
株式会社RYコーポレーションは、レストランの「料理」と従業員の「人間力」で、街に活気をもたらし、心の豊かさを育む企業として挑戦を続けている。フランチャイズからスタートし、一貫して大切にしてきた信念。それは「食」を通じて人々の喜びをつくり出すことだ。同社の代表取締役CEOである横山藤雄氏に、創業までの道のりや企業理念、未来へのビジョンについてうかがった。
外食業に挑んだ社長の決断とは
ーー創業するまでの経緯を教えてください。
横山藤雄:
精肉店を営む家庭で生まれ育った私は、子どもの頃から商売のおもしろさを肌で感じていました。25歳で小売業での起業を決意しましたが、将来性への不安もあり、いったん見送りました。その頃、以前から交流のあった大手企業の社長から声をかけられ、その会社でまず経験を積むことを選んだのです。
その会社が新たに外食産業に参入することになり、事業責任者を任されました。しかし、外食産業は投資が大きくリターンが少ないため、3〜4店舗を立ち上げたものの成功は難しく、本業の小売業に悪影響が出る懸念から、外食事業は売却することになったのです。このとき、事業責任者として雇用したスタッフを守るため、自ら事業を引き継ぐことを決意し、独立に踏み切りました。
もともとは、小売業で起業しようと考えていましたが、外食業にはお客さまの笑顔をすぐに見ることができるという魅力があり、これが起業のきっかけとなりました。すばらしい社長と出会い、一緒に事業に携わらせていただいたことは、本当に幸せなことでした。
コロナ禍の危機を乗り越えた先に見えた新たな展望

ーーRYコーポレーションの事業内容を詳しく聞かせてください。
横山藤雄:
東京を中心に千葉、埼玉、茨城、神奈川、愛知で52店舗、レストランを経営しています。業態も、イタリアン、スパニッシュ、フレンチ、ハワイアン、鉄板焼き、カフェ、居酒屋など非常に多様です。
飲食業は料理の美味しさが生命線です。これは最も大切にしている点です。加えて従業員の人間性も弊社の大きな強みだと思っています。特に店舗のシェフは、優秀な人材が口コミで集まり、実力のあるメンバーがそろっています。
企業理念として「感動創造」を掲げているように、お客様の期待を超える料理をつくるシェフばかりです。採用にもこだわっていますが、相手の期待を上回る商品やサービス、そして空間を提供できる人たちと仕事ができていることは、本当に幸運だと感じています。
ーー起業してから、苦労した経験や印象に残っている出来事はありますか?
横山藤雄:
今期、19期目ですが、やはり一番大変だったのはコロナ禍です。これまでにも、事前調査が不十分で新規出店した店舗を数年で閉めるなど、多くの失敗を経験してきました。しかし、売り上げが右肩上がりに成長している最中に、何の前触れもなく突然訪れたコロナ禍は、経営的にも非常に厳しいものでした。
いつ終わるかもわからない状況で、飲食店に対するイメージが下がり、お酒が提供できないことや営業時間の制限も重なり、最終的には十数億円の損失を被りました。あの経験に比べれば、大抵のことは乗り越えられると感じています。
今振り返ると、コロナ禍を乗り越えたことで、オンライン会議や管理部門のテレワーク導入など、新たな働き方や事業展開が生まれるという良いこともありました。また、弊社のECサイトは、コロナ禍で来店者数が減少したときに力を入れ始めました。レストランで提供している料理を冷凍してお届けし、お客様が自宅で解凍して楽しめるように工夫したのです。
現在ではコロナに関係なく、なかなかレストランに足を運べないお客様からも、自宅で美味しい料理が楽しめると感謝のお声をいただいています。ECサイト限定の商品や、サブスクリプション形式でオリジナル商品を届ける新サービスなど、次の展開を計画しています。二度とあの状況を経験したくありませんが、すべての出来事に感謝しながら、日々取り組んでいます。
感動創造の先に見据える100年企業
ーー将来の展望はどのように考えていますか?
横山藤雄:
企業として年々成長する中で、お客様からの期待値も高まっていると感じています。まず、30期までに売り上げ100億円をマイルストーンとして掲げています。将来にわたって、世の中に貢献できる企業として成長させていきたいですね。
そのためには、現在取り組んでいる入社年次や役職ごとの研修を継続し、社員のスキルアップを図っていきます。「飲食業は人財こそが強み」で、人の成長なくして会社の発展はありません。プロとして持つべき技術や能力の向上を、座学だけでなく、OJTを通じても強化しています。
また、女性社員の増加に伴い、ダイバーシティへの取り組みにも注力しています。今期から女性経営者を顧問に迎え、将来的には女性幹部役員の登用も行う予定です。
弊社の使命は、食を通じて人々の心を豊かにすることです。「店づくりは街づくり」と社員によく伝えており、店舗を通じて街を明るく活気づけ、街に住んでいる方々に人生が楽しくなったと思ってもらえるような店を今後もつくり続けていきます。最後に、私の強みは「ぶれないこと」です。創業時の経営理念である「感動創造」を、今後も変わらず大切にしていきます。
編集後記
期待値を超える感動をつくり出し、お客様の人生を豊かにする株式会社RYコーポレーション。横山氏の言葉には、従業員への揺るぎない信頼が感じられる。今後も同社の店舗が、シェフの腕前や従業員の人間性を通して、訪れる人たちの心に灯りをともしていくことは間違いないだろう。

横山藤雄/1975年、茨城県生まれ。高校卒業と同時に、食肉卸売業関連の企業に入社。2006年に株式会社RYコーポレーションを設立し、代表取締役CEOに就任。