※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

街路・道路照明器具から工場で使う特殊なランプまで、幅広い業界に対応可能な照明機器を展開する岩崎電気株式会社。多くの人々が気付かぬうちにその光に触れる機会があるだろう。

同社の代表取締役社長を務めるのは、入社から40年以上にわたり現場と経営の両面で経験を積んできた伊藤義剛氏だ。照明など光の技術を基盤に、新たな社会的ニーズに応える製品開発を推進する岩崎電気の挑戦と、未来への展望に迫る。

岩崎電気で40年以上キャリアを積み、誠実さを第一に社長業務に臨む

ーー伊藤社長の経歴や、社長就任後の取り組みをお聞かせください。

伊藤義剛:
私は大学を卒業した1983年に新卒で岩崎電気に「メーカー志望」という動機で入社し、営業担当から営業統括部長、経営企画部長、管理本部長、総務部長、光応用事業本部長と、幅広い部門の責任者を務め、入社から33年目の2016年に代表取締役に就任しました。長年社内でキャリアを積み上げていき、社長に抜擢いただいたのです。

社長に就任した当時は、ちょうど既存製品からデジタル製品やLED製品への転換期にあり、「正常に動作しない」「品質が悪い」といった、新しい製品に対するクレームが多かったことに苦労しましたね。

この苦しい期間を乗り切るために貫いたのが、製品トラブルから絶対に逃げずに、正面から向き合う姿勢です。クレームは見方を変えれば「学びのチャンス」と考えられます。そこで、クレームを弊社の価値を見直すきっかけにして、未来への技術投資を推進していきました。まだ道半ばではありますが、長期的な目線をもって続けていくことが大切だと確信しています。

歴史ある「照明事業」と可能性を探る「光・環境事業」で成長を続ける

ーー貴社の事業内容を教えてください。

伊藤義剛:
弊社では主に「照明事業」と「光・環境事業」の2つを中心に展開しています。まず照明事業では、公共施設やスポーツ施設や商業施設、工場など、BtoG(官公需向け)、BtoB(法人向け)の製品を幅広く取り扱っています。具体的には、公園や道路の街路・道路照明器具や、商業施設で建物や木々を照らすための景観演出用照明器具の他、工場内で使うために特殊な規格でつくられた防爆形照明器具などです。

光・環境事業では、光の波長や特性を活かしたソリューションを提供しています。具体例としては、紫外線(UV)を用いた空気清浄技術や、印刷・乾燥分野におけるUV硬化技術などがあります。そのほかにも、半導体の製造工程や医療用など、専門的なニーズに応じた製品もつくっています。

ーー貴社独自の強みは何でしょうか。

伊藤義剛:
弊社の大きな強みは「官公需(政府機関や自治体からの需要)に対する信頼と実績」「顧客志向の対応力と責任感」「高い技術力と対応力」の3つです。まず「官公需」は、弊社の売上を支えている、長年の実績がある分野です。昔から取引がある自治体も多く、顧客から「間違いない」と認識される品質を誇り、信頼性をもって、堅調な売上を維持しています。

次に「顧客志向の対応力と責任感」ですが、弊社では納期対応や問題解決などに対して、最後まで責任を持って向き合う姿勢を大切にしています。もし弊社の製品で不足が生じる場合は、他社製品を紹介することもあるほど、顧客第一を最優先に取り組んでいます。

そして「高い技術力と対応力」ですが、弊社には高い技術力だけでなく、市場ニーズの変化に対応できる、柔軟かつ挑戦的な姿勢も備わっています。たとえばHIDランプからLEDランプに転換したときのように、時代にとり残されない対応力があるからこそ、顧客との長期的な関係を維持できているのです。

堅実な経営基盤をベースに、照明を使った新たなソリューションにチャレンジ

ーー今後、特に注力したいテーマをお聞かせください。

伊藤義剛:
2024年に策定した、成長戦略と構造改革を盛り込んだ新たな中期経営計画に則って、「新商品や新技術の開発」と「新規取引先の開拓」に注力していきたいと考えています。

まず、新商品・新技術の開発においては、スマート照明やUV殺菌装置といった、照明技術に新たな価値を付加するソリューションに力を入れる予定です。専門メーカーならではの高い技術力をベースに、独自性のあるソリューションの開発に力をいれていきます。

新規取引先の開拓においては、業種にとらわれないアプローチを進めていきたいと考えています。照明を使ったソリューションは、ニーズさえあれば業種を選ばないため、照明のポテンシャルを引き出しながら、固定観念にとらわれないアプローチ方法を探していきます。

なお、既存製品の販売を推進するために、Webの更なる活用及びデジタルマーケティングの強化も進めていきます。これらの手法を活用して新たな顧客との接点を開拓し、照明に興味を持つ方々に弊社製品の価値を知っていただける機会を増やしていきたいと思います。

ーー採用にあたって、どのような条件を求めていますか?

伊藤義剛:
弊社が人材に求める条件は「リーダーシップ」「チャレンジ精神」「オーナーシップ」の3点です。特にリーダーシップとチャレンジ精神は重要で、これからの時代に責任をもって改革にとり組んでくれる方を希望しています。

社内の雰囲気は、堅実で真面目な部分が大きいですが、新しい風を入れて改革を進めることも大切です。新人をサポートする土壌が整った組織ですので、臆することなく、自分の意見を出して、積極的に行動していただければと思います。

また、社員の働きがいと安定した業績を兼ね備えた姿を理想としています。しっかり利益を出して、しっかり社会に貢献していけるように、弊社ならではの技術力と誇りを持って成長し続けていきたいですね。

編集後記

岩崎電気株式会社には、伊藤社長が同社の強みとして語る「高い技術力」と「顧客志向の対応力と責任感」という、イノベーションを起こすための地盤が備わっている。この地盤があれば、スマート照明やUV殺菌装置にとどまらず、照明の可能性をさらに広げる製品が生まれてくることだろう。岩崎電気のこれからの展開が、私たちの生活や産業の未来にどのような影響を与えるのか、これからの進展を見守りたい。

伊藤義剛/1958年、山口県生まれ、立教大学経済学部卒業。1983年に岩崎電気株式会社に入社。国内営業事業部営業統括部長、管理本部経営企画部長、執行役員管理本部長、取締役上席執行役員光応用事業本部長と、幅広い部門の責任者を経て、2016年に代表取締役社長に就任。現在、脱炭素、防災、減災など社会ニーズに対応した分野を中心に、幅広く世の中に求められる商品、ソリューションの提供に注力。