※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

さまざまな競技の前線で活躍するアスリート。そのアスリートのセカンドキャリアに注目し事業を展開するのが、株式会社アーシャルデザインだ。同社はアスリートをエンジニアとして育成し、IT企業へ派遣する「アスリートエージェントテック」をはじめ、スポーツとビジネスコンテンツを融合させたユニークな事業を展開している。

代表取締役CEOの小園翔太氏は、事業を通してスポーツの価値を伝えていきたいと語る。同社の取り組みや今後の展望をうかがった。

大学時代からアスリートのセカンドキャリアに注目

ーー貴社設立までの経緯をお聞かせください。

小園翔太:
もともと僕自身、高校までテニスに打ち込んでいたのですが、目の病気にかかってしまい、大学進学前には競技人生に区切りをつけることになりました。競技者になることは難しくても、教えることはできると思い、大学時代はテニスのインストラクターを務めていました。その中でとあるプロテニスプレイヤーの方と出会う機会があったのです。

その方は選手引退後のセカンドキャリアについて悩んでいる様子でした。その話を聞いた際に、アスリートのセカンドキャリアを支援するためにアスリートの紹介事業を考えました。そこから、スポーツコンテンツを使って社会を変えるような事業の構想が自分の中にずっとありました。

大学卒業後に就職した会社では実現が難しかったため、「それならば自分で会社をつくろう」と考え2014年に弊社を設立した、という流れです。

ーー貴社の理念について教えてください。

小園翔太:
弊社の理念として大切にしているのは、一人ひとりが当事者意識を持つことです。

社長は会社の方向性や世界観を決める役割を果たしますが、会社の実態を形づくるのは社員です。人事制度にも主体性や当事者意識があるかという観点が組み込まれています。

まだ新規事業を社員が提案するフェーズには入っていませんが、今後はチャレンジしたい社員に挑戦の機会を与えられるような環境を用意していきたいと考えています。

ヒューマンスキルの高い人材のマッチングで差別化を図る

ーー貴社の事業内容と強みを教えてください。

小園翔太:
弊社には全部で3つの事業があります。

1つ目の「アスリートエージェント」は、アスリートや体育会系の学生にビジネス教育を行い企業に紹介する、いわゆる人材紹介事業です。

2つ目は「アスリートエージェントテック」といい、現在の主力事業です。これは、引退したアスリートの方やスポーツに打ち込んでいた方を弊社で雇用し、6ヶ月のプログラミング教育を施した上で、IT企業やITプロジェクトとマッチングします。

3つ目の「アスリートボックス」は2023年に始まった新事業で、中学・高校の部活動の指導員として人材を弊社から派遣するものです。

弊社の事業の強みは、国内最大級のアスリートのネットワークを抱えていること。また、ヒューマンスキルとプログラミングスキルの双方を備えた、希少価値の高いエンジニアを育成できる環境が整っている点です。

IT業界は現在エンジニア不足です。少ない人材の中で課題となっているのは、エンジニアはコミュニケーションに課題を抱えることが多いといわれている点です。

もともとスポーツをやってきた方々は「チームで動く」ということへの理解が深く、コミュニケーション能力も高い方が多いです。シンプルですがIT業界ではこのタイプの人材はとても貴重で、ニーズが非常に増えてきています。

全国の学校を拠点に、スポーツの価値をさらに広めていく

ーー今後の展望についてお聞かせください。

小園翔太:
まずは上場を目指すことが大前提となります。その上で、今後はアスリートボックスにも注力していきたいと考えています。

現在学校では、部活の顧問の仕事を含め、教員の過重労働が深刻な問題となっています。また、先生自身が未経験のスポーツの顧問を担うケースも多く見られます。

国の決定により、中学・高校の部活動の民間委託が2023年から始まりましたが、指導員を派遣できる会社はまだ少ないのが現状です。

アスリートボックスは事業年数としてはまだ短いですが、各競技の元日本代表やメダリストをはじめ、約3,000名が在籍しています。国内には1万校以上の学校があり、それに付随する部活動は非常に大きな市場規模を持っています。弊社の豊富なデータベースを生かし、先導企業として展開していきたいですね。

ーー最後にメッセージをお願いします。

小園翔太:
スポーツに打ち込んでいた方には、その経験を資産として考えていただきたいです。勝敗は重要ではなく、負けや怪我といった、一見ネガティブに思える経験からしか得られない学びがあります。それはスポーツという分野だけでなく社会という大きなコミュニティの中でも生きる財産です。

弊社が伝えたいのは、アスリートの価値ではなく、スポーツの価値です。「スポーツが人を育てる」ということを、事業を通して今後も発信していきたいですね。

編集後記

現役時代よりも引退後の生活の方が長いアスリートにとって、セカンドキャリアの問題は常について回る。アスリートたちが次に輝ける舞台をつくり、スポーツの価値を伝えていく同社の取り組みは非常に意義のあることだ。躍進を続けるであろう同社の今後に注目だ。

小園翔太/1988年鹿児島県生まれ。日本大学経済学部卒業。スポーツイベント企業を経て、HR系企業に入社。学生時代から構想していたアスリートキャリア支援事業で株式会社アーシャルデザインを設立。独自のスポーツ事業で急成長を遂げる。