※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

東京都内を中心にヘアサロン15店舗を展開する株式会社GARDEN。同社は「一流の美容師を育てる」という明確なビジョンのもと、GARDENでしかできないような育成環境を構築し、20代で年収1,000万円を稼ぐ美容師の存在を育む。創業18年目を迎え、セカンドブランド展開も開始した同社の成長戦略について代表取締役会長の須崎氏に話をうかがった。

後輩への思いが後押しした独立への一歩

ーー起業のきっかけはどのようなものでしたか?

須崎勝己:
私自身は、最初から独立しようと思っていたわけではありませんでした。美容師としてお客さまを担当しながら、毎年入ってくる後輩を指導するなかで、徐々に一流の美容師を育てることに関心が向くようになっていったのです。そうした思いをかたちにするために、独立して弊社を創業しました。仲間たちと新しいブランド「GARDEN」を立ち上げ、ヘアサロンをメインに展開し、現在に至っています。

ーーサロン経営に加えて展開しているEC事業についても教えてください。

須崎勝己:
弊社のEC事業は創業初期からあるもので、プライベートブランドのシャンプーやヘアケア商品を中心に展開しています。ありがたいことに、現在は三越伊勢丹さまでも取り扱っていただいております。

ECやプライベートブランドの展開は、同業者からも継続が難しいという話をよく聞きます。サロン外での販路開拓や商品開発も必要ですし、外販として結果を出す必要があるため、難しいのは確かです。

弊社がこうして事業を継続できているのは、商品開発から販路開拓まで、一つひとつ丁寧に積み上げてきた成果だと捉えています。新たな挑戦として、来期は高価格帯のブランドや、さまざまな商品を展開していきたいと考えています。

メジャーリーガー級の美容師を育てる熱い環境

ーー続々と新店舗を展開するなかで、集客はどのような工夫をされていますか?

須崎勝己:
集客のメインはInstagramですね。弊社のInstagramは、写真も含めて美容師一人ひとりが自身で運営しています。店舗や美容師の様子もわかり、現在ではご予約の半分以上をInstagramからいただいています。

カットの技術もそうですが、人の目を引き付けるデザイン、写真の撮り方、発信のコツなども重要な要素です。施術はもちろん、美的センスの高い先輩たちに囲まれて、日常的に優れたデザインに触れているうちに、感性が磨かれていきます。弊社のInstagramが常に高い人気を集めているのは、この好循環のおかげです。

ーー美容師の育成方針についてお聞かせください。

須崎勝己:
私はしばしば美容師の育成をスポーツにたとえています。私が目指しているのは、「野球経験者」ではなく「メジャーリーガー」のレベルです。そのための努力を楽しめるような情熱がなければ、弊社の教育についてくることは難しいかもしれません。しかし、一流の美容師になりたいという強い思いがある方にとっては、非常にいい環境だと思っています。

また、弊社では社員の成長プロセスを、お客さまとの関係構築になぞらえて設計しています。お客さまが段階を踏んでサロンのファンになっていくように、最初は基礎的な技術習得から始まり、徐々に「GARDEN」ブランドの本質を理解し、最終的には会社の理念に深く共感できる存在へと成長していく。

そうした流れを確立するために、人材育成における目標を可視化して具体的なアクションプランを設定し、段階的な成長を促す仕組みを構築中です。社員が自身の成長を実感しながら、より高みを目指せる環境づくりを進めています。

美容業界で突出したブランドをさらに磨き、新たなビジネスモデルへ

ーー今後はどのような部分に注力されますか?

須崎勝己:
経営者としての数値目標ももちろん重要ですが、今一番注力したいのは前述した育成の仕組みづくりです。これまでは人材育成をカルチャーに頼っていた部分が大きかったので、今後はより体系的な方法で人材を育てる必要があると感じています。他にない高いレベルで施術できる人間が何人もいて、業界内外から見ても「やっぱりGARDENは別格だよね」と言われるような組織にするのが目標です。

ーー育成が実を結んだ後の展開についてはどのようにお考えですか?

須崎勝己:
現在もすでに高いレベルで施術ができて、20代で年収1,000万を稼いでいるメンバーが在籍している状態ではあります。若手の育成と並行しながら、今後はそうしたメンバーを基準として、店舗をもつ幹部格の社員を増やしていくつもりです。実際にセカンドブランドというかたちで、フランチャイズ店舗も郊外に出し始めています。

一方で、弊社の財産は何といっても美容師のスキルや感性であるため、高いスキルをもった人材にはマネージメントのことは気にせず、「GARDENの美容師」として、スキルを活かして活躍してほしいですね。そのためには、施術とマネージメントを分けたビジネスモデルも必要なので、そのための新たな構想もすでに練っています。ぜひご期待ください。

編集後記

経営者でありながら、現場の美容師としての視点も大切にし続ける。須崎社長が語る「経営者として数値目標を追うよりも、憧れの美容師を育てることが私の仕事」という言葉には重みがあった。「昔かたぎの考え方かもしれない」と自身で表現する経営哲学は、むしろ今の時代だからこそ強烈な光を放っているように見える。

須崎勝己/1966年、茨城県生まれ。真野美容専門学校卒業。東京都内のサロン勤務を経て、2006年に株式会社GARDENを設立。都内を中心に15店舗を展開。