
近年のITサービスの普及により、企業だけでなく公共交通機関や船舶でのセキュリティ対策が急務となっている。そうした中、海外の高付加価値製品の技術専門商社として産業用のネットワーク製品やセキュリティ製品の輸入販売を行っているのが、株式会社ケーメックスONEだ。
分社化した背景や、語学力と専門知識を兼ね備えたハイスペックな人材がそろう同社ならではの強みなどについて、代表取締役社長の亀田圭彦氏にうかがった。
社長賞を獲得し、成果を上げてから父親が経営する会社へ入社
ーー亀田社長のこれまでのご経歴についてお聞かせください。
亀田圭彦:
父親の影響で電子部品に興味があり、部品メーカーを中心に採用試験を受けていました。私はドイツへの留学経験があったため、採用面接ではドイツ語を話せることをアピールしていましたね。そして、大手電機機器メーカーに入社しました。
あるとき営業活動をする中でふと、3Dで計測できる万歩計を携帯電話に入れ込んだら面白いのではないかと思い、顧客企業に提案しました。するとその商品が大ヒットし、社長賞をいただいたのです。そして、その成果を聞きつけた父から、「うちで働かないか」と声がかかりました。
父の会社ではすでに兄弟が働いていたので、私は今の会社で頑張ろうと思っていましたが、父の誘いを無下にできず、ケーメックス(現:ケーメックス・オートメーション)への入社を決めました。
ーー入社後はどのような業務に携わりましたか。
亀田圭彦:
入社後は、プロダクトマネジャーとしてコネクターやケーブルの営業とマーケティングを担当することになりました。製品知識を身につけるため、ドイツのメーカーで2ヶ月間新人研修を受けることになったのです。
当然ながら研修はすべてドイツ語で行われるので、ドイツへの留学経験があるとはいえ、周りについていくのは大変でしたね。こうして苦労はしたものの、おかげで必要な知識を身につけ、顧客とのコミュニケーションもスムーズに行えるようになりました。
IoTやセキュリティに特化した事業を展開
ーー分社化した背景と、現在の事業内容についてお聞かせください。
亀田圭彦:
工業用ケーブル等の、電気部品や制御機器関連製品などを販売するFA(ファクトリー・オートメーション)は、一度購入いただければ顧客との関係が長く続くメリットがあります。その一方で、国内外のメーカーの数が多く、差別化しにくいことがデメリットです。
そのため、私は急成長しているIoTやサイバーセキュリティに注力したいと考えました。そこで私の部門を独立させ、ケーメックスONEとして再スタートしました。
弊社では主に、産業用のネットワーク製品やセキュリティ製品の輸入販売を行っており、世界の大手メーカーのトップ3である台湾のMoxa(モクサ)や特殊コネクタで有名なドイツのODU社の代理店として活動しています。
具体的には近年省力化で注目を浴びるAGVの無線機、船舶のセキュリティの強化、ニューヨークやインドの地下鉄のネットワーク構築などを行っています。
ーー競合他社もいる中で、貴社が順調に業績を伸ばしている秘訣を教えていただけますか。
亀田圭彦:
代理店経由などで直接顧客と対話していない企業が多い中、弊社は直接お客様のところに足を運んでいるところが大きな違いですね。直接エンドのところに行くので、効率としては悪いものの、お客様のニーズを把握しメーカーにフィードバックできるメリットがあります。
また、海外の仕入先ともスムーズにコミュニケーションを取れ、製品に関する質問に的確に応えられる人材がそろっていることも強みです。弊社では営業も技術者も語学力と専門知識の両方を習得できるよう、社員教育に力を入れています。
毎年、台湾メーカーで行う実地研修はすべて英語で行われ、ネットワーク機器やセキュリティに関する講義を数日間受けた後、最終日のテストをパスできるまで挑戦してもらいます。こうすることで営業、技術のレベルがサプライヤと同等レベルにキープでき、高いレベルでのソリューション提案ができると、顧客から厚い信頼を得ていますね。
社会貢献活動に力を入れる理由。成長を続ける企業で働く社員の特徴

ーー社会貢献活動にも熱心に取り組んでいますね。
亀田圭彦:
社会貢献活動の一環としてNPO団体と協力し、ラオスの首都ビエンチャンから悪路で6時間のタケークという場所に幼稚園を設立しました。もとは小学校しかなくて教員室を使って幼稚生の年長さんだけを受け入れていましたが、ケーメックスONE幼稚園のおかげで、年少さん達から通えて、教員室も先生が使えるようになりました。
また、ロシアのウクライナ侵攻2週間後にはウクライナの野戦病院3か所に負傷した兵士向けの手術器具を送付し、また、ウクライナから隣のポーランドに逃げてきた子供たちに新生活を送れるようにランドセルと文房具のセットをプレゼントし、心のケアのためにダンス教室やサッカー教室を主催しました。国内では、社員と一緒に貧困家庭へのクリスマスプレゼントの配布なども行っています。
こうした活動に参加する理由は、社員たちに自分が働く会社に誇りを持ってもらいたいからです。そして、周囲の方々にも「自分の子ども・孫をこの会社で働かせたい」と思ってもらえれば嬉しいですね。

ーー貴社の社内文化について教えてください。
亀田圭彦:
基本情報技術者試験やTOEIC、中国語検定、セキュリティ関連の資格を取るため、日頃から勉強する習慣が定着していますね。社員に聞いてみると、私がファイナンシャルプランナーの資格を取得したことがきっかけだったようです。
「社長が資格を取るために勉強している姿を見て、自分達も感化されました」と言っていましたね。自主的に努力する社員たちが増えてきて、とても頼もしく感じています。
2030年までに売上を1.5倍にし、社員全員が物心共に裕福になれる企業へ
ーー今後の事業目標について教えていただけますか。
亀田圭彦:
2030年までに売上を1.5倍に伸ばしたいとおもっています。もともとは売上目標を立てるのはあまり好きではなかったのですが、社員の生活を豊かにするためには逆説的に売上を伸ばしていかないと決心し、あえて売上目標を設定しました。売上をアップするためには人員増も必要だとは思いますが、人員増よりも売上向上が先行し、社員に還元できる仕組みにするのが私の目標です。
ーー最後に経営者としての夢をお聞かせください。
亀田圭彦:
経営者である私の使命は、社員とその家族の幸せを追求することだと考えています。そのため大企業になることよりも、社員全員が経済的に豊かになり、人生の選択肢を増やすことが私の夢です。
編集後記
インタビュー中にユニークな話で場の雰囲気を温めてくださった亀田社長。高度なスキルが求められる同社だが、亀田社長の人望があるからこそ、社員の方々は努力を惜しまないのだと感じた。株式会社ケーメックスONEは、これからも顧客に寄り添った営業を続け、さらなる成長を遂げることだろう。

亀田圭彦/1977年埼玉県生まれ。中央大学卒業(ハンブルグ大学留学)。オムロン株式会社に入社し、3年の修業期間を経て2004年に父親が経営する株式会社ケーメックスに入社。2021年に分社し株式会社ケーメックスONEとして再出発し、代表取締役社長に就任。社会貢献活動にも注力している。