※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

関東エリアで3,400棟の建物管理を手がける毎日興業株式会社。同社は半世紀にわたり、オフィスビルやマンション、病院、学校など、人々の生活を支える建物の管理を一手に担ってきた。約2,300人の自社スタッフと24時間稼働の管理センターを擁し、地域に密着したきめ細やかなサービスを提供している。

創業50周年を迎え、新たなステージへと歩みを進める同社の舵取りを担う代表取締役社長の田部井良氏に、その軌跡と未来への展望をうかがった。

社長の息子という立場だからこそ選んだ最も厳しい道

ーー貴社に入社された経緯をお聞かせください。

田部井良:
弊社は私の父が創業した会社です。将来は経営を担うことも視野に入れていましたが、就職活動中に父から「好きなことをやれ」と言われたため、すぐに弊社に入社せず、まずは他社で経験を積もうと考えました。そして、大学を卒業して社会人になるとき、当時大変だと言われていたOA機器の営業となることを選びました。営業ができれば、ゆくゆくは弊社を引っ張っていけるだろうと考えたのです。

入社1年目はビルの1階から最上階まで飛び込みで営業し、お客さまの課題を聞いてコピー機を提案する毎日でした。退職までの2年半の間で、単に製品を売り込むのではなく、その先にいるお客さまのことまで考えることの大切さを学び、それが今でも生きています。

新たな経験を積むために転職について、当時の弊社の専務に相談する機会がありました。家業ならばいつでも入れるという甘えもありましたが、なにより「親の七光り」と見られるのが嫌だったため、当初は弊社への転職を躊躇していました。

ところが専務から「あなたにとって一番大変な茨の道は弊社に入ることだ」と言われたのです。社長の息子という立場は、常に社員から見られるため、一生懸命に働いていなければすぐに見抜かれてしまいます。それこそが一番の修業の道だと気づき、2006年に入社を決意しました。

24時間365日、建物と人の安心を支えるプロ集団

ーー貴社の事業内容を教えてください。

田部井良:
弊社は、関東エリアで、約3,400棟の建物の総合管理を行っています。ビルやマンションはもちろん、病院や学校など、人々の生活に密着した建物の管理が弊社の仕事です。

事業の柱は大きく分けて2つあり、1つ目の「ビルメンテナンス業務」では、建物の機能を維持するために日々の清掃や設備管理などを行っています。もう1つは「プロパティマネジメント業務」です。こちらは、オーナーさまと二人三脚で建物経営の課題解決に取り組み、オフィスビルのテナント契約や賃料管理などの支援を行う事業です。

他には、「マンション管理業務」として分譲マンションにおける管理組合の運営支援をしたり、「指定管理業務」として公共施設の管理運営をしたりするなど、建物に関わるあらゆる業務を担っています。ときには、市民の方々に喜ばれるイベントを企画することもありますね。

ーー貴社ならではの強みはどのようなものですか?

田部井良:
最大の強みは、管理のすべてを自社チームで完結できる体制です。実務を外部に委託してしまうと、品質の管理やコミュニケーションの面でスムーズな対応ができない可能性があります。そこで弊社では、清掃・設備・警備のスタッフを自社で抱えることによって、一貫した品質とスピーディな対応を実現しています。

もう1つの強みが、SINセンター(警備遠隔監視センター)を抱えていることです。そこでは警備員が24時間365日常駐しながら監視を行い、設備担当者は平日の日中に現場業務、夜間や休日は交替制でセンターに常駐しているため、いつでも即座にトラブル対応が可能です。

たとえば、真夜中の設備トラブルでも電話一本で専門スタッフが状況を判断し、必要に応じて現場に急行できる体制を整えています。こうしたワンストップの体制で、建物と利用者の安心を支えています。

人と建物を支える仕事で未来に続く街を目指す

ーー今後の事業展開について、どのようなビジョンをお持ちですか?

田部井良:
弊社は1973年に清掃会社としてスタートし、さまざまなご縁を通じてビルメンテナンスの技術を磨き上げてきました。これまでは清掃や設備管理、警備といった部分がメインでしたが、これからは新たなステージに進む時期だと考えています。そのために、人口減少時代の空室対策として、2022年より「MOPS owada space」というレンタルスペース事業を開始しました。

弊社が管理する3,400棟の建物はそれぞれが街の一部であり、人々の暮らしや仕事、文化活動に深く根付いています。これからは建物管理の枠を超えて、人々の生活を豊かにする仕組みづくりにもどんどん挑戦していきたいですね。

ーーどのような人材を求めていますか?

田部井良:
ビル管理は、縁の下の力持ちとして建物の維持管理を行いながら、後方から人々の生活を支える仕事です。また、さまざまな経験を活かせる環境であることも特徴と言えるでしょう。たとえば、営業経験者であれば、オーナーさまとの関係構築や空き店舗に新たなテナントを誘致するリーシング業務で力を発揮できますし、接客業の経験者は居住者さまとのコミュニケーションを円滑に行うことができます。

長く勤めている人に共通しているのは「誰かの役に立ちたい」という思いを持っていることです。ビル管理は人と向き合い、建物と向き合い、そして街づくりに携わる仕事です。そうした仕事に魅力を感じる方には、ぜひ挑戦していただきたいと思います。私たちと一緒に未来の街づくりに挑戦してみませんか。

編集後記

「建物管理」という言葉では表現しきれない、人々の暮らしを支える重要な仕事がそこにはあった。社長の息子という立場に甘んじることなく、現場でモップを握り、スタッフと同じ目線で仕事を学んできたという田部井社長。50年以上の歴史を受け継ぎながら、未来を見据えるその背中に、新しい時代のビルメンテナンス業界の姿を見た気がした。

田部井良/1981年、埼玉県生まれ、獨協大学卒業。OA機器メーカーの営業を経て、2006年に家業である毎日興業株式会社へ入社。2019年に同社代表取締役に就任。人と人、人と地域とのつながりを重視して事業を展開。