し、歴史文化事業、建設コンサルタント会社の社長業などを経験し、現職に至ります。

ーー仕事に対する心がけもうかがえればと思います。

濱元博之:
与えられた仕事に対して、常に真剣に取り組むことはもちろん、「個人的な目標」は簡単に達成できないよう少し高めに設定していました。周りにも宣言した上での、高度な目標を達成する姿勢が、上層部からの評価につながったといえるでしょう。

単身赴任で東京にいた頃、内装・サイン工事の営業を担当していました。そのとき、大手町地区の再開発計画を知り、難易度は相当高かったのですが、関係する企業やゼネコンに精力的に営業活動を展開し、工事の受注を実現させたこともあります。幅広い業務を経験する中で、高いハードルにも挑み、自分の信じる道を突き進んできたからこそ今があるといえます。

世界最大級の水族館「海遊館」と体感型展示施設「NIFREL」の魅力

ーー事業内容や施設の魅力をお聞かせください。

濱元博之:
「天保山ハーバービレッジ」の中核施設として、大型水族館の「海遊館(かいゆうかん)」と複合ショッピングモールの「天保山マーケットプレース」を運営しています。

2015年には万博記念公園「EXPOCITY」内に、水族館・動物園・アートを融合した「NIFREL(ニフレル)」という体感型展示施設をオープンしました。多様性をテーマにした「生きているミュージアム」として、生きものを身近に感じられる空間となっています。

「海遊館」のコンセプトは、「すべてのものは、つながっている。」です。「地球とそこに生きるすべての生きものは、互いに作用しあう、ひとつの生命体である」という考えのもと、さまざまな生きものたちをなるべく生息環境に近い形で展示しています。

常設展示の中でも、建物の中央にある「太平洋」水槽は圧倒的なスケールを誇ります。最上階から螺旋状に作られた回廊を下っていくと、表層から海底に至る各水深を体験できる展示方法もユニークです。上から見下ろしたり、下から見上げたり、生きものたちのいろいろな表情を楽しめると同時に、自然の大切さを感じていただけることでしょう。

ーー経営者としての取り組みもお話しいただけますか。

濱元博之:
かねてからの「海遊館」の長期延命化計画や、管理部門の体制強化・人事評価制度の見直しを適切に進めることが私のミッションだと考えています。お客様に喜ばれる取り組みはもちろん、スタッフの働きやすさも工夫することで、各施設によりいっそう活気があふれるはずです。

弊社で活躍しているのは、「生きものと関わること」が大好きで、日頃から自然との共生や環境問題に対して「自分たちにできること」を考えている人たちです。社員が自己実現できる環境づくりは、仕事のモチベーションや顧客満足度の向上にもつながるといえます。

新たな経営者としては、若手のスタッフたちが積極的に発言・提案できる風土づくりも進めていき、これまで以上に社内に一体感を生み出したいところです。

あふれるアイデアで「進化」と「再現」を続けるスポットへ

ーー最新の見どころや今後の展開をアピールいただければと思います。

濱元博之:
「海遊館」で近年開催された企画展・特別展は、飼育係員だけではなく各部署からもアイデアを募り、プロジェクトを組んできたものです。2024年11月に生まれ変わった「グレート・バリア・リーフ」水槽にも、スタッフのアイデアが活かされています。

オーストラリアのサンゴ礁を再現した水槽ですが、開業した35年前と今では現地の状況が異なります。「現地調査した上で再現するべき」という若手スタッフの意見を採用したことで、オーストラリア観光局の方からも「再現性が素晴らしい」と高評価をいただきました。サンゴへの光の当たり方まで再現していて、とても見ごたえのある水槽となっています。

「海遊館」と「天保山マーケットプレース」は、2025年に開業35周年を迎えます。「NIFREL」の10周年記念事業と共に、さまざまな企画を考えているのでぜひご来館ください。

編集後記

施設のリニューアルや多彩な企画展がたびたび話題となる「海遊館」。濱元社長は「完成後も可能な限り試行錯誤を続けていくことが大切だ」と語った。今も昔も常に高みを目指している彼の姿勢と、進化を止めないレジャースポットの親和性は非常に高く、株式会社海遊館はこの先も多くの新体験を私たちにもたらしてくれると期待が募る。

濱元博之/1961年生まれ。大阪大学土木工学科を卒業。1985年、近畿日本鉄道株式会社(現:近鉄グループホールディングス株式会社)に入社。2017年、大日本土木株式会社の執行役員に就任。近鉄軌道エンジニアリング株式会社の常務取締役、全日本コンサルタント株式会社の代表取締役社長を経て、2024年に株式会社海遊館の代表取締役社長に就任。