※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

苅谷動物病院グループは、東京都と千葉県で5つの動物病院を運営するグループだ。犬と猫をはじめとした伴侶動物とより長く幸せに暮らすために、外来診療やワクチン接種だけでなく、夜間救急、トリミング、ペットホテル、しつけ教室にも対応するトータルサポートを実践している。

今回は代表取締役・江東総合病院院長であり、東京都獣医師会・江東支部長も務める苅谷卓郎氏に、同グループの取り組みや強み、展望などを聞いた。

経営する立場になっても診療現場に立ち続ける

ーー代表取締役に就任するまでの経緯を教えてください。

苅谷卓郎:
子どもの頃は先代である父が経営する動物病院が自宅と一体になっており、ずっと間近で獣医として働く姿を見てきました。家でも犬や猫を飼っていたため、動物と触れ合う機会が多い環境でした。高校生の頃までは明確に「獣医になろう」と志していたわけではありませんが、自然と職業の選択肢の1つに入っていたのだと思います。

獣医学部を卒業後は、日本獣医生命科学大学附属病院や弊グループの市川総合病院で獣医として勤務しました。外来対応やワクチン接種といった基本的な診療や手術のほか、お預かりしている犬の散歩など、幅広い業務をこなしました。

代表交代のきっかけは、父の体調の悪化です。父から事業を承継した2020年に、5つの医院を運営する「苅谷動物病院グループ」の代表取締役・江東総合病院院長に就任しました。

ーー代表取締役として心がけていることは何でしょうか?

苅谷卓郎:
ずっと診療現場に出続けることです。獣医には職人と通じる部分があり、経営する立場になっても現場の感覚を持っていないと説得力のある意見が出せません。実際に、先代の父も引退するまで獣医として現場で働き続けていました。

現場をわかっているからこそグループ全体で適切な方向に舵を切れると考えているため、可能な限りこのスタイルを続けたいと思っています。

獣医・獣看護師の労働環境改善に取り組み、夜間救急にも無理なく対応

ーー重点的に取り組んでいる施策を教えてください。

苅谷卓郎:
獣医、獣看護師といったスタッフの労働環境改善を重視しています。全体的な傾向として、動物病院業界の労働環境は決して良好とはいえません。父の代のときには、診療時間外でも急患対応をすることもありました。

弊グループでは働き方のホワイト化に向けて、残業時間を一般企業と同程度にするべく時間外労働時間の削減に取り組んでいます。10年前の残業時間は平均して30時間程度でしたが、現在では平均10〜15時間程度に抑えられています。業界全体としてホワイト化が進めば人材確保にも繋がり、より健全な働き方ができるようになるでしょう。

また、料金の適正化にも注力しています。労力や技術に見合った報酬がなければ、現場で頑張っているスタッフに還元できません。安ければ安いだけよいのではなく、診療内容やかかった手間に見合った対価をいただいて、スタッフにも持続的に適正な給料が払える体制づくりを目指しています。

ーー貴院の強みをお聞かせください。

苅谷卓郎:
症状に応じてしっかり検査し、診断をつけて治療を行うことです。一見当たり前のようですが、動物の検査には手間がかかり、様子見で症状が改善するケースもあるため、逐一検査を行わない施設も少なくないのです。

しかし、中には様子を見ているうちに病状がどんどん悪化してしまうケースもあります。動物は痛みなどの症状があっても隠す場合が多いため、少しの違和感でも軽視できません。

弊グループの動物病院では積極的に検査を行うことで病気の見逃しを可能な限り防止し、その結果に基づいて治療を行います。普段から検査を行っているため、いざというときにノウハウを活かしてスムーズに検査・診断できることも大きな強みです。また、夜間救急も行っており、飼い主さんの安心感につながっていると自負しています。

診療体制強化と労働環境改善を通して動物病院の未来を切り拓く

ーー管理体制の強化に取り組んでいるそうですが、どのようなテーマに注力していますか?

苅谷卓郎:
特に人材採用の強化に注力しています。診療の対象は動物ですが、獣医や獣看護師には飼い主さんと円滑なコミュニケーションを取るスキルも求められます。弊グループでは日中の人材だけでなく、夜間診療に対応するスタッフも確保しなければなりません。

ほかの動物病院での勤務経験がある方はもちろん、動物と日常的に触れ合ってきた方や動物好きの方にはぜひ弊グループへの入職をご検討いただければと思います。日々さまざまな症例を診療し、多くの経験を積んでいってほしいですね。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

苅谷卓郎:
しっかりと検査・診断を行って治療ができる人材を育て、体制が整った段階で施設を増やしたいと考えています。労働環境の改善にも、さらに取り組んでまいります。働き方の改善はもちろん、給与水準も人を診る医師・看護師と同レベル程度に引き上げることが目標です。

人間の医療では診療科の細分化が進んでいますが、獣医の多くはあらゆる症状を診療します。獣医や獣看護師の成長を促しつつ、業務効率の改善にも力を入れたいと考えています。また、スタッフには語学など医療以外のスキルも身につけてもらい、海外の方をはじめとしてさまざまな患者さんが来院できる動物病院にしたいと思います。

より多くの方に来院いただくためには、インターネットの口コミも重要です。医療機関のPRには特有の難しさもありますが、現場でしっかり診断をつけて治療を行うこと、そして適正な価格でサービスを提供することへのご家族様からの満足度が何より大事だと考えています。

編集後記

個人の頑張りではなく、仕組みや体制強化で課題の解決を図る苅谷代表。飾らない言葉からは、人と動物に対する誠実な人柄が感じられた。家族である動物たちの健康管理を担う総合病院だからこそ、持続可能な体制が求められているのだろう。

苅谷卓郎/1984年東京生まれ。麻布大学獣医放射線学研究室を卒業し、三鷹にある日本獣医生命科学大学附属病院にて研修。苅谷動物病院グループ市川総合病院を経て、2020年から同グループ江東総合病院院長に就任、同時に代表取締役も務める。